ザ・シャーラタンズ、約5年ぶりの単独来日。Sub-Sonic Live 2015東京公演レポート

ザ・シャーラタンズ、約5年ぶりの単独来日。Sub-Sonic Live 2015東京公演レポート

今年2月にニュー・アルバム『モダン・ネイチャー』をリリースしたザ・シャーラタンズが、昨日3月19日(木)に東京で初日を迎えた英ファッションブランドFRED PERRY主催のイベント「Sub-Sonic Live」への出演でおよそ5年ぶりの単独来日を果たした。

RO69では、同公演のオリジナル・レポート記事を公開しました。

―――――――――――――――――――――――
【FRED PERRY Presents Sub-Sonic Live 2015 @ 渋谷TSUTAYA O-EAST】

素晴らしい来日公演だった。ザ・シャーラタンズはデビュー以来25年、途切れることなく活動を続け、日本にも何度も来てくれているバンドだが、今回のライヴは間違いなく、彼らの直近10年の来日公演の中でベストだったと言える。今回のシャーラタンズのライヴが素晴らしかった理由はいくつもあるが、その理由のひとつひとつに改めて、シャーラタンズが25年にわたって築き上げてきたキャリアがいかに唯一無二であるかを気づかされたのも感動的だった。

今回のシャーラタンズはフレッドペリーが主催する音楽イヴェント「Sub-Sonic Live」での来日で、彼らの登場前にシャムキャッツとDJのGakuji “CHABE” Matsudaがオープニング・アクトとして登場した。シャムキャッツはフレッドペリーの冠に相応しいモダン・ブリットなビート感覚に加えて、時にファンキー、時に昭和歌謡みたいなメロウまで、その振れ幅も楽しいパフォーマンスを見せてくれた。DJのCHABEもド頭からアンダートーンズの“Teenage Kicks”からコーナーショップの“Brimful of Asha ”に繋ぐという、この日のムードにドンピシャのプレイで最高だ。

そしていよいよシャーラタンズの登場なのだが、オープニングがいきなりの“Weirdo”!あのオルガン・イントロで一気に沸騰したオーディエンスに向けて放たれる2曲目がさらにダメ押しで“North Country Boy”!という容赦ないアッパー展開。しかもこの2曲の凄さとは、“Weirdo”がマッドチェスター期の彼らを象徴するグルーヴ系の名曲で、もう一方の“North Country Boy”はブリットポップ期の彼らを象徴するシンガロング系の名曲であるっていう点。つまりこの冒頭の2曲で、早くも90年代UKの二大ブームをサヴァイヴしたシャーラタンズが特別な存在である理由が示されるのだ。ティムものっけからすこぶるご機嫌で、万歳のポーズで両手をゆらゆらさせたり、スマホで写真を撮りまくったりしている。ティムの現在の前髪がめちゃくちゃ長いマッシュはデビュー当時と同じだが、25年前よりさらに前髪が長くて目はほぼ隠れている状態。そんな彼の変わらぬヴィジュアルに感動していたら、隣のマークはもっと変わっていなくてさらに驚いた。なお、2013年に亡くなったジョン・ブルックスに代わり、ドラムスはザ・ヴァーヴのピーター・サリスベリーが務めている。

今回のセットは前述の“Weirdo”や“North Country Boy”のような彼らのオールタイム・ベスト的ナンバーに加え、新作『モダン・ネイチャー』からのナンバーが7曲という構成だったのだが、この日のステージが特別なものになった最大の理由は、何と言っても『モダン・ネイチャー』のナンバーが最高!だったからだ。ベテラン・バンドのライヴにありがちな「新曲の反応はイマイチでオーディエンスは旧曲待ち」みたいな状態とは一切無縁だったこの日、特に“Tellin' Stories”を挟んで新曲が固めてプレイされた中盤は圧巻だった。中でもノーザン・ソウル×ディスコなシャーラタンズならではのダンス・ナンバー“Let the Good Times Be Never Ending”は、そのタイトルどおり「最高な時間は終わらない!」と言わんばかりのジャム的セッションに煽られ、オーディエンスの興奮もこの日ここまでで最高地点を記録する。この“Let the Good Times Be Never Ending”で点った熱が“One to Another”でさらに爆発する流れの万能感は本当に凄まじかったし、“Weirdo”のマンチェ・グルーヴ、“Let the Good Times Be Never Ending”のディスコ・グルーヴ、そして“One to Another”のオルガン・グルーヴと、シャーラタンズの25年を横断するそのグルーヴのバラエティに今更ながら超感動してしまったのだ。興奮のるつぼと化したフロアに向けて、さらにさらに上機嫌のティムは投げキスをかます。いや、彼も本当に嬉しかったのだと思う。

シャーラタンズは、言わばストーン・ローゼズとオアシスを繋ぐ存在だった。ローゼズの時代にも、オアシスの時代にも、彼らと共にマンチェスターを引っぱり、UKシーンのど真ん中で活躍し続けてきたバンドだった。しかもローゼズがアルバム2枚で解散し、オアシスもついに解散した今尚こうして新作を作り続け、しかもその新作からのナンバーでここまでライヴを盛り上げるなんて、そんな芸当が出来るバンドはシャーラタンズしかいない。つくづく希有な存在だし、彼らは過小評価されていると言わざるを得ない。でもその一方で、正真正銘の大物バンドなのに、いつまでたっても「アガり」にならないと言うか、大物バンドっぽさが生じないのもまた彼らの面白いところなのだ。それはティムをはじめとするメンバーの異様な若々しさもありつつ、何よりも彼ら自身の現場感覚の賜物ではないかと思う。しかも「若い奴らにはまだ負けん」みたいな気負いはなく、あくまでもナチュラルに構え、音楽を愛し、25年を経て今に至る彼らなのだ。そんなバンドだからこそ、メンバーを2人も亡くす悲劇をも乗り越えて一歩一歩進んで来られたのかもしれない。

“Emilie”、“Just When You're Thinking Things Over”は、オルガンに代わって軽やかかつしなやかなギターが主役を張るナンバーだ。もともとシャーラタンズは上手いバンドだが、彼らのこの軽やかさは基礎のグルーヴががっちり鍛えられているからこそだ。デビュー・アルバム『サム・フレンドリー』のナンバー“The Only One I Know”から『モダン・ネイチャー』の“Come Home Baby”に繋がれた本編ラストは、まさにシャーラタンズの25年の集大成にして大団円だ。“Come Home Baby”のゴスペル的昂揚は彼らの成熟の賜物である一方で、アンコール恒例の“Sproston Green”はこの日はかなりタイトでパンクなヴァージョンで、いちからグルーヴを生み出していくような瑞々しい興奮に満ちていた。経験と歳月を重ねて膨らみ艶を増すものと、経験と歳月を重ねてもなお変わらないもの、シャーラタンズの中にあるそのふたつが結実したフィナーレだったと思う。(粉川しの)


1. Weirdo
2. North Country Boy
3. Talking In Tones
4. So Oh
5. Tellin' Stories
6. Trouble Understanding
7. Let the Good Times Be Never Ending
8. Oh! Vanity
9. One to Another
10. You're So Pretty - We're So Pretty
11. Emilie
12. Just When You're Thinking Things Over
13. In The Tall Grass
14. How High
15. The Only One I Know
16. Come Home Baby

En1. Sproston Green
―――――――――――――――――――――――

なお、「Sub-Sonic Live 2015」の大阪公演は来週3月25日(水)に梅田 CLUB QUATTROにて開催される。大阪公演では、東京に続きザ・シャーラタンズとGakuji “CHABE” Matsudaが出演するほか、快速東京がオープニングアクトを務めることが決定している。

大阪公演の詳細は以下の通り。

●イベント情報
「FRED PERRY presents Sub-Sonic Live 2015」
大阪 2015年3月25日(水) 梅田 CLUB QUATTRO
出演:ザ・シャーラタンズ
オープニングアクト:快速東京
DJ:Gakuji “CHABE” Matsuda
開場18:00 開演19:00
オールスタンディング ¥4500(前売り・税込み)ドリンク代¥500 別
ぴあ(P:253-937)、ローソン(L:53983)、e+、会場、TOWER RECORDS(梅田大阪丸ビル店、梅田NU 茶屋町店)
(問)06-6535-5569(SMASH WEST)

更なる詳細は以下のサイトで御確認下さい。
http://www.fredperry.jp/subsoniclive/
http://www.smash-jpn.com
公式SNSアカウントをフォローする

人気記事

最新ブログ

フォローする