「初めてNHKホールのステージに立たしてもらってますけど……ミュージシャンやっててよかったなあ!って思わされるくらい気持ちいい会場だなって。みんなの歓声とか手拍子とかがね、降ってくるんですよ。それが気持ちいいし、嬉しいです」という光村龍哉の声に、満場のNHKホールから文字通り拍手と歓声がステージへと降り注ぐ風景はまさに圧巻。NICO Touches the Wallsにとって最長となるトータル23公演の全国ツアー『NICO Touches the Walls TOUR 2012“ALGORHYTMIQUE”』のセミ・ファイナル=東京:NHKホール。10月:SHIBUYA-AX、11月:Zepp Tokyoに続く今ツアー3本目となる東京公演だが、「今まで10本前後のツアーだったんで、20本を越えるってどういう気持ちなんだろう?って思ってたんですけど。どんどん会場も大きくなっていって……気持ちいいね!」という光村の言葉通り、9月27日のスタートからライブハウス→ホールと舞台を移しながら目映いロックを放射してきた彼らの、どこまでも力強い「今」が凝縮された一夜だった。
まだツアー・ファイナル=12月20日:大阪・オリックス劇場の公演が控えているのでセットリストの掲載は割愛するが、この『TOUR 2012 "ALGORHYTMIQUE”』は特に新作音源のリリース・タイミングのツアーではないので、この日のステージも光村いわく「珠玉の名曲たちの中から、選りすぐりの曲」で構成されている。“バイシクル”“カルーセル”などアルバム『HUMANIA』の楽曲や“夏の大三角形”など最新楽曲群から初期曲“行方”まで幅広く選曲。“バニーガールとダニーボーイ”“THE BUNGY”といった色鮮やかでワイルドなロックンロール群や“手をたたけ”のような晴れやかなアンセムはもちろん、凍てつく大地を照らし出すような清冽なサウンドスケープを提示してみせた“Aurora”、そして服部良一の名曲にサイケデリックとディスコを盛り込んでスリリングな音世界を展開するカバー曲“ラッパと娘”など、NICOの音楽的キャパシティを全開放するような意欲的なアクトだった。
そして新曲。古村大介&光村のギターの掛け合いに、坂倉心悟&対馬祥太郎のタイトでミステリアスなビートが絡む“チェインリアクション”が、やがて赤黒く渦巻く狂騒感を描き出していく展開には、これまでのNICOのサウンドからさらに一歩も二歩もロックの奥底へ踏み込んだような手応えを感じる。さらに、19日にリリースされるシングル曲“夢1号”。4人の鮮烈なコーラス・ワークが聴く者を現実からふわっと引きはがし、UKギター・ロックのクール&アダルトな発展形とでも言うべきアンサンブルが心を妖しく惑わせる。ロック・バンドとしてのダイナミズムと、アーティストとしての新たな音楽世界ーーその両方向への探求心が、今も彼らの中でどんどん大きくなって、それがNICOの音楽世界を前へ先へと突き動かしているーーということが、それらの新曲からも十二分に伝わってきた。
「古い曲から新しい曲までお送りしてまいりましたけど……」と、終盤のMCで静かに語る光村。「『珠玉の名曲たちを』と大口叩いてみたはいいものの、やっぱり昔の曲とか……もちろん俺らは、その時その時のカッコいいものを一生懸命詰め込んで、シングル曲だろうとカップリング曲だろうとアルバム曲だろうと、同じようにエネルギーを注ぎ込んできたけど、みんなはどうなのかな?とかね。でも、今日のみんなの表情とか、空から降ってくるような歓声を聞いてると、俺たちが今までやってきたことは、ひとつも間違いなく、文句なしで珠玉の名曲揃いだなと、思わされます」。ひたすら前だけを向いて走り続けてきたNICOが、自らの歴史を丸ごと「今」の宝として再認識するために、このツアーが果たした役割は、4人が想像するよりも遥かに大きかったのかもしれない。客席から再び、惜しみない拍手が降り注ぐ。ソリッドにロックンロールを突き詰めることで、彼らの持つ華麗さが内からあふれ出した『PASSENGER』。そこで獲得したロック・バンドとしてのアイデンティティを手に、多彩なサウンドに貪欲にチャレンジした『HUMANIA』。そして“夏の大三角形”とさらに「その先」へ……この日のアクトは、そんなNICOの歩みの確かさと未来への予感を、3500人のオーディエンスとともに分かち合う場でもあったと思う。

ストイックに楽曲を畳み掛けた本編とは一転、アンコールのMCでは一気に和やかな空気に。各メンバーが「ツアー中に成長したと思う点」を挙げることになったのだが、「自分のベースをライブ前に拭くようになった(でも今日は開場後に「拭いてない」と気がついてスタッフに拭いてもらった)」(坂倉)、「去年買った自分のスマホでLINEができることを一昨日やっと知った。で、昨日設定して、今朝からLINEばんばんですよ」(古村)、「ツアー中は『ホテル引きこもり』だったのが、ひとりで街を散策するようになった」(対馬)とツアーとほぼ関係ない話になり、光村が「(古村に)コーラスうまくなったじゃん!」「(対馬に)成長っていうか逆に……アンコール前に必ずトイレに行くのやめてほしい」とツッコミを入れて会場の爆笑を呼んでいく。そんな和気藹々とした4人の姿が、この日の彼らの音楽の躍動感と一体になって、最高に心地好い余韻を生んでいた。『TOUR 2012“ALGORHYTMIQUE”』はいよいよファイナルを残すのみ。 そして『COUNTDOWN JAPAN 12/13』には2日目=12月29日・「EARTH STAGE」トップバッターとして登場!(高橋智樹)