エルヴィス・コステロ、原点に戻る来日ツアー、ソロ弾き語りの東京公演を速報レポート

エルヴィス・コステロ、原点に戻る来日ツアー、ソロ弾き語りの東京公演を速報レポート

エルヴィス・コステロの原点に戻るソロショウ、「Detour」と題された来日ツアーが敢行された。

RO69では、東京・大阪を回った同ツアー、完全ソロの弾き語りとなった9月7日東京公演のオリジナル・レポート記事をお届けします。

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【エルヴィス・コステロ @ 昭和女子大学 人見記念講堂】

会場に着くと、ステージの上に年代物のブラウン管テレビを模した大きなセットが置かれていて、そのスクリーンで懐かしいコステロのPVが間断なく流れている。面白い趣向だ。それを眺めながらにやにやしていると、ほぼ定刻にラーキン・ポーの2人が登場した。ジョージア州アトランタ出身のレベッカとミーガンのロヴェル姉妹によるデュオだ。2010年に初共演して以来、コステロのショウにはほぼレギュラーと言っていいぐらい頻繁に同行している。アルバムでは通常のバンド編成によるフォーク・ロック~ブルース・ロックだったが、ライブではレベッカのヴォーカルとギター、ミーガンのスチール・ギターというシンプルな編成で、レベッカがベードラを踏んでリズムをとる。剥き出しの簡素なアレンジになる分、自然と荒々しく泥臭い南部ブルース色が前面に出ていた。レベッカのドスの利いた迫力いっぱいのヴォーカルもあって、聴き応え十分。今度はフル・バンドによる単独来日を期待したいところだ。

そして御大のライブは、全編これコステロ節満載の、サービス精神たっぷりの一大娯楽編だった。弾き語りなのに、こんなに盛り上がるライブも珍しい。2時間半近く、ギターをとっかえひっかえ、ピアノも弾きまくり、歌いまくり。声がデビューした40年前からまったく衰えていないので、アレンジを変えた昔の曲も最近の曲も新鮮に響き、違和感なく繋がる。コステロの曲はもともとアレンジが簡素で装飾や演出が少なく、時代状況にあまり左右されないので、歳月を経ても古びることがないのだが、この日は完全ソロの弾き語りなので、楽曲の純粋なエッセンス、繊細な機微のみが抽出され、彼のソングライターとしての傑出した個性と才能を改めて知ることにもなった。ギター一本の弾き語りなのに素晴らしい表現力だ。情感たっぷりなのに、決してベタベタとした情緒過剰にならずドライですらある。誰もが知る有名曲の間に、新曲やレア曲、隠れた名曲まで織り込んで飽きさせない。連日セットリストは大幅に変わっていたようだし、事前に主催者から渡された曲目表からも変わっていたから、その場の気分や客の反応で違うショウになるのだろう。手練れのエンタテイナーの本領発揮である。途中からはラーキン・ポーも登場し、数曲で共演。娘みたいな若い女子2人を従えてのコラボでさらに一段ギアがあがる。“Pump It Up”では流しのギター弾きよろしく客席を練り歩く趣向も。

背後のテレビのセットには幼少期から若い頃のコステロの写真や家族の写真、当時の文化や風俗を象徴するような映像などが次々と映し出される。それに応じて日本の想い出や家族の話、共演したアラン・トゥーサンの話もする。つまりこれはコステロの人生のストーリーを語るライブもあったわけだが、そんな湿っぽい懐古モードなど皆無で、時代を超えたコステロの音楽の本質をぐいっとたぐり寄せたような濃厚でエネルギッシュな最高のライブだった。(小野島大)
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