高橋優@SHIBUYA-AX

高橋優@SHIBUYA-AX
高橋優@SHIBUYA-AX
今年5月から7月まで回った初の全国ライヴツアーから4カ月。早くも2度目となる全国ツアー『高橋優 2011秋の全国ツアー~誰がために唄う優』を11月6日(日)横浜BLITZからスタートさせた高橋優。ツアー・ファイナルとなった本日のSHIBUYA-AXは、この数か月で歌い手として多彩な表情を見せ始めた彼の姿を観ようと集まったオーディエンスで埋め尽くされている。もちろんチケットはソールドアウト。開演前から異常なほどの熱気に包まれ、どこからともなく高橋の登場を待ち詫びる手拍子がフロアから沸き立っていた。

SEとともにバンドメンバー、そして最後に高橋がステージに現れると割れんばかりの大歓声と手拍子が沸き起こる。そして、ドラムのカウントから始まったのは"誰がために鐘は鳴る"だ。壮大なオケとピアノの音色に彩られた楽曲がオーディエンスに届いていくことの素晴らしさを2度目のツアーで改めて噛みしめるかのようにギターをかき鳴らす高橋の姿はとても潔くて清々しいものだった。ステージ上方には「I'm
YOU」と書かれた大きなギターピックのオブジェが掲げられていたのだが、「私は(高橋)優」という意味以上に、「私はあなた」、つまり、自分のために歌ってきた唄があなたのものとなり、高橋優とオーディエンスとの間に一心同体の関係が芽生えているということを強く感じた。そんな胸が熱くなるようなオープニングから一転、いきなり明滅するライトに煽られるように高ぶるテンションをぶつけていった"終焉のディープキス"、アコギを力強くかき鳴らしながら果敢に攻め立てていった"素晴らしき日常"と不屈の精神を剥き出しにオーディエンスへと切り込んでいった。

「誰がために唄う優というツアータイトル通り、誰がために精一杯歌わせていただきます!」と意気込んだ高橋は、泥臭くエネルギッシュに"希望の歌"を歌いきったかと思えば、淡い恋心を日記に綴るような独白を正直に表現した"8月6日"で優しい表情を見せたり、《ただ一つ確かなのは今このとき「君が好き」》と切実な想いを伝える"ほんとのきもち"で真剣な表情を見せたりする。その時に感じた自分の想いが真っ直ぐに表情に出ていて本当に魅力的なシンガー・ソングライターだなと思う。高橋の届けたいという想いはより強まり、強い説得力をもってオーディエンス一人ひとりに確実に響いていることが分かる。

そんな中、MCでは微笑ましい姿も垣間見せる。民謡歌手をしている高橋の父親が東京で行われる民謡の全国大会に出場する際、高橋の家に泊まれるようにするために最近引っ越したというエピソードから、泊まった際に父親と一緒に朝ご飯のサンドイッチと焼きたらこのおにぎり、牛乳を買いに行ったこと、"牛乳"を歌っている高橋乳が高橋優とは別人だと勘違いしていた父に秋田のライブ中に「高橋乳=高橋優」であることを告げた話、そして、民謡大会で優勝した父親が密かに契約を狙っていること……などなど、あまりにも愉快すぎる高橋家のエピソードに会場も大爆笑。そんな父親と一緒に食べた朝食を想いながら、高橋は「朝食ソングコーナー」と題して"牛乳""サンドイッチ"を続けて披露した。普段はアコースティック・バージョンだが、今回は特別にバンド・バージョンということで、バンドメンバーが牛の被り物をしながら揃って横に揺れてリズムを刻み、可愛らしくプレイ。箸休め的に会場を和ませてくれたのも良かった。

そこから一転、高橋は再び表情を引き締め、真摯な態度でアコギを鳴らした"16歳"、男性の女々しさをありのままに表現した"誰もいない台所"で、胸に突き刺さるような言葉の力、心を動かすような歌の力を圧倒的なリアリティをもって私たちに教えてくれる。そして、いよいよ後半戦。「ここからは数少ないアッパーな曲をやることで、集まってくれたみなさんと楽しい気持ちになりたいのですが、まだ元気は残っていますでしょうか?」と高橋が煽ると会場からは大歓声が沸き起こる。「高橋優という人間は、ツアーの1週間くらい前になると、みなさんにお会いできるという喜びと緊張で頭の中はそればっかりになっちゃいます」と男の性(さが)を曝け出した"頭ん中そればっかり"で高橋はエロティックな仕草とともに歌い乱れフロアをかき乱し、さらにはガナリ声で目をひん剥き怒りの感情を爆発させた"こどものうた"で一触即発のグルーヴを叩きつけると、フロアの高揚感は一気に最高潮に達した。その熱狂にさらに火をつけたのは、「僕の中にある熱い思いを受け取ってもらいたいんです!想いよ、届け!」と挑発していった"想いよ、届け"だ。高橋はハンドマイクでタオルを振り回しながら、モニターに足をかけたり、ステージの左右を行き来したり、《番号教えて!住所教えて!早く別れて!早くこっち来て!》とストレートな想いをぶちまけた。本編ラストはラジオオンエアチャートで2011年上半期の1位を獲得したという"福笑い"で締めくくられる。人と人との繋がりを大事に想い、感謝の気持ちを伝えるとともに歌われたこの歌は、この日、この瞬間にSHIBUYA-AXにいた人々全員の心を照らし笑顔の花を咲かせた。

アンコールでは、1月18日にニュー・シングル『卒業』をリリースすることを発表し、その新曲"卒業"を早速披露。悲しみから光のある方向へ行ける、悲しみから卒業できるという思いを込めたというこの歌は、誰の心にもスッと染み入るような普遍性を持った優しいバラードだ。さらには、来年7月1日に渋谷公会堂にてワンマンライヴが決定したことを伝え、オーディエンスとの再会を誓って"友へ"で締めくくる。「今日のライヴは一生忘れない」と深く一礼した高橋優の姿はきっと私たちも忘れない。終演を告げるSEとして"想いよ、届け"が流れるものの、会場からはタオル回しの応戦が続き、一人ステージに残った高橋は「みなさん、まだ盛り上がってくださるなら……」といって、最後の最後に"少年であれ"を弾き語りで歌ってくれた。

高橋優は自分の想いに素直であると同時に、その想いに奮い立たされたリスナーに対しても真っ当に向き合ってくれる。彼の歌がこれほどまでに必要とされているのは、彼自身が必要だと思うことだけを当たり前のように歌っているからなのだと思う。自分にとって必要な歌を歌うことが自然と誰かのためになっているという関係性が心を打つ素晴らしいライヴだった。(阿部英理子)


1.誰がために鐘は鳴る
2.終焉のディープキス
3.素晴らしき日常
4.希望の歌
5.靴紐
6.8月6日
7.ほんとのきもち
8.牛乳
9.サンドイッチ
10.16歳
11.誰もいない台所
12.頭ん中そればっかり
13.花のように
14.こどものうた
15.現実という名の怪物と戦う者たち
16.想いよ、届け
17.福笑い

アンコール1
1.卒業
2.友へ

アンコール2
1.少年であれ(アコースティックver)
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