フロントマン=ジャスティンはめちゃめちゃ早口で水飲むのも顔拭くのもロボットみたいにしゃきしゃきしてて滑稽だし(ダンス・モードのナイナイ岡村がアフロ&メガネになったと想像していただければいい)、一見どパンクな佇まいのジェシィ(Key)がタトゥーだらけの腕でちっちゃいシンセにしがみついてスタンド倒さんばかりに弾き倒していたり……と、USパンク名門インディー・レーベル=エピタフ出身のバンドにしてはちょっと笑えるぐらいにバランスのぶっ壊れた5人組。だが、ひとたび音を鳴らした瞬間、そこにはあらゆるネガティブな感情を吹っ飛ばすだけのダイナミックなバイタリティが生まれる。この日サポート・アクトを務めたBEAT CRUSADERSヒダカのみならず、ASIAN KUNG-FU GENERATIONゴッチ、POLYSICSハヤシといった面々が賛辞を惜しまないのは、メガネ・ロッカーとしてのシンパシーからだけでは決してない。表現の方法とフォーマットこそ違えど、音楽としてのユニバーサルな強度という点においては、モーション・シティ・サウンドトラックは十二分に他バンドの羨望の的である、ということだ。
まだツアーは続くので、この日のセットリストは伏せておくが、新作『マイ・ダイナソー・ライフ』収録曲の半分と、あとは『アイ・アム・ザ・ムービー』期から続く必殺アンセム“ザ・フューチャー・フリークス・ミー・アウト”など過去3枚のアルバムの曲を万遍なく配置した鉄壁の内容。曲が進むごとにバンドのテンションもますます上がり、ジャスティンの大きな眼はなおも輝きを増し、動きはさらにぎくしゃくしゃきしゃきと様子がおかしくなる。ついには曲の最中に歌いながら、至って冷静にクロスを取り出してメガネを拭き始めたのには笑った。アンコールの「ガーリ、ガーリ、クン」のMCも、トニー(Dr)がカメラ取り出して熱気むんむんのオーディエンスを記念撮影した時の笑顔も、そのタフな音楽と一体になって熱く胸に残る……そんな圧巻の一夜だった。
なお、今回の東名阪ツアーで全公演サポート・アクトを務めるのは、海外武者修行的ライブ体験を経て格段にパワー・アップしたナニワ発スカ・パンク女子6人衆=ORESKABAND。「モーション・シティ・サウンドトラックとは、ワープト・ツアーの時に『また一緒にやろうね!』って言ってたから、とってもうれしいです!」というサキ(トランペット)のMC以上に、ポップと歓喜が弾けまくるそのサウンドが、今回の共演の喜びをリアルに物語っていた。そして、東京公演のみのゲストとして登場したのが、前述のBEAT CRUSADERS! 「どもー! モーション・シティ・サウンドトラックでーす! これから8時間ぶっ続けでやるんで!」とジャスティン役(?)のヒダカが言えば、ジョシュ役のタロウが「ヒトツダケ、ニホンゴ、オボエマシタ!」と外人口調で苦笑失笑を誘いつつ会場一丸の「おま●コール」を繰り出し、“SHOOTING STAR”の激烈ファストコア、異常にタイトに鍛え上がった“HIT IN THE USA”、そして最後の“TIME FLIES, EVERYTHING GOES”のプレシャス大爆走ぶりまで40分ほどの大熱演。今やフェス大舞台をがっつり沸かせるエネルギーと、好きなバンドならフロント・アクトもやっちゃうよ的なフットワークの軽さを見せつつ、モーション・シティ・サウンドトラックへ最高のバトンを渡していた。(高橋智樹)