THE BACK HORNのロックはいつだって、愚かさも危うさも孕んだ人間の衝動をどこまでもリアルに体現する「波動」であり続けてきた。2015年の今ではもっと高い音圧で攻めまくるバンドだっているし、もっと音楽的に/精神的に尖鋭的な表現をしている人だって少なくないが、それでも山田将司/菅波栄純/岡峰光舟/松田晋二が一丸となって叩き出す歌と爆音が抗い難く胸に迫ってくるのはひとえに、「KYO-MEI」をキーワードに掲げる彼らの表現が「明けない困難の夜を踊り明かす」ための快楽装置でもなければ「人智を超える」ための飛び道具でもなく、「人間の在り様そのもの」を圧巻のヴァイタリティで描くことで、この時代に生きる僕らを丸ごと鼓舞し前進させようとするものだからだ。そして――9月2日リリースの両A面シングル『悪人/その先へ』から先日ミュージックビデオが公開されたばかりの新曲“その先へ”には、そんなTHE BACK HORNのマインドがより確かに、力強く息づいている。
THE BACK HORN - その先へ/特典DVD『イキルサイノウ』完全再現ライブ ダイジェスト
菅波が繰り出すツェッペリンばりのソリッドなロックンロールリフから一転、炎と向き合いながら自問自答のようにシビアな歌を放っていく山田の姿。やがて、菅波/岡峰/松田のアンサンブルと山田のアンセミックな絶唱が、燃え盛る業火すら凌駕するように魂の極みへと高まり、昇る朝日の中《生きてゆく その意志を》という言葉とともにクライマックスを迎える――というドラマチックな世界観が、今回公開された映像では「『イキルサイノウ』完全再現ライブ from マニアックヘブンVol.8」の模様(初回盤特典DVDのダイジェスト)を挟みつつ展開され、楽曲自体の持つ熱量と強烈に響き合っている。1998年から始まったTHE BACK HORNの「原点」と「今」と「これから」を貫くこの曲の視線は明らかにバンド側の「一人称」で描かれたものだが、この映像を観た後に残るのは紛れもなく、この曲に触れた自分自身の、今を生きる意志と手応えそのものだ。
4人が音楽面でお互いに新たな引き出しを開け合うことで、バンド自身の新機軸を次々に打ち出してみせたアルバム『暁のファンファーレ』以降初のシングルとなる『悪人/その先へ』。自身8年半ぶりとなる渋谷公会堂ワンマンライヴ「『KYO-MEI SPECIAL LIVE』〜人間楽団大幻想会〜」(4月30日)で初披露された“悪人”は、“その先へ”とはまるで異なるカオティックな切迫感に満ちた楽曲だったが、いずれにしてもTHE BACK HORNの「その先」の風景への期待を無限増幅させずにいられない、決意に満ちたシングルであることは間違いない。(高橋智樹)