ビョーク、アイスランド政府の中央高地帯の電力開発計画に反対を訴える
2015.11.13 19:30
11月10日に『ヴァルニキュラ』の完全弦楽ヴァージョンである『Vulnicura Strings』をリリースしたビョークだが、アイスランドの峻厳な自然を体現する中央高地帯が開発によって損なわれるかもしれないと警告を発している。
中央高地帯は火山活動が活発な一帯で植物もほとんど生育しないため、人はまるで居住していないが、ごく限られた観光シーズンには世界中からその特異な光景を目撃したいという観光客を惹きつけていることでも知られている。しかし、アイスランド政府はこの中央高地を縦断するように道路の開通と高圧電線の敷設を計画していて、アイスランドの作家で環境学者のアンドリ・スナイル・マグナソンはこの計画は「手つかずの原野をふたつに分断することに等しい」と撤回を訴えている。
マグナソンとともに反対を唱えているビョークは次のように請願ビデオで訴えている。
「アイスランドの人々には今決断の時期が迫っています。でも、まだ(請願書の署名の締切までに)11日間ありますから、島を貫通する高圧電力架線の敷設をネットで反対することができます」
電力架線計画はイギリスとの共同事業で準備されていて、地熱発電や水力発電を利用したイギリスへの送電を見据えたものだという。しかし、中央高地帯はヨーロッパでも有数の手つかずの自然が残された場所となっていて、さらにこうした開発がこの厳しい自然環境で生きるさまざまな野生動物にどういう影響を及ぼすかが大きく懸念されてもいるとザ・ガーディアン紙は伝えている。かねてより中央高地帯の保全運動が叫ばれていて、昨年にはこの運動のためにビョークのほかパティ・スミス、オブ・モンスターズ・アンド・メン、リッキ・リーらの参加したチャリティ・フェスティヴァルも開催されることになった。
ビョークは請願ビデオでアイスランドの自然を愛するのならこの運動を支持してほしいと次のようにも訴えている。
「アイスランドは今ではヨーロッパ最大の手つかずの自然を有した国です。でも、これをやられたらそれも終わります。政府は中央高地帯にダムと発電所を50か所建設するといっていて、これを来年から始めるとしています。これを始めたらわずか数年でアイスランドの原野は姿を消してしまうかもしれません。わたしたちは中央高地帯を国立公園として指定する運動を始めようと提案しています。アンケート調査などではすでにアイスランド人の大半が国立公園化案に賛成していることが証明されています。政府に抵抗しているわたしたちの活動に世界中のみなさんからの支持や応援をお願いしたいです」
また、マグナソンは火山からそっくりそのままエネルギーを貰おうとするような虫のいい話はどだい無理なのだと政府の計画を批判していて、政府が目指しているようなエネルギー供給を実現するには結局、発電所を無数に建設していかなければならないと計画のずさんさを指摘している。当初計画されている5か所の発電所の建設だけでも「手つかずで繊細な自然を破壊せずにいられることなど考えられない」と訴えている。