皮肉に溢れたアート作品を次々と生み出し続けているバンクシーだが、グラストンベリー・フェスティバルでも度々作品を発表している。
バンクシーとグラストンベリーとの関係は約20年前、1998年から始まっているようだ。
無名時代の1998年のグラフィティから2014年に会場に出現させた最新のインスタレーション「Sirens of the lambs」まで、バンクシーがグラストンベリーに登場させた数々の作品を振り返っていく。
1998年ー15万円のバンが6千万円に
1998年、覆面のグラフィティ・アーティスト、バンクシーとグラストンベリー・フェスティバルの繋がりは、1台のバンから始まった。
当時バンで生活をしていたヒッピーのカップルが、まだ無名だったバンクシー、そして同じくストリート・アーティストのInkieに「バンの片面に絵を描かせてほしい」と声を掛けられ、2枚のグラストンベリーのチケットと引き換えに快諾。
「Silent Majority」と名付けられたこの作品は、近年のバンクシーの作風とは大きく異なる。
ほぼ全てフリーハンドで描かれ、ステンシルは一部にしか使われていない。
http://www.bbc.com/news/uk-england-bristol-32955713
本来違法であるグラフィティを手早く仕上げるため、最近の作品はレタリング以外だとステンシルで仕上げることがほとんどだが、本作に関しては持ち主の了承を経て描くことができたというのも理由のひとつかもしれない。
カップルはこの作品を自分たちのバンに携え、その後何年もそのままの状態で世界中を走り回っていたという。
そして2015年6月、2人の間に4人目の子どもが産まれ、バンでの生活が手狭になったことから「Silent Majority」をパリのオークションに出品。
購入当時1000ポンド(15万円弱)だった1台のバンは17年の時を経て、横幅10メートル以上にも及ぶ「バンクシーの初期の大作」となり、45万ポンド(約6千3百万円)近くの値が付けられた。
16年後、2014年ーぬいぐるみを乗せた謎のトラックが出現
2014年公開の映画『バンクシー・ダズ・ニューヨーク』にも登場していたこのトラックは、グラストンベリー・フェスティバルにて食事時に会場内を走っていたという。
2013年頃からミートパッキング・ディストリクトなどニューヨークの街中を走っていたことでも話題を呼んでいたこのトラックだが、2014年にはグラストンベリーにも現れた。
家畜用のトラックに詰め込まれたぬいぐるみたちが、悲痛とも取れる鳴き声を上げている。
家畜の豚や牛がこのぬいぐるみたちのような風貌だったら、あなたは屠殺に耐えられるのか?と問われているのだろうか。
なお、この作品は『羊たちの沈黙』の原題『Silence of the Lambs』をもじって、「Sirens of the lambs」(羊たちの叫び)と題されている。
2007年ー仮設トイレでストーンヘンジのインスタレーション
仮設トイレを使用しストーンヘンジを模したインスタレーションは2007年に出現。
一般のアカウントによりYouTubeに公開されている映像には、客たちがこのインスタレーションに自由によじ登ったり座り込んだりしている様子が映っている。
https://www.youtube.com/watch?v=zkH1KICHBq0
謎に包まれ神聖なものとして認識されている国家遺産、ストーンヘンジを仮設トイレで、しかもわざとらしい乱雑なレタリングでもって表したこのインスタレーションに、不快な顔をする客も多かったという。
英「ガーディアン」によると、バンクシー自身は「トイレット・ヘンジ」と呼ばれるこの作品について以下のような発言をしている。
「遺跡なんていうものはそもそもゴミみたいなものだ。でもこの作品は実際にゴミなんだよ」
後に、このインスタレーションを小規模にしたものがブリストル・ミュージアムの展示会で発表されたという。
ちなみにグラストンベリーの初期の1978年には、近くで行われていたストーンヘンジ・フリー・フェスティバルから客たちが流れてきたため、即席でグラストンベリーの3回目を開催している。
詳しくはこちらの記事より。
この他にも、「Beyonce's Tour Caravan」と書かれたピンクのバンの形をしたインスタレーションをキャンプエリアに置いてみたり、どこかの壁に「Due To Recession Festival Closes at 5PM Today」(不景気のためフェスは午後5時でおしまいです)と書いてみたり、2000年代前半に柵やフェンスを乗り越えての不法侵入が絶えなかったことを皮肉ってか、「It's a Wall Get Over It」(これは障壁だ。諦めろ)と落書きをしたりと、様々なグラフィティやインスタレーションを予告なしに登場させているようだ。
今年のグラストンベリー・フェスティバルは6月21日から開催となるが、グラストンベリーの会場におけるバンクシーの作品は2014年の「Sirens of the lambs」より発表されていない。
最近の作品では、ブレグジットをテーマにした大型グラフィティがイギリスのドーバーに突如出現したことが記憶に新しいが、グラストンベリーでも3年ぶりに何らかの作品が発表されることを期待したい。
なお、グラストンベリーでのこれらの作品に関してバンクシー本人が何らかの発表をすることはほぼないため、本記事で言及した作品がバンクシーを真似たアーティストによるものである可能性もゼロではないということを断っておく。