Base Ball Bear @ 日比谷野外大音楽堂

『日比谷ノンフィクションⅢ』

2009年、及び2010年に続いて久々に開催され、小出祐介(Vo./G.)いわく「Base Ball Bearの数少ないシリーズ・ライヴ」である野音公演『日比谷ノンフィクション』の第3回。「2年ぶり、3年ぶりですか? めでたく野音の抽選が当たりまして。前回なんて2デイズやってるから、2日間続けて当選するなんて、相当な確率らしいよ。天気もなんとかもって……ほぼ100パーセント台風だって言ってるやつもいて」。そうなのだ。よりによって梅雨時期の開催ではあるのだが、ベボベ楽曲の数々が夏を迎え撃つという点で極めて重要な意味を持つこの野外ライヴ。前日の西日本ほどではないにせよ日中はひどい蒸し暑さに見舞われ、しかも台風の接近にハラハラさせられてはいたものの、いざ蓋を開けてみれば公演中はまったく雨を寄せ付けなかった。ちなみに、終演後の深夜からは関東圏の広い範囲で土砂降りである。まったく、野音の抽選も然りだが、神々に見つめられているとしか思えない、そんなベボベのステージであった。

白地に黒でバンド名をどん、としたためたバックドロップを背負い、リラックスした様子で姿を見せたベボベの4人が、思い切りよく音出しを開始する。野音の空気を胸一杯に吸い込み、小出が「日比谷ー!!」とシャウト一閃、座席から立ち見エリアにまで及ぶオーディエンスのハンド・クラップを巻きながら、涼風を運ぶ“BREEEEZE GIRL”、続いては夏を目前にした“PERFECT BLUE”と、シチュエーションにずっぱまりの楽曲群でステージの幕を切って落とすのだった。がっちりと作り込まれたワンマン公演というよりも、むしろ肌に感じる季節の移ろいにリアルタイムで心情をシンクロさせてゆくような、伸び伸びとした音の立ち上がりである。先に紹介した小出の挨拶を挟み、オーディエンスの間の手が鮮やかに決まってゆく“17才”からは、ベボベ流のロックなダンス性が加速。ギターのファンキーなカッティングが心地良く弾ける“彼氏彼女の関係”、関根史織(Ba./Cho.)と堀之内大介(Dr./Cho.)によるボトムがしなやかなラテン・グルーヴを形成する“アイノシタイ”、そして切なさがオーヴァードライヴしたまま踊る“愛してる”といったステージ前半の流れを生み出してゆく。熱く、狂おしいのに、暑苦しくはない。

この後、小出の口からは、まずこの日解禁となったリリース関連の新情報が伝えられた。ベボベが6月26日にミニ・アルバム『THE CUT』をリリースするのは周知の通りだが、それと同日に発売される、アニメ『惡の華』のコンセプトEP『惡の華譜』に、書き下ろしの新曲“光蘚”が収録されるという。9分超の大作ナンバーとなっているそうだ。「同じ日に発売なんで、買いやすいと思います」とその話題を終えると、今度は堀之内。前ツアーで話題となった、彼がドラム・ヘッドに書き込んだ文字を巡る「メンバー間での精神的な違い」の問題(詳しくはツアー・セミファイナルのレポートをご覧ください→http://ro69.jp/live/detail/81528)で、「今日、両親も観に来てるからさ。おれ、脱退しないよ! メンバーが言ったことを書こうと思って、今日は〈BELIEVE〉って書きました!」と。それに対して小出は、冷笑を浴びせかけながら話をこじらせたり、かと思えば2人で『ティーンエイジ・ミュータント・ニンジャ・タートルズ』の話題を持ち出して勝手に盛り上がったりしている。

で、前ツアー中に募っていた、『日比谷ノンフィクションⅢ』のリクエスト曲。「軽く無視しようかと思ってたんだけど(笑)ていうか、最下位の、0票の曲をマジでやろうとしてたんだけど、さすがにそれはやめました。いや、どの曲かは、その曲の名誉のためにも言いませんよ! AKBの総選挙だって言わないでしょ! 《え〜っ!?》って言う文化やめろ! 新歓コンパみたいなノリやめろ! 大学生になったのか、新歓コンパの人になったのかどっちなんだ!!」と、小出のキレ芸で強引にダレたムードを払拭しつつ、リクエスト上位の“BOYS MAY CRY”(ぐずぐずしていた割に、音の立ち上がりが余りにも鮮やかでびっくりした)、そして切ないギター・フレーズと美しい歌詞が伝うリクエスト第1位“short hair”と、ベボベのセンチメンタル・サイドが全開になってゆく時間帯だ。そう言えば、“short hair”の第1位に合わせたわけではないかも知れないが、関根のヘア・スタイルもショートになっていた。夜へと向かうセンチメンタルな時間にとどめを刺すのは、同期サウンドとバンド・サウンドのレイヤーが織り成す“君はノンフィクション”だ。

小出×堀之内のスリリングな、かつユーモラスなヴォイス・パーカッションが散りばめられたジャム・セッションを挟み込み、4人に戻って“SIMAITAI”から狂騒の終盤戦へと傾れ込んでゆく。バックドロップは公演タイトルを大書したものに切り替えられ、ライティング効果も目に眩い。今回のショーへイ・コールを呼ぶ湯浅将平ダンス・タイムは“真夏の条件”である。湯浅は終盤、熱いギター・プレイを披露しまくっていて凄かったのだが、このときの生命力に満ち溢れた舞いっぷりも、面白いというより本当の意味で見事であった。今回の公演の、バンドの伸び伸び/生き生きとしたパフォーマンスを象徴する姿だったと思う。“yoakemae”に続いては、小出の語りかけるような歌い出しから、鉄壁のバンド・アンサンブルで逃れようのない高揚感へと到達する“Tabibito In The Dark”、BPMが更に跳ね上がる“海になりたい part.2”、そしてカウント・アップのコーラスを執拗に煽り立ててフィニッシュする“LOVE MATHEMATICS”と、瑞々しさを保ったままバンドのダイナミズムを描き出す、そんな本編を終えるのだった。

新曲群については、『THE CUT』の楽曲も“光蘚”も披露されなかったが、『日比谷ノンフィクション』の空白期間を埋めるように近年の曲群を配し、何よりも季節の手応えを受け止めながら、2013年の夏へと向かう、ベボベの生の姿を確認することが出来たステージであった。小出は、「どれもまだ決まってないけど」と前置きしながら、ニュー・アルバムの製作や、3度目の武道館公演や、来年の『日比谷ノンフィクション』に向けての意気込みも語っていた。さしあたっては、各地の夏フェスでその本領を発揮してくれるはず。そちらも楽しみだ。(小池宏和)

01. BREEEEZE GIRL
02. PERFECT BLUE
03. GIRL FRIEND
04. 17才
05. 彼氏彼女の関係
06. アイノシタイ
07. 愛してる
08. BOYS MAY CRY
09. short hair
10. 君はノンフィクション
11. SIMAITAI
12. 真夏の条件
13. yoakemae
14. Tabibito In The Dark
15. 海になりたい part.2
16. LOVE MATHEMATICS

encore
01. HIGH COLOR TIMES
02. 祭りのあと

encore-2
01. changes