先頃、ストリーミング・サービスのスポティファイからアメリカ・ミシガン州で活動する、ヴァルフペックというファンク・バンドのアルバムが削除されたというが、削除されたのはまったく音楽が収録されていない作品だったとか。
作品は『Sleepify』と題され、10曲入りの作品で全体で5分の長さの内容だが、睡眠中に聴く音楽だとして実際の音はなにもないものになっている。この作品を8時間の睡眠中に聴いたとするとアルバムは96回繰り返し再生されることになり、このストリーミング印税によってヴァルフペックはおよそ2万ドル(約204万円)のツアー資金を稼ぎ出そうとして、本当にそれを実現させてしまったという。その後、この『Sleepify』は削除処分となったという。
ストリーミング印税は1回につき0.005ドルという換算になるので2万ドルの資金を稼ぐには400万回のストリーミングが必要で、これを一晩で達成するとなると4万1667人のユーザーが寝る時に聴く必要があったというが、バンドは結果的に540万回のストリーミングを達成し、3万ドル(約306万円)以上の資金を稼ぎ出したはずだとのこと。
当初、スポティファイも達成はありえないと踏んでいたようで、「非常におもしろい仕掛けですが、ヴァルフペックの作品については以前の作品の方が好ましいように思います。『Sleepify』の作風はどこかジョン・ケージの実験作品の派生作品のような印象を受けますね」と余裕のコメントを発表していたが、事態がストリーミング540万回を越えるにあたって、作品の削除に動いたという。
バンドがスポティファイからの削除依頼に応じなかったためスポティファイが自ら削除に動いたという話だが、キーボードのジョン・ストラットンは「実際にこの作品でお金を稼いでいると判明するとスポティファイはパニクり始めたんだよ」と説明している。また、その分の報酬は本当に受け取れるのかという問いについてジョンは「受け取れるはずだよ。スポティファイでは実際のストリーミング再生の2か月後に支払い発生するから、5月のどこかでどうなってるのかわかるはずだよ」と語っている。
なお、バンドは『Sleepify』のストリーミングでバンドへの支援を訴えた動画『Sleepify Video』も公開したが、ジョンはこの動画について次のように語っている。
「この動画でぼくは『Sleepify』を聴いてもらうことでユーザーのみんなにもレコード音楽の歴史をひっくり返す機会が与えられるとぶち上げたんだけどね。でも、バンドとしてこの冷酷な自由競争マーケットを生き残っていくにはヨガの実践と、草しか食べてない乳牛のバターの摂取が必要だよ」