オワリカラ@SHIBUYA O-WEST

オワリカラ@SHIBUYA O-WEST
開演直後ものの数秒で、4ピースから繰り出される漆黒ドロッドロのバンド・グルーヴにO-WESTのオーディエンスが引き摺り込まれてしまう。絶妙なブレイクを挟みつつ躓くようにして転がり、タカハシヒョウリ(Vo./G.)のサウスポーから繰り出されるサイケデリックなギター・フレーズがまとわりついていった。カワノケンタ(Dr.)は、序盤から勢い余って何度もシンバルを吹っ飛ばしながらスティックを振るっているのだが、彼の周囲で大きく揺れるそのシンバル群が、バンドの音像とシンクロするように鈍い光を反射して輝き続けているのが美しい。

SMA(ソニー・ミュージック・アーティスツ)/SMALLER RECORDINGS内に、いきなり自主レーベルyourdoorを立ち上げる、という形でデビュー・アルバム『ドアたち』を発表したオワリカラ。当初予定された全国ツアー日程をこなし、更にはアンコールツアーを経て、リリースから約4か月掛けて辿り着いた、ファイナル・ワンマンである。12/2付のRO69のニュースでも報じられていたように、今回の公演はUSTREAMで配信生中継されていたのでご覧になった方も多いかと思うが、とことん破天荒で、予測不可能で、なのにどこか温かくていつのまにか嬉しさが込み上げてしまうような、もの凄いライブであった。

複雑極まりないコンビネーションが、まるでタカハシの歌を重心にバランスを取るようにして形を成してゆく。カメダタクはのっけから何かに取り憑かれたような恍惚の笑みをその顔に浮かべ、鍵盤を引っ叩き続けていた。オワリカラのロック、タカハシの歌は、多くの場合剥き出しの「切望」がテーマになっている。“MANGA”などは、まったく笑いを禁じ得ないような要求が掲げられているが、しかしその極限まで率直さを追求したメッセージには確実に切迫感が宿り、共感を呼び起こしてしまう。「伝わる」性能が異常に高いのである。タカハシは、カメダを踏み越えるようにしてシンセ台に乗り上がる。いやそれ以前にカメダのプレイ自体が、いつシンセの破片が飛び散るとも知れない冷や汗ものの激しいプレイなのだが。

長いツアー期間中にも『ドアたち』には収録されていない楽曲群が次々に生まれ、また磨かれているらしく、今回の公演ではそうした楽曲もプレイされていた。オワリカラの演奏は極めてテクニカルで構成も込み入っているものが多いが、不思議とシステマティックな雰囲気は希薄で、自由なムードを受け止めさせるものだ。ドアーズや初期ピンク・フロイド、キャプテン・ビーフハート、カン、ワイアー……ロック史上の様々なグループを思い起こさせながら、4人のプレイはヒート・アップして新しい像を描き出してゆく。いや、若い彼らのロックを支えているのは、ごちゃごちゃした知識というよりも、むしろ飽くなき想像力なのだろう。

ファンキーで鋭いエッジを備えた“SWING”ののち、彼らならではの方法論とルート選択で人生の主導権を掴み取ってゆくような“オワリカラの気分”が披露される。背徳感と抱き合わせで手に入れる希望。彼らにとって、ロックとはそういうものなのだ。そして眩いギターとキーボードのフレーズが折り重なってゆく、物悲しくもロマンチックな“ロング・グッドバイ”へ。衝動的な、激しいアクションを見せながらの狂騒パフォーマンスと、夢見心地で甘美な歌とが鮮やかなコントラストを描き出してゆく。“団地”は、カメダが操るループを用いたギターレス・バージョンであった。こういうミニマルなロックは、まるでゆらゆら帝国を思い出させるものだ。しかしその直後には、一転して大振りかつダイナミックなロックを決めてしまう。“othersideかなた”でグイグイとバンドを牽引するのは、ツダフミヒコ(B.)の力強いベース・ラインだ。

「遅い時間まで、本当にありがとうございます。8月にアルバムを出してツアーしてきて、今日これがファイナルです……あまり他人に興味が無い方でして、こうしてライブに来てくれる人とか、いつも話している人に優しくできていないんですけど、ほんと感謝しています。愛してます……へへヘ……最近そんなことを考えていて、新曲つくりました。聴いてください、“ベイビーグッドラック”」。

ロック・ミュージックを拡声器にして鬱積した思いをぶちまけたり、想像力をサウンドの造形物にすることで可能性を証明したり。しかしこのときオワリカラが見せてくれたのは、不器用者の置き手紙のような、どこまでも優しいメッセージ・ソングだった。どちらにせよ、彼らはロックを振り回すべき道具として自在に操っている。ロックの歴史に振り回されるような、不自由な思いはしていない。「ロックはこういうものだ」というルールに絡めとられるよりも、「ロックはこうあって欲しい」というイメージを音や歌に乗せて放っているからだろう。

担ぎ上げられたキーボードやギターがオーディエンスの頭上で受け渡され、ツダが大音量ノイズの中で何度も見事な倒立を披露するなど、アンコールは徹底的にカオスで、しかし場内は笑顔まみれという、幸福なフリーク・アウトのうちに幕を閉じた。圧巻であった。オワリカラは今後すぐにニュー・アルバムの制作に入るらしく、この日プレイされた素晴らしい新曲のうちの幾つかもそこに収録されることになるのだろう。ちょっと気が早い話かも知れないが、今から楽しみだ。(小池宏和)

セット・リスト
1:十代から始める革命講座
2:MANGA
3:ゼットン(新曲)
4:勇敢なるビイヒヤナウ
5:SWING(新曲)
6:オワリカラの気分(新曲)
7:ロング・グッドバイ
8:船(新曲)
9:団地(リミックス)
10:teardrop
11:othersideかなた
12:怪人さん
13:ベイビーグッドラック
14:ビート
15:ドアたち

EN:砂場
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