【ライブレポート】ダミアーノ・デイヴィッドが放ったポップスターとしての輝き――ソールドアウトした初ソロ来日公演

【ライブレポート】ダミアーノ・デイヴィッドが放ったポップスターとしての輝き――ソールドアウトした初ソロ来日公演

昨年9月、ソロプロジェクトを始動させたマネスキンのダミアーノ・デイヴィッド。ソロならではのパーソナルな輝きに満ちたデビュー作『ファニー・リトル・フィアーズ』を引っ提げ、今年10月末、待望の単独来日公演を行いました。チケットはソールドアウト、歓喜の渦に包まれたライブの模様をレポートします。(rockin’on 2026年1月号掲載)


【ライブレポート】ダミアーノ・デイヴィッドが放ったポップスターとしての輝き――ソールドアウトした初ソロ来日公演
文=粉川しの

マネスキンと比較しても遜色ない、煌めくオーラとカリスマ。マネスキンでは想像できないほどの、リアルで繊細な人間像。ダミアーノ・デイヴィッドの初ソロ来日公演はその二つを見事に両立させた、彼にしかできないエンターテイメントかつ、パーソナルな告白の場となった。彼のソロデビュー作『ファニー・リトル・フィアーズ』が、大きくポップに振り切れたアルバムとなったのはご存知の通り。9月にはタイラ、ナイル・ロジャースと組んだ新曲“トーク・トゥ・ミー”他、5曲の新曲を収録したデラックス盤『ファニー・リトル・ドリームズ』をリリースしており、ほぼソロ曲のみでセットリストを組める曲数が確保できた。その結果、彼だけの世界を構築し、なぜ自分がソロをやる必要があったのかを、饒舌に証明するステージとなった。

9月から始まったソロツアーは世界各地で大盛況、日本も東京&大阪共にソールドアウトになった。そして定刻通り、満場のガーデンシアターのステージにダミアーノが颯爽と登場すると、場内は割れんばかりの歓声と悲鳴で満たされる。ラメのセットアップで着飾ったダミアーノ、「DAMIANO DAVID」の眩い電飾ロゴと併せて、アルバムきってのポップチューンである“ボーン・ウィズ・ア・ブロークン・ハート”で幕開けたステージは、のっけからハイボルテージ! “ザ・ファースト・タイム”、“ミステリアス・ガール”とアッパーな楽曲を畳み掛ける前半は、ポップロック調というかエモ調というか、ダミアーノのロックがマネスキンのロックとは全く違う、ということをまず大前提として示す場になっていたと思う。

バンドは2人のバッキングボーカルを含む7人編成で、演奏は驚くほど巧い。しかも単なる技術屋集団ではなく、ダミアーノとフリを揃えて踊ったり、コミカルな小芝居を繰り広げたりと、耳で聴いて興奮し、目で観て楽しいバンドだ。そんなバンドを率いるダミアーノは「日本に戻ってくることができて本当に嬉しいよ。僕がこの国をどれだけ愛しているか、みんな知ってるよね」と言い、ペロッと上着をめくって日本で入れたタトゥーを見せてくれたりと、目に見えて身軽で無防備。満面の笑顔で手を振る姿は、限りなく彼自身だと感じる。この日は“シルヴァーラインズ”以外の全ソロ曲に加え、ブルーノ・マーズとマーク・ロンソンのカバーを披露、ロンソンの“ナッシング・ブレイクス・ライク・ア・ハート”をメロドラマティックに歌い上げたところで第1部が終わる。

ステージは3部構成で、シンプルな白シャツに着替えて登場した第2部は、彼自身に肉薄するインティメットなセクションになった。ダミアーノ曰く「自分の人生を3つの時期に分けて表現した」そうで、第1部がマネスキンの成功と苦悩、壊れてしまった自分の表出だったのに対し、この2部は何故壊れてしまったのかを探り、「若い頃の自分の夢」の中に閉じ込められていたからだと気づく、という物語だという。そう考えると《君の完璧な人生で僕は迷子になった》と歌う“パーフェクト・ライフ”は、第2部の1曲目に相応しいナンバーだろう。ここで歌う「君」がかつてのダミアーノ自身だったと、明らかにされるからだ。ちなみに、開演前にはジョニ・ミッチェルの曲がかかっていたが、自分の痛みも弱さも歌に託して昇華するという意味において、第2部はミッチェルへのオマージュを感じさせるセクションでもあった。「僕の一番のお気に入りの曲」だと紹介された“タンジェリン”は内に溜まった憂鬱を絞り出すような熱唱で、自分を閉じ込める夢の殻を突き破ろうとする、圧巻のパフォーマンスになった。

背中がぱっくり開いたセクシーなジャンプスーツに着替えて再登場したダミアーノは、ピンと伸びた背筋も美しく、どこか晴れやかな表情で“ゾンビ・レディ”を始めた。第3部はこれまでで最もシアトリカルで、レトロフューチャリスティックなサウンドに乗せ、ディストピアの恋人たちが至高の愛を誓うラブソングが続く。観客の盛り上がりも最高潮で、手拍子にコーラスにと歓喜が爆発していく。《人類が火星に移住しても、君の腕の中で死ねるなら僕は地球に残る》と歌う“マーズ”は、そんな第3部に相応しい壮大なエンドだ。彼の「滑稽で小さな畏れ」から始まった表現が、いつの間にかアリーナ級の会場を揺らすスペクタクルに至る、という飛躍こそがダミアーノ・デイヴィッドのソロの真髄だと思う。

最後は客席に降り、「アリガトウゴザイマス!」と最前列のファンとハイタッチを交わし、手渡された日本代表のユニフォームを着込むと、一礼して去っていったダミアーノ。昔の夢から解放された彼は、次に何を夢見るのだろう。


12月5日発売の『ロッキング・オン』1月号、絶賛発売中です。ご予約はお近くの書店または以下のリンク先より。

rockin'on 編集部日記の最新記事
公式SNSアカウントをフォローする

人気記事

フォローする
音楽WEBメディア rockin’on.com
邦楽誌 ROCKIN’ON JAPAN
洋楽誌 rockin’on