SEKAI NO OWARI、5日間のドーム・スタジアムツアー完遂! 新たな物語「タルカス」の全貌とは?
2017.02.13 18:50
SEKAI NO OWARIが、ドーム・スタジアムツアー「タルカス」を開催した。RO69では1月23日のさいたまスーパーアリーナ公演の模様をロングレポートでお届けする。
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●セットリスト
1. 炎と森のカーニバル
2. Death Disco
3. 虹色の戦争 *日替わり
4. 死の魔法
5. ムーンライトステーション *日替わり
6. 青い太陽
7. Never Ending World
8. マーメイドラプソディー
9. Monsoon Night
10. 眠り姫
11. Love the warz -rearranged-
12. Error
13. 天使と悪魔
14. SOS
15. Hey Ho
16. Dragon Night
ENCORE
1. RPG
2. インスタントラジオ
可動席を最大限に広げた「スタジアムモード」のさいたまスーパーアリーナの巨大な空間に踏み入れてまず目に入るのは、天井を突き破らんばかりにアリーナ中央にそびえ立つ、樹木を象った、いや巨大樹そのもののセンターステージ。
そして、暗転したアリーナに照らし出されたのはSEKAI NO OWARIのメンバー……ではなく、森の主たるオランウータン「ウンババ」。「今日は森の仲間が、みんなにある話をしよう。この森に伝わる『タルカス』という話を。ただし、『タルカス』の物語は、伝える者によって話の聞こえ方が違う」というウンババの言葉が、満場のオーディエンスを謎めいた物語の奥底へと導いていく――。
さいたまスーパーアリーナ[スタジアムモード]2Days(1/22・1/23)、ナゴヤドーム(2/4)、京セラドーム大阪2Days(2/11・2/12)の3会場5公演にわたって行われてきた、「SEKAI NO OWARI ドーム・スタジアムツアー2017『タルカス』」。
2013年の「炎と森のカーニバル」をはじめ、「TOKYO FANTASY」(2014年)、「Twilight City」(2015年)、「The Dinner」(2016年)と、「バンド」の「ライブ」というカテゴリーには到底収まりきらないコンセプチュアルなポップワンダーランドを展開してきたSEKAI NO OWARI。だが、今回たまアリ2日目=1/23公演で体験したのは、SEKAI NO OWARIのイマジネーションが楽曲の枠を越えて過去最高の密度とスケール感とともに結晶された、至上のエンターテインメント空間だった。
巨大樹の根元にはリズム隊/ホーン/ストリングスなど総勢14人の音楽隊がスタンバイ。楽曲のサポート演奏のみならず、森の動物たちの語りのBGMもすべて生演奏で披露していく――という構成が、1本のライブ全体をミュージカルやオペラのように大きなストーリーとして編み上げていく中、ステージに姿を現したFukase/Nakajin/Saori/DJ LOVEは巨大樹を背に、全方向の観客と向き合うように4人別々に4方向を向いた状態で“炎と森のカーニバル”、さらに“Death Disco”へ、と次々に楽曲を繰り出し、広大なたまアリを歓喜とミステリーの極致へと誘ってみせる。「The Dinner」でも生のストリングス&リズム隊を迎えて演奏を行っていたが、ホーンも含めたシンフォニックな大編成サウンドを得て、その音楽世界は格段にカラフルな輝きを放っていたのが印象的だった。
オーディエンスが腕に巻いたLED内蔵リング「スターライトリング」が一面に輝く中、“虹色の戦争”で「歌える?」と呼びかけるFukaseに応えて、会場一丸のシンガロングが広がる。「いいね!」と満足げなFukaseの言葉に、たまアリはさらなる熱気と歓喜で満たされていった。
円形のステージ上でそれぞれ90度ずつ回転するように立ち位置を変えながら演奏を進めていく4人。メンバー同士の立ち位置が離れていることもあり、ライブ本編中はMCは一切なし。演奏と『タルカス』の物語が交互に織り重なるような形でステージは刻一刻と進行していく。
王と国民が信頼し合っていたある王国。そこに暮らしていた男・タルカスの家が大嵐で崩れ、娘が壁の下敷きになってしまう。何日待っても助けは来ず、眠そうな王は城に籠りきりで、ついに娘は衰弱して死んでしまう。嘆き悲しんだタルカスは、同様に家族を亡くした者たちとともに王を糾弾。ついには革命が起こり、王は処刑される。悔しさに涙を流すタルカス――。
まずは鳥の「グリモン」が語ったそんな「信頼を裏切られた国民」としての『タルカス』の物語が、物悲しいピアノの響きを擁した“Never Ending World”、火の玉の特効と熱く乱反射し合う“Monsoon Night”といった楽曲と共鳴し、まったく新しい響きを生み出していった。
ステージ後半には巨大バルーンのクジラ「サリー」が登場、ゆっくりとアリーナ上空を泳ぎながら、『タルカス』の物語を「王視点」で綴っていく。
大嵐による災害に国王は誰よりも心を痛めていたこと。すべての家に救援を差し向けるのは不可能だったこと。寝る間も惜しんで対策を考えていたこと。そして、国民のやり場のない怒りを受け入れた国王が、処刑台で流した涙――。
正義も悪も割り切ることのできないふたつの視点の『タルカス』のストーリーが渦巻く緊迫した空間に、“Error”や“天使と悪魔”、そして“SOS”の純白のファルセットとサウンドスケープが優しく、力強く鳴り渡っていく。
ステージ上でメンバー4人が集まり、力強い多幸感とともに響かせた“Hey Ho”で高らかな《Hey Ho》コールが巻き起こったところで、ライブ本編もいよいよフィナーレ。
グリモンとサリーの話を聞いて「この『タルカス』の物語には、グリモンもサリーも伝え忘れたことがある」と告げるグリモン。処刑台の王が痩せ細っているのを見て、タルカスは王の悩みのすべてを悟ったこと。しかし、一度燃え上がった民衆の怒りの炎は消えず、王は処刑されてしまったこと。その時に流したタルカスの涙の本当の意味……。
「ドラゴンの鳴き声のような人々の泣き声が鳴り響いた夜は、後に『竜夜』と呼ばれ、どんな争いも一度休戦して、敵も味方も楽しくお祭りをする日になりました」――グリモンとサリーの言葉に、一面の大歓声が沸き起こる。
「そう。これは、みんながよく知っている、あの歌のお話じゃよ!」と伝えるウンババに続けて響き渡った最後の楽曲はもちろん“Dragon Night”! Fukaseの「歌おう!」のコールに応えるように、オーディエンスの感激と大合唱がたまアリを熱く埋め尽くしていった。
アンコールでは“RPG”を調子っ外れに歌い放ったグリモンの「この森で二番目のミュージシャンに代わってもらうとしようか!」というコールとともに4人が再登場、“RPG”でさらなるシンガロングを巻き起こしたところで、「今日、あんまりNakajinを見てない」(Fukase)、「すごい久しぶりって感じ(笑)」(DJ LOVE)と4人がようやく言葉を交わし、会場にリラックスした空気が広がる。
「『タルカス』は、もともと俺が絵本を描こうと思ってて作った話なんだけど。絵本がね、全然間に合わなくて」と今回のツアーの「起源」を解説するFukase。
「アメリカでレコーディングしたりライブしたりしてる時、メンバーで一緒に滞在してる家があるんだけど。スタッフが200本くらいクレヨンを机に置いとくわけですよ。『描け!』って」(Fukase)
「アメリカだけじゃないよね。Saoriちゃんのピアノの上に置いてあるの、画用紙が(笑)」(Nakajin)
「ピアノの上でずっと何か描いてるんだよね、私が弾いてるんだけど。自分の歌がない時はずっと描いてた(笑)」(Saori)
「ちゃんと絵本にしますんで!」というFukaseの宣言に続けて突入した“インスタントラジオ”で圧巻のフィナーレ! すべての演奏を終え、音楽隊のアンサンブルを浴びながらステージカーで広いアリーナを移動し、満場の観客に手を振り続ける4人に、惜しみない拍手喝采がいつまでも降り注いでいた。(高橋智樹)