「最高」であり続けるフー・ファイターズの歩みの特別さをバンドの始まりからおさらい

「最高」であり続けるフー・ファイターズの歩みの特別さをバンドの始まりからおさらい - Foo Fighters photo by Brantley GutierrezFoo Fighters photo by Brantley Gutierrez

フー・ファイターズが、デイヴ・グロールひとりきりでスタートさせたバンドだという話はよく知られている。カート・コバーンの死によってニルヴァーナが解散し、茫然自失の状態から音楽にすがるかのように、ドラムもベースもギターもボーカルも自らこなして完成させた音源が、そのままファースト・アルバムになったのだ。


だから、メンバーが固まってからデビューにこぎつける一般的な例と違い、彼らは「完全にバンドになる」前に走り出してしまったようなところがある。“Everlong”をはじめ名曲を数多く収録した傑作2nd『ザ・カラー・アンド・ザ・シェイプ』をものにしたあと、3rd『ゼア・イズ・ナッシング・レフト・トゥ・ルーズ』と4th『ワン・バイ・ワン』ではグラミー賞を連続で受賞するなど、華々しいキャリアを築いてきたように見える反面、当時はまだまだ背景に不安定な様子もうかがえた。



そんな中、初代ドラマーのウィリアム・ゴールドスミスや、2代目ギタリストのフランツ・ストールは、かなり無慈悲な形でバンドを去っており、それらの事例は、とにかく「いいひと」として知られるデイヴ・グロールが、バンド運営に関しては冷徹な判断も下してきたことを示している。

一方で、2代目ドラマーのテイラー・ホーキンスはオーバードーズ事件まで起こしたのに解雇されたりせず、いったん脱退したパット・スメアも後年どさくさに紛れた感じで復帰させていたりする。こうした不条理に思える人事も、おそらくデイヴの中では「理想のバンドを作り上げる」という一貫した信念に基づいたものなのだと思う。彼は、フー・ファイターズをスタートさせてからしばらくして、「今度のバンドは何がなんでも最高のものにしよう/しなければならない」と意識的にも無意識的にも決心したのに違いない。そう考えれば、完成したアルバムを破棄して初めから作り直してしまったことや、脚を骨折しているのに電動式台座を作ってツアーを敢行したことなど、山ほどある大胆な行動にも説明がつく。

バンドの状態が安定してきた近年では、自宅の地下室にアナログ機材を運び込んだり、全米8つの都市を巡って1曲ずつ録音したり、ドキュメンタリー映画の製作と並行させてアルバムをレコーディングしたりと、ますます様々な試みを実践している。これもまた、フー・ファイターズというバンドを前進させるために何をしたらいいかを、常にデイヴが模索していることの表れだ。



9月15日に発売予定の最新アルバム『コンクリート・アンド・ゴールド』では、アデルリリー・アレンなどを手掛けたポップ畑のプロデューサーであるグレッグ・カ―スティンを起用したという以外、現時点で詳細は不明だが、きっと今回もアッと驚くような挑戦が行なわれ、その結果はリスナーを途轍もなく興奮させてくれるはずだ。(鈴木喜之)
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