【フジロック総復習レポ・2日目】エイフェックス、LCD、小沢健二、コーネリアスなど


2017年7月28日(金)~7月30日(日)に新潟県湯沢町苗場スキー場にて開催された「FUJI ROCK FESTIVAL '17」。本日もrockinon.com編集部スタッフが実際に現場で目撃した内容をもとに、それぞれの日の主要なアクトをレポートしていく。

本日お届けするのは、3日間の中で最も不安定な天候の中行われた2日目の模様。1日目から続く雨の影響で足元が悪く、レインブーツを泥だらけにしながらお目当てのステージへと進む。しかしそんな環境も気にならないほどパワフルなアクト続きだった2日目のレポ、まずはフジロック初登場、6月にデビュー・アルバムをリリースしたばかりの新人ジ・アマゾンズから。

期待通りのロック・ミュージックを鳴り響かせたジ・アマゾンズは、初登場に臆することなく圧のあるギター・ロックをもって満杯のレッドマーキーを揺らした。王道ロックに安心感を抱きつつ、ほとばしる才能には随所で圧倒される。テントの外では雨が激しく打ちつけていることを忘れてしまう小一時間の間、率直であるということが持つ強さを思い知らされた。


そして、10-FEETがホワイト・ステージに登場。開演後すぐに、ステージ前を埋め尽くした観客たちによるモッシュが始まっていた。定番の“RIVER”などを交えつつアゲにアゲるセットリストで、会場のボルテージはうなぎ登りに上がっていく。終盤、“アンテナラスト”や“ヒトリセカイ”でTAKUMA特有のシャウトを交えたボーカルをしんみりと聴かせつつ、ラストは“goes on”。またもや観客を興奮の渦に巻き込み、パワフルな空気の中アクトを終えた10-FEETだった。

続いてはデビュー20周年を迎えたCoccoのグリーン・ステージ。白いドレスを身にまとい、裸足で現れたCoccoには雨がよく似合う。“けもの道”からスタートし、“有終の美”がラストを飾ったファン歓喜のセットリストに対し、随所で周りから感嘆のため息が漏れ出るのが聞こえる。細かい雨が降り注ぐ苗場には、“Raining”があまりにも相応しすぎた。妖しくも圧倒的な存在感を背負ったあの細い身体には、メインステージでさえ不思議と小さく見えたのは気のせいだろうか。奇を衒った演出や衣装は用いず身体ひとつで当たってくる彼女は瞬きの瞬間すら惜しいほどの魅力に溢れ、あの大きなグリーン・ステージを彼女色に染め上げてしまったのだった。

開始前のホワイト・ステージで雨に打たれながら、「晴天の下で聴きたかった!」と心の中で叫んでしまっていたChronixxのアクト。ほとんどの曲の間目を閉じて歌っていたように見えたChronixxの頭の中には、快晴の苗場の画が浮かんでいたのだろうか。ヒット曲を連発し、翌日30日のヘッドライナーとして登場したメジャー・レイザーとのコラボ曲“Blaze Up The Fire”まで聴かせてくれたセットリストは終始、会場の端々まで届くチアフルでピースフルな雰囲気の中幕を閉じた。

そして再びグリーン・ステージへ。昨年レッドマーキーに出演予定だったものの、急遽キャンセルとなってしまったアヴァランチーズの待望のフジロック出演だ。初っ端から最新アルバム『ワイルドフラワー』の収録曲“Because I’m Me”と“Frankie Sinatra”というハッピーなトラックを立て続けに投入。頻繁に観客側にマイクを向けつつ、アヴァランチーズらしいコラージュの溢れ返る奇妙なVJと共にこちら側を巻き込んでいく。引用、そして継ぎ接ぎだらけのコラージュ祭りに脳が喜んだ1時間だった。

50k people dancing in the rain @fujirock_jp we will never forget you! Thank you!

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遅ればせながら初見となったザ・レモン・ツイッグスはレッドマーキーに出演。こんなに聴かせる2人だとは意表を突かれた。60年代、70年代のロック・スターの格好をしたポップ・ミュージシャンだと思っていたら、2人はそのスタイルをすでに独自のものとして自らに落とし込んでいた。静のマイケルと動のブライアンでバランスの取れたダダリオ兄弟が鳴らすロック・ミュージックには、作りものでないクラシカルを感じる。『ドゥ・ハリウッド』収録の“I Wanna Prove To You”からラストの“Queen of My School”まで、ザ・レモン・ツイッグスの2人はその疑いようのない才能を切れ間なく炸裂させていた。

ここでグリーン・ステージにコーネリアスが登場。小山田圭吾他、メンバー3人が揃って白のシャツに黒のパンツという出で立ちで現れた瞬間、肌寒くなってきたグリーン・ステージに少しの緊張が走った。全14曲の演奏の間、ほとんどすべての音色が彼らの手によってその場で紡ぎ出されていく。その演奏の技術に驚かされつつ、ジオメトリックなVJも手伝ってか時折幻想の中にいるような気持ちを抱いてしまう。“あなたがいるなら”で終演を迎えたコーネリアスのグリーン・ステージは、横1列に清々しく整列した4人の健やかな笑顔と共に幕を閉じた。




御年74歳のエルヴィン・ビショップは、一日中雨に打たれ続けた私たちをユーモアと暖かさで包み込んでくれた。日が落ちたフィールド・オブ・ヘブンに響き渡る、陽気でありつつも憂いに満ちたサウンドが心地よい。得意の日本語での挨拶も披露してくれ、所々で優しい笑顔を見せるエルヴィン・ビショップだが、時折ギターの手元を見つめる眼は確かに闘争の色を宿していた。ブルース界のレジェンドである彼の音楽は、その人となりが滲み出た寛大さとブルースへの愛ゆえの厳しさと、その両方を持ち合わせていることを知った。終盤に差し掛かる頃には、昨日から溜まっていた疲労感がいつの間にか洗い流されていた。

ジ・アマゾンズ、ザ・レモン・ツイッグスと、この日メインステージに勝るとも劣らないすばらしいアクト続きだったレッドーマーキーのトリを飾ったのはテンプルズだ。ジ・アマゾンズの率直さとも、天才肌のツイッグスとも違う魅力でテントを包み込んだテンプルズには、興奮がなかった。それは決して悪いことではなくて、若いながらもこれまでの来日で積み重ねてきた経験から来る落ち着きと、生半可ではない音楽オタクとして、まずは自分たちがちゃんと音を楽しんでいるのだという気概があるからだろう。蜃気楼のようなサウンドに弄ばれながら、終盤の“A Question Isn’t Answered”などでは巧みな重低音の扱い方にハッと関心させられてしまう。湿ったレッドマーキーも似合っていたけれど、幾重にもレイヤーの重なった摩訶不思議なサイケ・サウンド、もっと大きなステージで、快晴の下で浴びてみたいものだ。

JAPAN • we have arrived at @fujirock_jp come and see us play tonight @ 8PM in the RED marquee • ALL JOIN IN •

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続いては、スチャダラパーも登場しての“今夜はブギー・バック”からスタートした小沢健二のアクト。とにかく観客の密集度が凄まじい。そして、盛り上がりも半端ではない。ホワイト・ステージを埋め尽くしたファンたちのシンガロングがあまりにも完璧すぎて驚いてしまう。“ラブリー”や“さよならなんて云えないよ”など、活動再開後初めてと言って良いほどにヒット曲を次々と繰り出したセットリストに加え、実に19年ぶりのシングル・リリースとなった“流動体について”ももちろん演奏され、「オザケン」へのウェルカムモードは最高潮に。小沢健二の第2章がすでにスタートしていることをひしひしと感じたホワイト・ステージだった。


この日グリーン・ステージのトリを飾ったエイフェックス・ツインは、その圧倒的な実力を持ってして、寸分の狂いもなく私たちをトランスの渦に引き込んでいった。幾重にも重なり合った繊細な音のおかげで、苗場の山を揺らすほどの轟音にはまったく尖りがない。いつリサーチしたのだろうか、『Syro』でお馴染みの顔面を折り返したビジュアルに、松居一代をはじめ、まさに日本の今を行く時の人が当てはめられていくVJには観客一同唖然とさせられるも、思わず笑いが込み上げる。オープニングからエンディングまで、背筋には常にゾクゾクとした何かを抱えつつも、エイフェックスは待ってはくれない。何故か溢れ出てくる不安感と脳天を直撃する快感が頂点に達した時、地響きのような重低音が鳴り響き、一瞬間の内に私たちを現実に引き戻してくれたのだった。

2011年の活動休止後、6年ぶりの再結成を果たしたLCDサウンドシステムがホワイト・ステージに登場。開始前からざわざわとした期待感が満ちていた会場では、初っ端の“Us V Them”のイントロが流れるや否や、彼らの帰還を心待ちにしていたファンたちが身体を揺らす。本降りになってきた雨にも関わらず、あのダンス・ビートにはどうしても抗えないのだ。9月にリリースされる再始動後初のアルバム『アメリカン・ドリーム』からも数曲を演奏。言うまでもなく、ジェームス・マーフィーという類まれなるトラック・メイカーのパワーはまったく衰えていない。この6年の間に彼が遂げた進化の有り様をまざまざと見せつけられ、早く新作が聴きたい、それ一点しか考えられなくなってしまっていた。とにかく9月のリリースが楽しみだ。


(滑石蒼)


ゴリラズ、クイーンズ・オブ・ザ・ストーン・エイジ、ザ・エックス・エックス等が出演したフジロック1日目の様子はこちらから。

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