電大 @ 下北沢GARDEN

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「電大 TOUR "DD01"」

 今年6月リリースの前作『Δ結線』からわずか4ヵ月で新作アルバム『D-SHOCK』完成! そして2度目の全国ツアー!……と、ご存知ユニコーン・川西幸一/手島いさむ/EBIによるバンド=電大のフル回転ぶりが止まらない。で、その2本目の全国ツアー『電大 TOUR "DD01"』全21本中17本目にして、11/17・18・21・22と4日間にわたって行われる東京・下北沢GARDEN公演の最終日。ツアーは11/30:広島・ナミキジャンクション公演まで続行中なので『D-SHOCK』収録曲以外の記述はここでは割愛させていただくが、およそ「3ピース」という言葉では括りきれないこの3人の、どこまでもマジカルで、それでいて「腕白な」という言葉がぴったりくる瑞々しい爆発力に満ちた音が、下北沢GARDENを濃密な歓喜で埋め尽くした一夜だった。

電大 @ 下北沢GARDEN
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 ハード・ロックの美学とエッジ感をそのギター・テクを通していとも鮮やかに体現するテッシー。47歳とは思えない「大人しい青年」的な佇まいとは裏腹に、そのベース・プレイにパンク魂を滲ませるEBI。大口径バスドラで空気を震わせながら、パワフルで切れ味鋭いドラミングでアンサンブルに強烈な推進力を与えていく川西。ユニコーンのライブでは間近で観ることは難しい3人のプレイの1つ1つが、すぐそこで展開されていくのである。“Chuo Free-Way”のソリッドなロックンロールにも、クラッシュ風のレゲエがかったサウンドからポップの彼方へ駆け抜けていく“Beautiful Sunday”にも、粘っこいリフのイントロでタオル乱舞の熱狂を描き出す“Body Guard”にも、「この3人だから鳴らせる躍動感」と「この3人でしか鳴らせないアイデアとプレイアビリティ」がみなぎっている。

 EBIと仲良しだという芸人=たいがー・りーが登場して「DENDAI」プレートを掲げる中、EBIの「歌唱指導」に合わせて高らかな「D・E・N・D・A・I」コールが巻き起こった“D-SHOCK”。ハード・エッジなサウンドも、オーディエンスとの何よりのコミュニケーションのツールとして至って飄々と、にこやかに聴かせてしまうあたりに、3人の音の包容力を感じる。全身がびりびり震えるような“ハイウェイスター”のハード・ロック感も、2012年という時代との整合性とかシーンの動向とかいうことはきれいにすっ飛ばした次元で、途方もない高揚感と開放感を与えてくれるものだ。『D-SHOCK』の7曲を軸に、『Δ結線』の曲も、ユニコーン曲の電大アレンジ・バージョンも交えつつ、脇目も振らずドカドカズバズバと快楽とロックのど真ん中を撃ち抜いていく3人の音が、どこまでも爽快に胸に響く。

 そして。「電大のDVD(前回のツアーを収録したライブDVD『電大 周遊記 "DD00"』)、124分収録されてますけど、前のツアーはオリジナル曲が7曲しかなかったので、それが総計23分ぐらい。あと101分はしゃべりが入ってます(笑)」とテッシーも言っていた通り、もはや楽曲と並んで(?)電大名物となった観のある、2曲3曲ごとのゆったりのんびりしたMC(テッシーは「MCじゃない。雑談だから!」と言ってました)。「SMA(ユニコーンのほうの事務所)が作ってくれた川西さんの誕生日ケーキに『59』って書いてあった話」を皮切りに、
手島「53歳なのに! まあ53歳でも大したことですけどね」
川西「まあ、59になってもやってることは同じだと思うけどね。だいたい、音楽を始めた時は『27歳で死ぬ』と思ってたんだよね。天才はだいたい27歳で死ぬじゃない? でも、生きとるんですわ3人とも!」
EBI「天才じゃなかった!(笑)」
手島「努力型のロック・バンド(笑)」
EBI「努力……してますか?」
川西「いさむちゃんはしてると思うよ。だって、今回のツアー中、何ヵ所かで反省してたじゃん? 『今日のしゃべりがなあ……』って。そこかい!って(笑)」
……といった具合に、話が転がるに任せっ放しのフリートークにげらげら笑っていると、平気で10分くらい経っていたりする。

電大 @ 下北沢GARDEN
電大 @ 下北沢GARDEN
 「ツアーが始まって、17本目? なおかつ今日は東京公演最終日!」(川西) 「だからって、特別なことは何もやりません!(笑)」(手島)のやりとりにフロアから「飛んでー!」(ユニコーンのツアーでの宙吊りにちなんで)のリクエストが出たり、しゃべり倒すぞ!と気合い入れていたわりに中盤のMCがいまひとつ噛み合わない理由について「電大、東京に戻ってくるとかしこまっちゃう(笑)」(EBI) 「同じ野獣ですけど、動物園の中にいるか、野生にいるか、という違いかと……」(手島)ともじもじ語り合うメンバーに向けて「小噺やって!」の声が飛んだり、後半で曲のイントロをトチったテッシーに「俺が代わろうか!」と呼びかけた男子ファンが、その後何曲かのテッシーのプレイを目の当たりにして「やっぱりテッシーのギターがいちばんだー!」と絶叫したり……ツッコミ不在の3人の天然MCに、オーディエンスの無茶振りが絶妙に絡まって、最高にハッピーな空間を生んでいく。

 この日、平均年齢49.67歳の3人に向けて幾度となく降り注いだ「かわいい!」の嵐。それこそが、四半世紀を越えるキャリアを経たからこその表現力を、それこそバンド組んで1週間の中学生のような快活さとともに発散している川西/手島/EBIの3人への最大の賛辞だろう。そして、彼らがその快活さを体現している背景には、2009年の奇跡の再始動から今なお続くユニコーンという物語が大きく影響しているであろうことも、この場に集まったファンは知っているはずだ。

 「初めて電大をご覧になった方! だいたいこんな感じなので(笑)。(電大への)『ご入学』おめでとうございますということで」とEBI。「一度入ったからには、卒業はないので。留年はいいよ! 除籍は絶対にしないから!」という彼の言葉通り、単なる「新譜の再現ライブ」では絶対に生み出せない、音楽とコミュニケーションがイコールになってリスナーをじっくりと捉えて放さないエンタテインメント空間が、ここには確かにあった。12/28の『COUNTDOWN JAPAN 12/13』出演に加え、大晦日の22:30からは新代田FEVERで年越しワンマン・ライブ開催決定。3人の活躍は2013年へと続く!(高橋智樹)
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