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    プシファーのメイナード・キーナン、トランプ大統領とお笑いの時代の到来を憂う

    プシファーのメイナード・キーナン、トランプ大統領とお笑いの時代の到来を憂う - プシファー『Money Shot』発売中プシファー『Money Shot』発売中

    北アメリカ・ツアーを終えて5月末からヨーロッパ・ツアーに乗り出すプシファーのメイナード・キーナンは昨今の時代や大統領選の行方について語っている。

    プシファーはトゥール、ア・パーフェクト・サークルに並ぶメイナードのプロジェクトとして2007年から本格的に活動を始めているが、今回が初のヨーロッパ・ツアーで実現まで9年かかったことについて、近頃ではアルバムやCDが売れないのでその収入を当て込んでむやみにツアーに出ることもままならないからだとカルチャー・サイトのザ・スキニーに説明している。そして、リスナーの方から興行屋にプシファーを呼ぶように自分たちから押してくれるまで辛抱強く待たなければならないのでこれだけ時間がかかったと語っている。

    また最新作『Money Shot』についてテーマが深化してショッキングな展開が少なくなっているように思えるという問いには次のように答えている。

    「ロサンゼルスに住んでた頃と較べると今の自分の生活環境はよっぽど静かで落ち着いたものになってるから、俺の音楽も大半がより交通渋滞で頭にくることとかではなくなってきて、むしろ未来について考えるものになってくるんだよね。でも、創作するにあたってはなにかしらの困難が設定として必要なんだ。いい文学っていうのは場合によっては、まずは最初に困難なことがあって、それを解決していくなんかしらの希望があるっていうのが多いよね。今度のアルバムにはそういうものがあると思うんだよ」

    さらに社会的責任というテーマが漠然と頻出することについては次のように語っている。

    「ソーシャル・メディアとそれにアクセスしてることで、人々は自分のクソみたいな、なんの情報にも基づいていないありとあらゆることについての意見を公に晒してもいいんだという権利意識をむやみに増大させてると思うんだ。しかも、自分のそうした意見にまるできちんと論拠があるようにその意見を掲げてくるんだよね。まるでここに書き込んだだけで自分は討論に勝ったとでもいってるような感じでね。でも、そうじゃないんだよ、書き込んだだけじゃ討論にならないから。少しでも討論の授業やコースを学んだことがある人なら誰だって、討論というものは、きちんと学習して論議の根拠となるものが揃っていなければやってはいけないと教えてもらってるはずだよ。ただの意見があるからってその下準備も省いていいわけじゃないんだよ」

    なお、共和党候補にトランプがほぼ確定した今年の大統領選についてメイナードは次のように語っている。

    「つまり、俺はイタリア系でもあり、アイルランド系でもあるんだ。俺のイタリア人としての血は俺をワイン造りとか、料理もするような家庭人にさせるんだ。でも、俺のアイルランド人としての血は、俺にえんえんと与太話にかまけて、『まずは人を笑わす』ことが第一っていう俺の性格にもなってるんだよ。だから、すごく分裂してるんだよね。けどね、トランプがアメリカを率いることになった時にはもうそれこそいろんなとんでもないギャグが生まれてくるはずでね、そのユーモアといい、その悲劇性といい、そしてきっとそこで起こる本当に悲惨なこととかは、きっとその先何十年にもわたってコメディアンには飯の種になるはずだよ。そしてアメリカ合衆国の終焉ともなるだろうね。もちろん、俺のもっと実際的な側面はこういうわけだよ、『ああ、これはどこかで見た光景だ、そうだ、これは1938年のドイツだ』ってね。映画『26世紀青年』の未来のバカ社会はもはや喜劇じゃないんだよ。あれはドキュメンタリーだったんだ。あのバカ社会に俺たちは今生きてるんだよ」
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