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調和を作りながらも互いが依存せず、それぞれが自立して奥深さや意志を持つ。彼らの生み出す音楽は、歌とメロディ、楽器の音色同士が理想的な人間関係のように成立している。だからこそ聴き手も、彼らの音楽を聴くと穏やかな気持ちになり、自ずと心を解放できるのかもしれない。3作目のアルバムは生楽器が占める割合が増え、アコースティックなアプローチやオーガニックな質感のサウンドデザインが施された。それゆえに木漏れ日のような柔らかさと憂いを兼ね備えた歌声も、より立体的に映し出されている。歌詞も直感的かつ散文的になり、語感の良さがメロディを引き立てているため、音も歌も意味を飛び越え、聴き手の感性を直接撫でるような軽やかさが生まれた。中でもラストを飾る“Branches”のアウトロは崇高でどこか謎めいており、物語の続きがこちらに委ねられるような感覚に陥る。この浮遊感と没入感は、余韻を丁寧に描くからこそなせるもの。ポップスの新たな扉を開く挑戦的な作品だ。(沖さやこ)
(『ROCKIN'ON JAPAN』2024年12月号より)
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