「前作のサウンドからいかに離れるか」を毎回課題に作品を作るこのバンドは、直線ではなく、ジグザグの進化ラインを刻んできた。そこに共感するのは、探究心とチャレンジ精神、フォーミュラに寄りかからない姿勢はもとより、我々リスナーと同じ、ポップへの尽きぬ愛情と好奇心が原動力になっているからだろう。
アコースティックな生音とバンド・サウンド重視で、古典的な作りを敷いた前作。対する本5thは、シンセや打ち込み等のエレクロ・サウンド/クリア&タフなビートを軸に、エフェクトやテクスチャリングの細部も美しい、音と響きのモザイクを鮮やかに映し出していく。2ndにおける幻想的な電子空間と3rdのダンス・グルーヴが見事に融合してみせた、その達成には深い満足を覚える。ポップの生命線であるソングライティングの値も極めて高く、会心の1枚である。クラフトワークのアウトバーンを滑走しながら、遂にはブライアン・ウィルソンが手を振るシンフォニックな音の浜辺へ抜けていく――本作に過ぎるそんなご機嫌な光景は、彼らがイノヴェイティヴなポップの現代の後継者であることを再確認させてくれる。(坂本麻里子)
ブレイクスルーは終わらない
タヒチ80『ザ・パスト、ザ・プレゼント・アンド・ザ・ポッシブル』
2011年02月09日発売
2011年02月09日発売
ALBUM