ゼブラヘッドに直撃ロング・インタビュー! 新作『ブレイン・インベーダー ~脳内ジャック』&最多8回目となるサマソニ出演について、全員に訊いた!

pic by Yuki Maeda
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「シマウマ軍団」ことゼブラヘッドが、3年5ヶ月ぶりになる9thアルバム『ブレイン・インベーダー ~脳内ジャック』を完成! パンク・ロック、ヒップホップ、ヘヴィ・メタルなど、メンバーそれぞれの音楽的背景を最大限に活かし、これ以上なく自由度と挑戦魂をメラメラと燃え盛らせた今作は、バンドの持ち味と言えるミクスチャー感がより一層爆発している。

ただし、パーティー・ロックを信条にしている彼らだが、じゃあ、重苦しい今の世界の中でパーティーするためには、どこに目を向けるべきなのか――そんなシリアスな現状も見据えた今作の魅力について、メンバー全員に対面取材で大いに語ってもらった。

インタビュアー:荒金良介
通訳:竹澤彩子

●今作はダンを含む現5人体制に固まって3枚目のアルバムになります。音源を聴いて、従来のゼブラヘッドが持つ陽性のパーティー感とソリッドなメタル・サウンドが今回はナチュラルに融合している印象を受けました。バンドとしても現体制のグルーヴ感がしっかり固まってきた実感はありますか?

ベン・オズモンドソン(B、以下ベン)「そのコメントは感激だね。今、君を思いっきりハグしたいくらいだよ(笑)」
アリ・タバタビィ(Rap、以下アリ)「足かけ3年もかけてようやく完成した新作だからね。ツアーの合間に時間を見つけてはスタジオに入ってさ。そのせいもあり、今回のアルバムって、何にも考えてないんだよ。どの曲をシングルに持ってこようとか、まわりのリアクションとか、一切考えずにただ自分達が最高にいいと思う曲を作ったんだ」
エド・ウドハス(Dr、以下エド)「うん、ただひたすら自分達にとって気持ちのいい音楽をやっただけなんだ。原点に立ち返ったところはあるかもしれない」
ベン「その上でさんざん遊んだし、色んなことにトライしまくったからね」


●前作『ウォーク・ザ・プランク』はオリエンタルなメロディやアコースティック・ギターを取り入れた楽曲もあったりと、非常にバラエティに富んだ作風でした。しかし、今作はバンドとしての地盤が固まった上で新しいことにトライしてる印象を受けたんですよ。

アリ「バンドの基盤ってことで言えば、もともとメンバーそれぞれバラバラの音楽を聴いて育ってるからね。ベンはゴリゴリのパンク・キッズだったし、自分はヒップホップを聴いて育ってきたし、ダンはメタルだろ? それが前提にあり、メンバーそれぞれがインスピレーションを受けてる音をリスペクトしてるんだ。『お前、それポップすぎない?』、『それじゃ、もろメタルじゃん!』とか言って、お互いに制止しない。そうやって等身大の自分達で鳴らした音が自然に集まって曲の形になっているんだ」

●なるほど。ゼブラヘッドがこの新たなサウンドを獲得する上でダンの加入はかなり大きかったと思うのですが、いかがですか?

ベン「ダンがこのバンドに新しい風を吹き込んでくれたってマジでそう思ってるよ。いつもやる気満々なんだよね。古株のメンバーの誰か1人が愚痴をこぼそうものなら、その場ですぐ笑い飛ばしてくれるし。あと、新しいメンバーが1人入るだけですでに新鮮だしね」
ダン・パーマー(G、以下ダン)「ハハハハハハハ」
アリ「いや、マジでそうだよ。あと、ダンはツアー先でも『今日はあの城の観光に行こうぜ!』とか積極的だから、バンド全体にすごくポジティブな影響をもたらしてくれるんだ」
ダン「みんな、ありがとう!」
アリ「今日はここまでにしとくか。これ以上持ち上げないよ」
ダン「もっと聞かせてくれよ(笑)!」
アリ「いや、でもメタル・サウンドの貢献ぶりは確実にあって、ダンに『ちょっとリフを10個弾いてくれよ』って言ったら、『よっしゃあ!』って感じで10どころか12個くらいのリフを余裕で返してくるからさ」
ダン「いいね、最高のインタビューだよ(笑)」


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●昔と今で曲作りに関して変わってきたと思うところはありますか?

ベン「長くやればやるほど、余計なことを考えないようになったね。どんどん自分勝手になってるからさ」
アリ「自分達がデビューした頃がまさに今みたいな感じだったんだよ。ただ仲間同士で集まって、自分達の好きな音楽を好きなようにやってるだけという」

●それがサウンドの風通しの良さにも繋がっているんですね。そして、今作の第1弾配信“オール・マイ・フレンズ・アー・ノーバディーズ ~何者でもない友たちよ”、第2弾配信“ウィアー・ノット・オールライト ~俺たち、まじ大丈夫か? ”共に歌詞はパーティーで騒ごうぜ!という感じではなく、シリアスな現実を歌ってますよね?

アリ「歌詞に関して、アメリカは特にそうだけど、今これだけ世の中に重苦しいムードが立ち込めていて、それこそ自分が今まで生きてきた中で経験したことがないくらい社会が分断されてるような気がするんだ。その重苦しい空気が曲の中にも自然に反映されている。とはいえ、もちろん楽しむことも大事だし、仲間内で集まって盛り上がろうぜ!っていうノリもあるんだぜ。“ウィアー・ノット・オールライト~”は、今の世の中にいかに対話が欠けているかってことについて歌ってる。みんな一方的に自分の意見や考えをまくし立てるだけで、相手の言葉に耳を傾けたり思いやったりしなくなってるっていうかさ。ただ、そういうシリアスな曲もありつつも、能天気で楽しい曲もあるし、そこがこのアルバムのいいところなんだよ。両方がいい感じに混ざり合ってる」

ベン「今回のアルバムの『ブレイン・インベーダー~』っていうタイトルのイメージもそんな感じなんだよね。外野からのノイズや意見やらが入ってきて、自分を洗脳しようとしてくるけど、まわりから押しつけられる考え方に合わせて自分の考えを曲げる必要なんてない。自分には自分の考えがあるわけで、それを堂々と語っていいんだっていうね」

エド「人によって色んな考え方があるだろうけど、その上でまわりの意見も参考までに耳を傾けてみるくらいの気持ちで、自分なりの正解を見つけていけばいいじゃないかっていう」


ベン「たとえば“ウィアー・ノット・オールライト~”のMVにしても言葉による説明は一切登場しなくて、ただイメージだけを映し出してるんだよ。原子力発電所と自然の風景写真を横に並べて一切の説明もなしだけど、見る人がそこで自分なりに考えることができるようにしているんだ。誰の解釈にも惑わされることなく、誰に指図されることもなくね」

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●シリアスな空気という意味では今作の冒頭ナンバー“ウェン・ボース・サイズ・サック、ウィアー・オール・ウィナーズ”がそれを象徴してます。スレイヤーの新曲じゃないかと思うほどヘヴィなオープニングでビックリしました。

全員「ハハハハハハハ」
ダン「それは一番の褒め言葉だよ(笑)!」
エド「ダンのメタル愛にこっちも便乗したというわけさ」
ベン「最初から色んなジャンルに手を出してたんで、今さら誰も俺達を止められない。ちなみに俺もスレイヤーの大ファンなんだ(笑)」

●また“ユー・ドント・ノウ・エニシング・アバウト・ミー”はホーンを取り入れた明るい楽曲で、これも今までになかった新しいアプローチですよね?

アリリール・ビッグ・フィッシュのホーン隊が今回参加してくれたんだ。ホーンのアイデアも、もともとリール・ビッグ・フィッシュ側から持ちかけられた話だしね。一緒にツアーをまわってるときに、向こうから『“アンセム”のバックで良かったら、ホーンで参加するよ』って言われて、最初はマジか?って感じだったけど、やってみたら客の盛り上がりぶりが半端なくてね。それでレコーディングにも呼ぼうという話になったんだ」


●さらに“チェイシング・ザ・サン”はスカ調のリズムを用いながら、ユニークなサウンドが耳に引っ掛かる曲調です。これもチャレンジな楽曲の一つだと思うのですが。

アリ「そうだね。家でヒップホップを聴いてたときに、たまたま自分のラップに合うループとかサンプルのアイデアを思いついて、それでバックの音も含めて自分のパートを作ってメンバーに送ってみたんだ。以前はメンバーがあらかじめ用意してくれた音に合わせてラップする形だったけど、その逆にトライしてみたんだよね。今回は自分が作ったサンプルを元に曲を作ってみたんだ」
●“アップ・イン・スモーク”も口笛を入れつつ、電子音も加えたミドル・テンポの曲調でアルバムのいいフックになってます。それも今言ったようなことから生まれたんですか?

ベン「そうだね。いつもはインストゥルメンタルの曲をアリに渡して、そこにラップしてもらってたんだけど、今回はアリが最初に作った音を元にして曲を作ったんだ。俺達の作ったビートじゃなくて、アリ本人が作ったビートに合わせてラップしてるから、彼のラップ・スタイルも相当変わったよね」
ダン「それにエレクトロニックなドラム・ループをロックに変換するっていう、それもまた一つのチャレンジだったしね。すごく新鮮で楽しかった」
エド「自分達の楽曲のスタイルが根本的に変わったのは確かだね。今回のアルバムの中で一番気に入ってるところでもあるんだ」

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●ええ。それとさきほども“ウェン・ボース・サイズ・サック、ウィアー・オール・ウィナーズ”に関して触れましたが、“イチ、ニ、サン、シ”、“ブレット・オン・ザ・ブレイン”もダン・ワールド炸裂のメタル・ナンバーです。ギターのアプローチもこれまではエディ・ヴァン・ヘイレンっぽい煌びやかな音色でしたけど、今回はもっと重心の低いソリッドな音になってますよね。

ベン「最初はやっぱり気を使ってたと思うんだ。しばらく一緒にやってるうちに、どれだけヘヴィにしてもこのバンドなら受け止められるってことがわかったみたいで(笑)。あともう一つ付け加えるなら、マッティのボーカルが入ることで曲が良い意味でガラリと変わるんだよ。マッティのこの美しい声によって!」
マッティ・ルイス(Vo/G、以下マッティ)「(ダミ声で)サンキュー(笑)!」
ベン「マッティは今喉の調子が良くなくて、今回のインタビューではおとなしいんだけど……どんなにヘヴィな曲でもマッティの声が被さることで、みんなが合唱したくなるようなキャッチーなものに変わるから、あまり心配してないんだよね」
マッティ「まあ、典型的なメタルの歌い方とか、自分には無理だからさ(笑)」

●マッティの歌声が大活躍しているという点では、日本盤ボーナス・トラックとなるE-girlsの“フォロー・ミー”の日本語カバーも大チャレンジですよね?

マッティ「日本語は難しいから、日本のリスナーが聴いて『こいつ、何言ってるか意味わかんない』って言われないかどうか不安だったんだけどね」
ベン「レコーディング・ブースに入るときもめちゃくちゃ緊張していたからね。ただ、マッティが最初のワン・フレーズを歌い始めたときに、その場にいる全員が顔を見合わせて『あいつ、すげえな!!』って」
エド「マッティだけじゃなく、ダンだって日本語の曲に合わせて日本風のギターを弾くのに相当頑張ったんだぜ(笑)!」
ダン「ああ、そうだよ(笑)!」
マッティ「今回のアルバムって、マジでやりたい放題だよね。スレイヤーっぽい曲があり、ホーンあり、口笛が入った曲あり、日本のアーティストの曲があるという(笑)。これ以上ないくらいに完璧な組み合わせだよ」



●ここで少し話題を変えますが、結成した1996年から数えると、今年でキャリア24年目に突入ですね。僕も1999年の初来日公演から観ているので、そこから数えても20年ですからね。

ベン「忘れられないよ! 渋谷クラブクアトロだろ!」
アリ「自分達が日本でライブをやるなんて信じられなかったし、当時の行列を目の当たりにして、他のバンドの出待ちをしてるのかと本気で思ったくらいだからね(笑)。あれが最初で最後のライブだと思ったけど、それから何度も日本に呼んでもらえているからね。俺達の地元の友達や家族にも『世界中をツアーして、どこが一番良かった?』って訊かれたら、メンバー全員ともお世辞とかじゃなくて、迷わず『日本!』って即答するんだ」

●それはとても光栄です! あと、ゼブラヘッドは過去のMV“アンセム”でモーターヘッドのレミー・キルミスターとも共演する間柄で、2016年のジャパン・ツアーでは“エース・オブ・スペーズ”をカバーしましたよね。残念ながらレミーは2015年12月28日に他界しました。今、レミー対してどんな思いがありますか?

ベン「レミーは雲の上の存在だったけど、フェスなんかで会うと、いつも気さくに声をかけてくれるんだよね。共演が決まったのも、いきなり電話がかかってきて『この曲を弾けるように準備しとけ、明日レコーディングで俺が歌ってやるから』って。突然の話だったけど、こっちはもう二つ返事で『ぜひよろしくお願いします!!』って。『ロックンロールのおかげで俺は命拾いしたようなもんだ』って、レミーの言葉が今でも強烈に残ってるよ」


●では最後になります。今年もサマーソニックで来日しますが、日本のファンにメッセージをお願いします。

ベン「またサマーソニックに呼んでもらって本当に光栄だし、マジで楽しみにしてるよ! 今回で8回目ってことで過去最多出演アーティストらしいしさ。世界中、色んなフェスに行ったけどサマーソニックが一番最高だっていつも言ってるんだから! サマーソニックから出演のオファーがあったら、今やってる用事をほっぽり出してでも駆けつけるくらいだから。こうしてまた呼んでもらって本当に感謝してるよ!」



ゼブラヘッド『ブレイン・インベーダー ~脳内ジャック』の詳細は以下。