タヒチ80 @ LIQUIDROOM ebisu

昨年もアルバム『ザ・パスト、ザ・プレゼント&ザ・ポッシブル』を携えてツアーを行ったフレンチ・ギター・ポップの至宝=タヒチ80が、この5月に横浜で行われたGREENROOM FESTIVAL 12への出演もあって1年と間を置かず来日。大阪と東京においてもそれぞれ公演を行った。5/18の大阪公演では、共にGREENROOM FESTIVALへの出演を果たすことになるザ・ドラムスと豪華共演。そして迎えた東京・恵比寿リキッドルームのステージである。東京公演のゲスト・アクトを務めるのは、ブルターニュはレンヌ出身の4人組バンドであるマンソー。5/23にはタヒチのグザヴィエ&ペドロがプロデュースしたデビュー・アルバム『LIFE TRAFFIC JAM』(邦題:『マンソーの人生讃歌』)をリリースする。演奏面ではさすがに緊張を感じさせるし拙い部分もあるのだが、ジュリアン(Vo.)の甘くソウルフルなファルセット・ヴォイスを前面に押し出し、メンバー間で頻繁に楽器を交換しながら、手作り感たっぷりのほっこりしたファンキー・ポップをプレイしていてとても楽しそうだ。何より、もろにタヒチ80チルドレンといった印象で繰り出されるキャッチーかつ心地良いアプローチの楽曲が良い。わずか7曲という短い時間ではあったけれど、ラストの“Full-Time Job”ではダンサブルに盛り上げてオーディエンスからの喝采を浴びるのだった。そして20時を迎えるというところで、タヒチの面々が登場だ。結論から書いてしまうと、溜め息が漏れるような抜群の安定感でベスト盤+『ザ・パスト、ザ・プレゼント&ザ・ポッシブル』+新曲という最高のセット・リストを披露するステージになっていた。キーボード奏者のジュリアンがタヒチと平行して行っていたバンド活動のために離脱、オリジナル・ドラマーのシルヴァンは相変わらずスタジオ・ワークに専念しているため、ライヴではもう一人のドラマーであるラファエルが叩く、ということで4人編成のステージに。ジュリアンの穴を埋めるべく、メンバーがあの手この手で工夫を凝らしていたのも見物であった。タイトでおしゃれなこと極まりない“Here Comes…”、仄かなブルーが泡のように弾ける“All Around”と歴代のシングル曲から、UKでは近々ダウンロード・シングルとしてリリースされる新曲“Escalator”のグッとエッジが立ったロッキン・リフも決まる序盤。更にはそのカップリング曲である“Mr. & Mrs. Jones”でのユーモラスなコンビネーションも響かせて、ポップのプロフェッショナリズムがシュガー・コーティングされたような、凄むでもないのに説得力を増してゆく演奏はさすがにこの道十余年。煽り立てる必要などまるでなく、スペーシーなシンセ・フレーズが織り込まれる『ザ・パスト、ザ・プレゼント&ザ・ポッシブル』収録の“Gate 33”が披露される頃には、オーディエンスたちは一様に体を揺らし、ハンド・クラップを自然発生させてしまうのだった。グザヴィエが「もうちょっとダンスのプラクティスをするかい? じゃあ、そんな君たちのために」と告げて自らキーボードを奏で、ライヴでは定番のファンキーなインスト・チューン“Antonelli”へ向かう。ペドロのリード・ベースが動き回って更に手拍子を巻く“Big Day”と、ダンサブルなのにまるで汗臭くない、タヒチ独特のムードが構築されていった。大体グザヴィエ、シャツの胸元を大きく開いてセクシーなことこの上ないのだが、それが嫌味でも何でもなくただクールでおしゃれなところが余計に腹立たしい(褒めています)。僕は、21世紀のポップ・ミュージック・シーンをリードしてきたのは、英米よりもフランスのインディー・ポップ・グループだと思っている。タヒチ80は日本をはじめアジア圏で大きな支持の火が点いたバンドだし、フェニックスは世界中のインディー・ポップ・ファンに愛されるグループに成長した。ダンス/エレクトロの分野では、言うまでもなく米国のメインストリーム・ヒップホップから日本国内のダンス・ポップに至るまで、とてつもない影響力を発揮している。フレンチ・インディー勢は、どういうわけか、サウンドとグループの「ポップなキャラクター化」がすこぶる上手い。それによって、もの凄い勢いで世界に浸透した。軽やかでファンキーな快感原則に則ったバンド・グルーヴと、キャッチーなメロディ。そしてグザヴィエの、キャラクターそのものと言えるクールなファルセット・ヴォイス。タヒチ80登場時のインパクトは、やたら完成度の高いキャラクターゆえに絶大だった。スクリーンに映し出されるアニメーション映像が楽曲とシンクロしつつ、本編後半は『ザ・パスト、ザ・プレゼント&ザ・ポッシブル』の楽曲が届けられる。このアルバムの、タイトル通りにレトロ・フューチャー感が漂う濃厚なコズミック・ファンクは、タヒチ80のキャラクターを活かしつつ新しいサウンドを獲得しているという点で実に見事だ。メデリック(G.)がギターと同時にせわしなく鍵盤もプレイする“Easy”の場面で少々プレイをトチっていたが、それまでが甘い高揚感の向こうに鬼気迫るようなプロフェッショナリズムを忍ばせる演奏だったものだから、正直ほっとしてしまった。「そろそろ『パズル』の曲をやるけど、いいかい?」とグザヴィエの一言から、フレッシュなギター・ポップ“Made First”が響き渡る。本編ラストは、ペドロがパンダの被り物とグローブを装着してエレクトロニックなシークエンスを加えてゆく“Crack Up”だ。あのパンダ・グッズは4月~5月頭にかけての中国・台湾ツアーで手に入れたものだろうか。ただでさえ丸顔キャラのペドロがパンダになってしまう、こういうところが「キャラクター化」の抜かりないところである。要するに、かわいいということだけど。アンコールは女子オーディエンスに捧げられたメロウなポップ・ナンバー“Something About You Girl”など3曲。ファンも心得たもので、「このままで帰らせるかい」とばかりに先ほどよりも盛大なダブル・アンコールの催促が巻き起こるのが可笑しい。バンドも、わかってるよ、といった感じでニコニコと再々登場。「新しい曲も覚えていてくれて嬉しいよ。次の曲は、“Heartbeat”、“ハートビート”デス」とわざわざカタカナ読みするような発音で紹介するグザヴィエであった。いつまでも色褪せない、完璧なエヴァーグリーン・メロディ。なんというか、タヒチ80がいる時代のロック・ファンで、つくづく良かった。ここにいる全員、チケット代の分は一人も残さず満足させてやるぞという、そんなパフォーマンスであった。(小池宏和)■Manceau
01: The Way It Is
02: Lady Killer
03: Take Back
04: Miracle Days
05: Little By Little
06: Tricia
07: Full-Time Job■Tahiti 80
01: Here Comes…
02: All Around
03: Get Yourself Together
04: Escalator
05: Mr. & Mrs. Jones
06: Gate 33
07: Antonelli
08: Big Day
09: 1000 Times
10: Solitary Bizness
11: Darlin' (Adam & Eve Song)
12: Easy
13: Made First
14: Defender
15: Crack Up
encore
01: Something About You Girl
02: Chinatown
03: Unpredictable
encore-2
01: Heartbeat
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