2015年9月6日(日)、NHK総合でオンエアされる『特集 明日へ-支えあおう- 震災から4年半 未来に向けて(仮)』にmiwaが出演する。同番組は、毎週日曜日に放送されている東日本大震災プロジェクト番組の拡大版であり、この回は午前10時05分~10時52分/午後1時05分~5時29分(中断ニュースあり)という大きな枠での生放送となる。キャスターに畠山智之アナウンサーと伊東敏恵アナウンサー、ゲストには俳優・ミュージシャンの中村雅俊やmiwaらが迎えられ、また番組の後半には、片平里菜やナオト・インティライミらが出演した「明日へつなげるライブ~福島県郡山市~」の模様も放送される。
このコラムでは、miwaの番組出演に注目してみたい。なにしろ生放送ということなので、miwaが番組内で何を語り、伝えてくれるのかは想像の域を出ないのだけれども、まずmiwaの大きなアクションとして思い出されるのが、震災から3年8ヶ月後に発表された楽曲“希望の環(WA)”だろう。
“希望の環(WA)”ミュージック・ビデオ
“希望の環(WA)”は、OECD東北スクール(OECD=経済協力開発機構、福島大学、文部科学省の連携によって設立された復興教育プロジェクト)が行ったイベント「東北復幸祭〈環WA〉in PARIS」テーマ曲として、miwaが書き下ろした楽曲だ。そもそもは、OECD東北スクールに参加している中高生たちにmiwaファンが多く、彼・彼女たちが過去・未来・現在について綴った冊子「100の物語」をmiwaが読み、生まれたという楽曲だった。“希望の環(WA)”には同スクールの中高生たちもコーラスで参加し、MVには制作風景や「東北復幸祭〈環 WA〉in Paris」での演奏の模様も収められるに至った。
震災直後から、復興支援に取り組んできたミュージシャンは多い。救援物資を集めるために奔走する人。直接被災地に赴いて音楽を届ける人。作品やライヴを通して義援金を募る人。自らメディアを立ち上げて復興支援を考える人。現地での新しいライヴハウス設立に協力する人など、行動もさまざまだ。しかし、震災当時デビューアルバムさえ発表していなかった新人のmiwaは、何も出来ない自分自身にもどかしい思いをしていた。その思いは、シングル『希望の環(WA)/月食~winter moon~』リリース時の『ROCKIN’ON JAPAN』2015年1月号のインタヴューでも語られている。
「アーティストに限らずいろんな人が震災に対してアクションを起こす中で、できることが何もなくて、もどかしい思いをしたんですよね。あれから3年経って、こうやって曲を求められるようになって、東北復幸祭のいち参加者になって。こういうタイミングでお話をいただけたことがすごく運命的というか。ぜひとも受けさせていただくべきだって思って。(中略)みんなの気持ちをひとつにする代理人、そういう思いで歌詞を書いていきました」
また、“希望の環(WA)”が完成するまでの過程にふれ、次のようにも語っている。
「生死に関わる歌でもあるし、そこからどう未来に対する希望を伝えるのかっていう。情熱とか希望とか勇気とか、そういうものってとにかくそこに熱があるっていうことだから。それが世界を繋ぐエネルギーなんじゃないかなと思って。(“希望の環(WA)”は)みんながエネルギーを出せる曲だなって思ったんですよね。タイトル通り“環”っていう感じ。ほんとにどこにも正面がない、全部が表だよ、みたいな感じがありました」
そして、デビューから今日に至るまでのmiwaの劇的な成長は、誰にとっても驚くべき事実として目に映ったはずだ。驚異的な勢いで歌唱力を向上させ、それに伴って楽曲のスケール感も増し、みるみる大きくなってゆくライヴ会場では、その小さな体躯から放たれるエネルギーに圧倒される。まだまだ長い復興の道程で、積極的に東北を語り、東北の未来を紡いでいこうとする中高生たちの思いに寄り添った“希望の環(WA)”の中のmiwaは、自らメッセージを放つアーティストというよりも、まるで彼女自身がポップミュージックの化身であるかのようだった。結果的に“希望の環(WA)”は、「繋がる」というテーマのアルバム『ONENESS』を締めくくる1曲になり、また、自身最長となった全19公演の全国ツアー「miwa concert tour 2015 “ONENESS”」の本編フィナーレを飾る重要な1曲となる。
先にもふれたように、復興への道程は長い。時を経るほど、広く伝え続けるエネルギーは必要になってくる。震災直後に行動を起こすことができなかったと語るmiwaは、あれから4年以上の歳月を経て、今こそ、表現者としての力を思う存分発揮する機会を得ているのではないか。そのための番組出演ではないのか。若い世代の人々の行動がそうであるように、miwaが振り撒く音楽のエネルギーは未来そのものだ。ぜひ、しっかりと見届けてほしい。(小池宏和)