鶴 @ 代官山UNIT

シングル『小さくても世界は変わってる』のリリース・ツアー『生家紀行 第一章~ライブハウスツアー~』の全29本のファイナル、東京・代官山UNIT・2デイズの1日目。なので、もう1日あるし、しかも2日目はUSTREAMで生配信もあるので、その2日目が終わってからアップさせていただきました。ご了承ください。
なお、ツアー途中の6月30日に、さらにもう1枚シングルが出ています。例の、ビッグコミックスピリッツのマンガ『さすらいアフロ田中』とのコラボシングル、『朝が来る前に』です。この日は、終盤にプレイされました。全体のセットリストは、こうでした。

1.小さくても世界は変わってる
2.~こんばんは鶴です~
3.ダイナマイツ勘違い
4.トゥットゥル
5.リザーブシート
6.晴れのち晴れ
7.あめ曜日
8.二人でカフェオレ
9.恋のゴング
10.真夏の果実
11.手紙
12.踊れないto フィーバー
13.アイタリナイ
14.朝が来る前に
15.その一歩
16.Tonightはパーティー

アンコール
17.ダンディー・ダンディー・ダンスィング
18.燃えるような恋じゃないけど

シングルで既発の曲とまったく新しい曲を合わせて、7月28日にリリースされるニューアルバム『期待CD』に収録の曲が、1,13,14,15,18の5曲。7,8,9の3曲は、3人でアコースティック・バージョン。10はサザンオールスターズのカバーで、秋野(vo&g)ひとりでギター弾き語りでした。
アコースティック・セットは前からやってたけど、これだけ新しい曲が多いことや、前は必ず本編最後あたりでやっていた「自分たちの曲の途中で突然人の曲のカヴァーを始める」パフォーマンスがなかったことや、あと、開演直前にどんくん(ds)がメイン・パーソナリティーで秋野&神田(b)がゲスト、というていのラジオ番組みたいなのを流して小さな笑いをとっていたあたりに、何か、これまでの定番パターンをちょっとずつ変えようとしている、そんな印象を受けました。もうすぐニューアルバムだから、というだけではなく、もっと意識的・自覚的に。
鶴みたいな、お客を笑わせて、のせて、踊らせて、歌わせて――みたいなエンタテインメントに徹したバンドだと、ショートしての完成度が上がれば上がるほど、同時にマンネリにも近づいていく。そのマンネリを徹底的に追求することでさらなるエンタメを目指すバンドもいるが(ウルフルズとかそうでしたよね)、鶴は「気づくか気づかれないか程度にちょっとずつ新しくしていく」という手法を、このツアーあたりから、とり始めるのかもしれない。とか思った。

あと、基本的にこのバンド、観て「今日よくねえ」と思ったことが一度たりともないくらい、鉄壁なライブ・バンドなんだけど、そこはいつも通りすばらしかった。この数日前、秋野は声が出なくなって(ノドの局部的な疲労だったそうです)盛岡のライブをキャンセルしてしまったんだけど、その後遺症、ゼロ。すっごいうまいわけでも珍しいプレイをするわけでもない、あたりまえのことをあたりまえにやっているだけなのに、3人のノリが異様に合っているせいで耳にも身体にもぐいぐいくるプレイも、健在。堪能させてもらいました。

あとひとつ、改めて思ったこと。なんか、神がついてる、このバンド。「神がかっている」というような意味合いではありません。笑える事件が自身にどんどん降りかかってくる芸人さんのことを、仲間が「あいつ、お笑いの神が降りてる」みたいな言い方をすること、あるでしょ。どっちかというと、あれに近いです。元々「客前で何かやる人」として、やたら優れている3人だけど、その実力だけでなく、それ以外の部分でも、やることなすこと妙にウケてしまったり、80くらい盛り上げようと思ってやった曲で120くらいまでフロアがあがっちゃったり、というような、バンドの意図や狙いを超えたところで、場が「いい感じ」になってしまう、そんな瞬間が何度もあった。
最も象徴的だったのは、アコースティック・コーナーの、ある曲でのシーン。どんくんがマラカスを持ち、イントロ→Aメロと、座ったまま曲に合わせてマラカスを振り、サビになると盛り上がりすぎて、マラカスを振って踊りながらステージ前方に出てきて、お客さん、大笑い。という演出プランだったとお見受けするが、Aメロの、座ったままでマラカスを振っている段階で、フロアにくすくす笑いが広がり始め、サビを待たずして大笑いになってしまったのだ。曲中にもかかわらず、どんくん、思わずマイクで「何? 何がおかしいの!?」と叫ぶ。で、さらに一同大笑いに。得だなあこの人。秋野も神田も得な方だけど、この人の得っぷり、ぬきん出ていると思います。(兵庫慎司)