avengers in sci-fi(ゲスト:9mm Parabellum Bullet) @ Shibuya O-EAST

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『avengers in sci-fi presents "SCIENCE ACTION"』

アベンズ・サウンドの太陽風がキャパ1300のO-EASTに吹き荒れるような、壮絶にして爽快なコズミック・ロック・ワールド! このライブの4日前=6月19日に「過去3年間でライブ演奏回数上位の楽曲」を収録した初のベスト・アルバム=『Selected Ancient Works 2006-2013』をリリースしたばかりのavengers in sci-fiの、東京(23日:Shibuya O-EAST)/大阪(26日:心斎橋Music Club JANUS)/名古屋(27日:池下CLUB UPSET)を巡るツアー『avengers in sci-fi presents "SCIENCE ACTION"』の初日。18時の開演前に渋谷を直撃した豪雨にもめげることなく集結したオーディエンスの期待値を、アベンズの3人が遥か銀河レベルのパワフルな演奏でもって凌駕してみせた、圧巻の一夜だった。

avengers in sci-fi(ゲスト:9mm Parabellum Bullet) @ Shibuya O-EAST
大阪・名古屋公演ではSawagiをゲストに迎えるこのツアー、東京公演のゲストは9mm Parabellum Bullet。5月にリリースされたばかりのシングル曲“Answer And Answer”で会場を怒濤の熱狂空間へと叩き込み、“新しい光”では「9mmのワンマンか?」と錯覚するくらいのでっかいシンガロングの輪を生み出し、「アベンジャーズ・イン・渋谷だな?」と菅原卓郎が呼びかける頃にはもはやアウェイもホームも関係ない高揚感がO-EASTを満たしている。「ベスト・アルバム発売、おめでとうございます! 我がバンドのドラマー・かみじょうちひろ、avengers in sci-fiの宣伝部長に――あまりにも好きすぎて自主的に就任したんですけど。彼からひとこと申し上げたいことが……」という卓郎の言葉から、かみじょうコメントの代わりに“Universe Universe”のイントロを演奏してみせる9mm。驚きと歓喜の声が沸き上がる。「かみじょうくんはファンすぎるから『avengers in sci-fiが売れるためなら俺は何でもする!』とよくわからないことまで言い放ったこともありますよ」。フロアがどっと沸く。

avengers in sci-fi(ゲスト:9mm Parabellum Bullet) @ Shibuya O-EAST
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「でね、俺たちもアルバムが出るんですわ」と卓郎も言っていた通り、6月26日発売の5thアルバム『Dawning』から“The Lightning”“黒い森の旅人”も披露していた9mm。初めて聴いた人も多いはずだが、メロディとアイデアとエネルギーの波状攻撃のような9mmの「今」の即効性と爆発力を、この日のオーディエンスの熱いリアクションが何よりリアルに示していた。ギターをぶん回し、ステージ狭しと飛び回りながら、全身震撼ものの轟音を楽しげに繰り出す滝善充。格段に力強くなったプレイでボトムを支える中村和彦。人間工学逸脱レベルのリズムを表情も変えずに炸裂させるかみじょう。そして、フロントマンとしてひと回りもふた回りも逞しさを増した卓郎の歌声と佇まい。「前、俺たちのツアーにアベンジャーズが出てくれたんだけど、今度はこうして俺たちが出たり、俺たちがまた呼んだりして、競い合いながら――競い合い? 『高め合い』だ! カレーとうどんが高め合うようにさ……」という卓郎のMCがフロアを「?」で包んだのはほんのご愛嬌。全11曲のアクトでその絶好調ぶりを存分に見せつけながら、アベンズに最高の形でバトンを渡していった。

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そして19:17、いよいよavengers in sci-fi登場! 大阪&名古屋公演が控えているので、ここでの楽曲についての記述は数曲に留めさせていただくが、『Selected Ancient Works 2006-2013』の収録曲を中心としたスペース・ロック・オペラは終始途方もないダイナミズムと多幸感に満ちていた。というか、そもそも“Nayutanized”しかり“Universe Universe”しかり、ライブ・アンセムの高純度結晶である今回の『Selected Ancient Works~』を引っ提げてのツアーなわけで、熱狂で全身焦がす心のスタンバイはばっちり整っているオーディエンスばかりなわけだが、そんな会場丸ごとロックの遥か向こう側の音宇宙へと導いていたのは明らかに、この日の3人の至上の熱演だった。要塞の如くずらりと並んだエフェクターや鍵盤、タッチパッドなど機材群を操りながら、ハイブリッドでエモーショナルなロック・アンサンブルを轟かせていく木幡太郎&稲見喜彦の緻密で獰猛なプレイ。そして、そのサウンドにジェット級の推進力を与えていく長谷川正法のタイトなドラム。ブレイクダンスさながらのアクションでオーディエンスひとり残らず煽り倒していくような木幡のアグレッシブなパフォーマンスが、フロア一面ジャンプとダンスと熱唱で埋め尽くされたO-EASTをさらに異次元の祝祭の風景に塗り替えていく。ソリッドに磨き上げられたギター・ロックとしての強度。超高性能なダンス・ビートの躍動感。そして、誰も体験したことのない世界を音楽で追い求めるロック・ミュージックの見果てぬロマン……それらが渾然一体となって、圧倒的な熱量と悦楽を生み出していく。

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そんな中、ひときわ異彩を放っていた――というか新次元のスケール感と荘厳さをもって響いていたのが、『Selected Ancient Works~』に収録された新曲“Crusaders”だった。《この歌を捧げるよ/滅びた国の戦いに/少しだけ悲しいよ/だけど好きさ/昨日より本当に/さらばクルセイダーズ》……悲哀と虚無感と、それでも愛する何かのために注ぐ想いが入り混じった、どこかレクイエムのようなムードを漂わせる歌詞。その物語性にめくるめく雄大さを与える歌のメロディ、シューゲイザーの如く五感を痺れさせる木幡のギター&稲見のベース、遠い星から伝わってくるようなエレクトロニックな残響。それらがやがて、ゴスペルにも通じる神聖で透徹した空気感の中でエンディングを迎える――「先日、ベスト盤なんていう、少々センチメンタルなものが出まして。みんな、なんか『解散する』って言わせようとしてるだろうけど、そういうわけでもなく(笑)」と、この日のMCで木幡は冗談めかして語っていたが、かく言う自分も“Crusaders”を最初に聴いた時には、バンドの中で何か大きなものが終わって、新しいところへと向かおうとしている意思表明の曲か、あるいは……?と一瞬考えたのも事実だ。そして、それは同時に、この中に真摯な想いが凝縮されているに違いないと思わせるだけのドラマチックな壮大さと、聴く者すべてを抱き止めるような包容力を、この“Crusaders”という曲が備えているからに他ならない。

折しも地球に最も近い満月「スーパームーン」と重なったこの日、“Odd Moon Shining”の後に「今日はスーパー・ムーンらしいから……」とクールにキメつつ話す木幡が「フォウ!」と観客から上がる声に「……フォウフォウ言うのも無理ない(笑)」と応えてフロアを沸かせた瞬間。“Universe Universe”でメンバー3人が時間差で重なり合って歌い上げるコーラスのパートを、踊りまくりのオーディエンスがハモリまでしっかり一大シンガロングで再現してみせた瞬間――そんな場面のひとつひとつが鮮烈に胸に残る、最高のステージだった。終演後に会った木幡は「“Crusaders”はもっとよくなる」と話していたし、アベンズが描く新たな音風景はさらに熾烈で美しいものになっていくに違いない。ツアーは26日大阪、27日名古屋と続くので、参加される方はお楽しみに。そして、29日発売の『ROCKIN' ON JAPAN』8月号では『Selected Ancient Works~』について、とりわけ“Crusaders”について迫った木幡のインタビューが掲載されるので、そちらもお楽しみに。(高橋智樹)
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