KEYTALK×オーラル、地上波で白熱の対バン!『Mステ』内企画「VS LIVE」を観た

今月9日に放送された『ミュージックステーション』では、全7組の出演アーティストのパフォーマンスの最後に、いずれも番組初出演となるKEYTALKTHE ORAL CIGARETTESの「VS LIVE」が繰り広げられた。Mステの「VS LIVE」は、過去2014年11月にゲスの極み乙女。×KANA-BOON、2015年5月に藍井エイル×LiSAという顔ぶれがそれぞれ対面式のセットでスタジオライブを行ってきた番組内企画。今回のKEYTALKとオーラルも、まさにバチバチの対バンとなった。

両者の公式ツイッターのフォロワー数や、オリコンアルバムチャートの最高位(KEYTALK『PARADISE』が2位、THE ORAL CIGARETTES『UNOFFICIAL』が3位)、今後の予定も含めてライブ会場の最大キャパなどを比較し、「若者の間で絶大な人気を誇っている」両バンドのうち「今年頭ひとつ抜け出すのはどっちだ?」と対決の構図がきっちり煽られ、KEYTALKの巨匠こと寺中友将(Vo・G)とオーラル山中拓也(Vo・G)が歓声の中で握手を交わす。

先攻はKEYTALKで、今月7日にリリースされた最新シングル曲“黄昏シンフォニー”を披露。このところ、王道感抜群の名曲を連発している巨匠作のナンバーだが、首藤義勝(Vo・B)も巨匠に負けず劣らずの男気溢れる歌声でボーカルをスイッチしてみせる。小野武正(G・MC・Cho)のクリアで鮮烈なギターソロが地上波に乗るさまはやはり痛快だったし、フィニッシュで八木優樹(Dr・Cho)のナイスな笑顔を抜いてくれるカメラも最高だ。

続いてTHE ORAL CIGARETTESが、今月14日リリースのシングル『トナリアウ/ONE’S AGAIN』から“トナリアウ”を放つ。山中、あきらかにあきら(B・Cho)、鈴木重伸(G)、中西雅哉(Dr)の4人の音がギュッと一丸になって強烈にグルーヴしてゆくオーラルの姿を、アクティブなカメラワークが追うのだが、歌い出しから山中の狂おしいまでの男の色気を最大限に発揮してみせる曲調が素晴らしい。ボーカル専任の楽曲ということもあり、艶かしく身振りを交えて歌う姿のテレビ映えがまた見事だった。

で、最後には向き合った2バンドが満足げな表情を見せて、今回の「VS LIVE」企画は幕を閉じる。極めてライブハウス的なムードでありながら、両バンドの音楽性を含めた特徴をテレビ的に抽出してみせるという、秀逸な構成であった。叩き上げのライブバンドである両バンドにとっても、まさに水を得た魚というシチュエーションだったのではないだろうか。

この企画がもたらしてくれるものは大きい。ライブハウスにおける対バンのスリリングな競争をビビッドに伝えながら(バンドマンは本来、捻じ曲がった敵対心ではなく、健全な競争心の中で切磋琢磨するものだ)、お茶の間レベルで視聴者ひとりひとりに「好きなアーティストを自分で見つける」という能動的なジャッジを促してくれるからだ。

音楽の対バンは真剣勝負でありながら、しかし目に見えるスコアで優劣を決定するスポーツではない(ヒップホップのMCバトルのような独自のカルチャーも、原則的には同じだ)。音楽に触れたひとりひとりが、自分の感性だけを頼りに、責任をもって「好き」をジャッジしなければならないのである。どんなに地位や名声がある人も、どんなに大きなメディアも、そのジャッジに口を挟むことはできない。

あなたの「好き」はあなただけのものであり、ひとりひとりの責任ある「好き」がライブバンドを支えるのである。そんな生々しいエネルギーが注ぎ込まれることで、音楽シーンはこれからも力強く躍動してゆくだろう。白熱の「VS LIVE」が、今後も定期的に繰り広げられることを切に願う。(小池宏和)
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