先日発売された、水曜日のカンパネラのアルバム『ジパング』の勢いが止まらない。そしてその『ジパング』収録曲のうち5曲がアルバムリリース前にMVとして公開されていて、発売後にさらに1本が公開され、このアルバムの楽曲は現在全6曲をMVで観ることができる。そもそも自らの担当を「主演 / 歌唱」としているコムアイ。歌唱の前に「主演」を置くというのは、視覚的な表現をともなってこそ水曜日のカンパネラであるという強い思いの表れだと思う(ちなみにコムアイは年間100本以上の映画を観るほどの映画好きとしても知られている)。だからこそ、過去作品においてもMVには相当力を注いでいるし、実際、楽曲に対するイマジネーションを広げるものとして、そのクオリティの高さは群を抜いている。今回の6本のMVも、それぞれにこちらの予想を上回る驚きの連続だった。
まず、アルバム1曲目となった“シャクシャイン”のMVは、早くも今年6月に公開され、その映像世界に引き込まれた人も多かったはず。早口言葉のような非常に難易度の高いラップ、そのテンポに合わせためまぐるしいカット割りが斬新で、こちらの想像力を思いっきり刺激する。北海道の名所や名物を羅列していくだけの歌詞が、まるで意味を持って押し寄せてくるかのようだった。
“シャクシャイン”
そして、アルバムの最後を飾る曲“マッチ売りの少女”のMVも凄い。このMVはアルバム発売から1週間後に公開された。《ゆらゆらゆらゆらゆらゆらゆら火が揺れる》《肉肉肉肉肉肉肉肉料理》と、言葉の連続がユニークなこの曲は、MVを観ることによって驚くほどイメージが変化した。白い衣装を身にまとったコムアイのしなやかで軽やかなダンスシーンに目を奪われるが、美しい映像になんとも言えない儚さと狂気を感じるのは私だけだろうか。言葉の面白さやサウンドの心地好さに魅力を感じていたこの曲、もちろんMVを観た後でもその評価に変わりはないのだけれど、MVによって視覚的なイメージを与えられてからは、突然不思議な妖しさが感じられるようになり、楽曲の奥行きが増したような気がするのだ。他の曲に比べればおとなしめな印象だったこの曲が、いまは大好きな1曲となった。
“マッチ売りの少女”
そのほか、ご存じ“ラー”の度肝を抜く壮大なスケール感、“メデューサ”の確信的な渋谷感、“小野妹子”の時空を超えた浮遊感+山田孝之出演のサプライズ、“西玉夫”の不思議な映画のような美しさ(タイトルとのギャップが水カンらしい)など、どのMVも細部まで練られていて、「主演」であるコムアイの演者としてのポテンシャルの高さがこれまで以上に際立つ作品ばかり。今回のアルバムで水カンにハマったという人には、ぜひともこの映像世界にも足を踏み入れて、さらに新たな魅力を発見してほしい。(杉浦美恵)
“ラー”
“メデューサ”
“小野妹子”
“西玉夫”