レイジ・アゲインスト・ザ・マシーンのメンバーらによるスーパーグループ結成秘話
2016.06.02 11:48
今年の大統領選に向けて、急遽パブリック・エネミーのチャックD、サイプレス・ヒルのBリアル、そしてレイジ・アゲインスト・ザ・マシーンのトム・モレロ、ブラッド・ウィルク、ティム・コマーフォードらで結成されたプロフェッツ・オブ・レイジだが、メンバーがそれぞれの活動母体のパブリック・エネミー、サイプレス・ヒル、そしてレイジについて語っている。
プロフェッツ・オブ・レイジではアメリカ大統領選候補のドナルド・トランプやバーニー・サンダーズらが政治に新風を呼び込んでいると目されること自体が危機的状態だとして、レイジ・アゲインスト・ザ・マシーン、パブリック・エネミー、サイプレス・ヒルらの楽曲は今こそ聴かれなければならないとツアーで3バンドの楽曲のパフォーマンスを提供していくことになっている。
5月31日にはロサンゼルスのウィスキー・ア・ゴーゴーで最初のライヴが行われ、次回は6月3日のロサンゼルスのハリウッド・パラディアムで公演が予定されている。ただ、ツアーそのものの日程は発表されていず、オフィシャル・サイトでは次回のライヴの時間のカウントダウンのみが表示されている状態になっている。
ユニットはレイジの楽曲も提供するものの、今回ザック・デ・ラ・ロッチャは参加しないため、チャックDとBリアルで担当することになり、これはザック本人も了解済みだという。メンバーはローリング・ストーン誌の取材にそれぞれのバンドをかつてどうやって知ったかを語っていて、ブラッドは次のように説明している。
「(レイジのメンバーが)ちょうど出会った頃、ザックがパブリック・エネミーのライヴのチケットを手に入れたんだけど、このライヴは暴動になるんじゃないかという懸念から中止になったんだ。あの頃の音楽は本当に刺激的で、ものすごく自己投影できたんだよね。ザックはあの頃、ものすごくヒップホップに影響されてたんだよ。俺が初めてサイプレス・ヒルを聴かされたのもザックを通してで、俺の車でテープをかけてくれて、『このバンド聴いてみてよ』っていって、『なんだこれ! すげーじゃん!』ってなってさ。レイジのメンバーのDNAというのは、お互いに知らない音楽を教え合っていくことなんだよ」
ティムは次のように振り返っている。
「バンドとして5回目にやったライヴがサンルイスオビスポにある大学で、パブリック・エネミーと一緒だったんだ。(レイジの)『レネゲイズ』にも収録したサイプレス・ヒルの"ハウ・アイ・クドゥ・ジャスト・キル・ア・マン"をやったんだよ。サイプレス・ヒルのファーストとパブリック・エネミーのセカンドはレイジ・アゲインスト・ザ・マシーンにとって最大のヒップホップからの影響となったんだ」
さらにチャックDは次のようにレイジを知った時のことを語っている。
「レイジ・アゲインスト・ザ・マシーンのデモのカセット・テープをもらって、マッチが付いてたんだよね。おもしろいなあって思ってさ。俺が特に惹かれたのは、ラップとハードでアグレッシヴなミュージックを合体させたところだったんだ。本当に惑星直列のような稀有な瞬間で、音楽のマジックが化学反応を起こして、歴史が塗り替えられるようなアーティストがどんどん登場してたんだ。その頃にライヴを観てなにが一番印象的だったかっていうと、観客が完全にいっちゃってたっていうことでね。あれほど破壊された会場は見たことなかったよ。壁は汗と血でぬるぬるだし。会場の通路とかのテーブルはどれもひっくりかえっちゃってるし、壁の建材とかも引っ剥がされちゃってるし、クレイジーだったから。あのバンドは俺たちの時代のレッド・ツェッペリンだったんだよ」
「レイジはあの頃のほかのバンドの大多数とは異質な怒りを抱えてたんだ。当時のロックの世界では政治の話はあまりされてなかったからね。どれも『うぇーん、昼飯代もらえなかった』とか、『親父に車を買ってもらえなかったから世の中むかつく』とか、そういうくだらないものだったからね。レイジが話題にしてたのは、本当に明確な問題で、俺たちにも叫ぶに値する問題だとわかってることだったからね」
Bリアルは初めてバンドを観た時のことを次のように振り返っている。
「レイジは友達に連れられて観に行ったんだ。その女友達にクラブ・ウィズ・ノー・ネームっていう店に連れられてったんだ。あの音を聴いた時にはほんとにぶっ飛んだよ。それでピットでファンと一緒にモッシュをしてたら、バンドにみつかって、それでステージに引き上げられて、その時やった曲がその後『ブラック・サンデー』の"ハンド・オン・ザ・グロック"になったんだ。それで友達になって、俺たちの最初のデカいツアーの時にも連中を連れて行くことにしたんだよ。俺にとっては、レイジはこの世代のブラック・サバスかレッド・ツェッペリンかっていうもんだよ。あの時点で俺はもうヒップホップ以外なにも聴いてなかったけどもともとは俺もロック・ファンだったんだからね。俺のなかでしばらく消えかかっていたロック・スピリットにまた火を灯してくれたんだよ」
なお、リハーサルについてティムは最初はチャックDとやったと明らかにしていて、"キリング・イン・ザ・ネーム"や"テイク・ザ・パワー・バック"などを試してみたと語っている。
「どんな手応えになるか確かめたかったんだ。その手応えはよかったよ。最初にやったのは"テイク・ザ・パワー・バック"で、それはこの曲の歌詞がチャックDからインスピレーションを受けてるように感じるからなんだ。しばらくこの曲の練習をやって、それからパブリック・エネミーの曲をいくつか取り上げて『レネゲイド』みたいに取り組んだんだ」
さらにBリアルが関わるようになった経緯をブラッドは次のように説明している。
「Bリアルはちょっと遅れて参加することになったんだけど、それは全員がずっと忙しかったからなんだよ。Bリアルのことはずっと念頭にあったし、一緒にやりたいのは自分たちでもよくわかってたからさ。それで(チャックDと)一緒にやってみて、ものすごくいい感じだというのがわかった時点で、『これならBリアルにも声をかけようよ』って話になったんだ」
なお、ティムによれば、チャックがサイプレスのセン・ドッグ役を受け持ったり、BリアルがPEのフレイヴァー・フレイヴを受け持ったり、そしてふたりがザックになったりと聴きどころ満点でとても刺激的だとのことだ。また、トムは次のように新曲も書いたと明らかにしている。
「"The Party Is Over"という新曲があって、これは全員で最初から書き上げた曲なんだよ。ぼくの意見ではこれはぼくたちの作品の中でもベストのひとつに入ると思うよ」