ユニゾンが改めてロックバンドとして真正面から『血界戦線』に向き合った曲“fake town baby”について

ユニゾンが改めてロックバンドとして真正面から『血界戦線』に向き合った曲“fake town baby”について
先日から放送が始まったアニメ『血界戦線 & BEYOND』。オープニングテーマはUNISON SQUARE GARDENの新曲“fake town baby”である。
『血界戦線』とは内藤泰弘による漫画で、『血界戦線 Back 2 Back』として現在も連載されている。
アニメ第1期『血界戦線』は2015年4月から10月にわたり放送され、そのエンディングテーマをユニゾンが務め、曲は“シュガーソングとビターステップ”であったことは知る人も多いだろう。この曲は軽快でポップなリズムで今にもステップを踏み出したくなるような、というかアニメのED映像でのキャラクターたちのダンスも話題になっていたが、そんな楽しい音楽で、第1期で描かれた少し悲しいストーリーと、作品の背景が持つごった煮感というか、アメリカンな思想感というか(作品の舞台は元ニューヨーク)、「悲しいことがあってもとりあえず笑って楽しもうぜ」感が、とても合っていたと思う。


しかし、今回の第2期OP曲“fake town baby”は、作詞作曲を担当した田淵智也(B)が「前回はEDでしたので担う役割が違うなと思い、改めてこの作品をイメージし直しました。前シリーズ最終回に流れていたあの街の空気を汲んで、あの街で鳴っていて欲しい音楽を作ったつもりです」とコメントしているとおり、「楽しく終わればそれでよし」だけではなく、これからこの「どうしようもない街(=ヘルサレムズ・ロット)」から、「手始めに世界を救う」ためにクラウスやレオナルドをはじめ秘密結社・ライブラのメンバーが奔走していく、ヒーローストーリーへと変換されていくような感じがした。

曲は、疾走感のあるシリアスロックなAメロから、跳ねるようなベースのBメロ、“BUSTER DICE MISERY”でもあったがトーンを下げて意味を持たせるようなフレーズのCメロ、そこから一転して明るく爽快なサビへ貫く、という田淵のソングライティングと斎藤宏介(Vo・G)の芯のあるボーカル、変則的なリズムも流れるように刻む鈴木貴雄(Dr)のドラムが、今回もユニゾンの世界観を創り出している。

同アニメに書き下ろされたということもあり、今回はオープニングテーマとして、『血界戦線』の世界で活躍するキャラクターの「ヒーロー性」を表現し、かつ前向きに「かっこいい」と思える曲という印象を受ける。「前シリーズ最終回に流れていたあの街の空気を汲んで」という田淵のコメントだが、その話を観ている私としても、確かに日頃のふざけた雰囲気を忘れて真剣に世界を救っていたライブラのメンバーの奮闘する姿に、この曲はとても合っているように思った。

この“fake town baby”は、ユニゾンが「ロックバンド」として真正面に『血界戦線』と向き合った楽曲だと思う。
先述したとおり、この曲の率直な感想は「かっこいい」のだ。いつものユニゾンが持つポップ性ではなく、ロックバンドとしての性格を存分に発揮し、世界を救うヒーローの日常と奮闘を描いたこの『血界戦線』という作品と真っ向から対峙して、前EDで表現された「楽しく終わる」ためにヒーローたちは戦っているのだ、ということが表現されている曲なのである。
「fake town」=「偽物の街」という意味は、明るい日常は裏で奮闘している人たちがいるから作られているものである、そういう意味での「fake」と、『血界戦線』におけるヘルサレムズ・ロット(元ニューヨーク)が「異常な日常を受け入れた街」という意味も持っていると思う。その異常を日常と受け入れ生活する人々の今の「日常」をこれ以上壊さないために暗躍するのが、ライブラなのである。
つまり、“fake town baby”は、ユニゾンがこれまで以上に作品の真意に寄り添った楽曲と言え、暗躍する彼らにスポットライトを当て続ける楽曲なのである。(中川志織)
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