【ホラーだより】90年版と比較! 『IT/イット “それ”が見えたら、終わり。』をポイント別にガイド

【ホラーだより】90年版と比較! 『IT/イット “それ”が見えたら、終わり。』をポイント別にガイド

スティーヴン・キング原作のテレビ映画『IT』(1990)のリブート版、『IT/イット “それ”が見えたら、終わり。』がホラー映画史上における歴史的なヒットを記録している。

マニアックなファンが多い『IT』の劇場版ということで公開前から注目が集まっていた本作だが、アメリカでは9月の公開後順調に興行収入を伸ばし、R指定ホラー映画ランキング R指定なしのホラー映画ランキング共に歴代首位を獲得した。R指定の首位を飾っていたのが1973年の『エクソシスト』、そしてR指定なしのランキングの首位が1999年の『シックス・センス』だったことを考えると、『IT/イット “それ”が見えたら、終わり。』の1位奪還は歴史的な快挙と言える。

一方、日本では11月3日の公開後にじわじわと興収を上げていき、公開3週目にして全国ランキング1位を獲得。公開から1ヶ月以上が経った現在でも、映画館の客入りは順調だ。

「27年」ぶりに帰ってきた『IT/イット “それ”が見えたら、終わり。』だが、映画館に足を運んだ人の中には1990年版をまだ観ていないという人も多いかもしれない。初見の人にとっても楽しめる内容ではあるものの、やはりせっかくのリブート版だ。

本記事では『IT/イット “それ”が見えたら、終わり。』の面白さをちょっぴりマニアックに堪能していただくため、「90年版とのシーン比較」を5項目にわたって紹介していく。

【ホラーだより】90年版と比較! 『IT/イット “それ”が見えたら、終わり。』をポイント別にガイド

まずは一旦、本作のあらすじを確認しておこう。

《あらすじ》
舞台は80年代。とある田舎町、デリーで子どもたちが失踪する事件が立て続けに発生する。そして主人公ビルの弟ジョージーも、ビルと遊んでいる最中に突如として行方不明になってしまう。自責の念に駆られるビルだったが、時は無情に過ぎていき8ヶ月後ーー。 子どもたちのトラウマを利用して襲い掛かってくる恐ろしいピエロ、ペニーワイズがビルの前に現れたことをきっかけに、友だちと共に結成したいじめられっ子のグループ、ルーザーズ・クラブ(負け犬クラブ)のメンバー6人も次々にペニーワイズに襲われていく。

メンバーたちは間一髪で危機を免れるものの、転校生ベンが「27年ごとに子どもたちが大量に失踪する」というデリーの都市伝説を発見する。子どもにしか見えないペニーワイズは果たして幻想なのか、それとも現実なのか。

学校では負け犬としていじめに遭うルーザーズ・クラブの面々は、ビルの弟を探すため、そして27年後の子どもたちを守るため、意を決してペニーワイズに立ち向かうことを決心するが……


※以下、ネタバレが含まれます。『IT/イット “それ”が見えたら、終わり。』と90年版『IT』をまだご覧になっていない方はご注意ください。







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比較ポイント1ーペニーワイズのイメージが一新

90年版では当時34歳だったティム・カリーが演じたペニーワイズ。原作よりも深くピエロ像にフィーチャーした90年版のペニーワイズは、淀んだ眼と空虚な笑顔に加え、ピエロらしいカラフルな衣装が印象的だった。しかし17年版でペニーワイズを演じるのは現在27歳の若手俳優、ビル・スカルスガルドだ。「いかにも」なピエロの姿を表現していたと言えるティム・カリーに比べ、ビル・スカルスガルドのペニーワイズはより洗練された見た目と中世ヨーロッパの貴族風の衣装が特徴的だ。

90年版との違いとして一番に挙げるべきは、やはりこのペニーワイズ像の描き方の違いだろう。現実的な怖さがあった90年版に対して、17年版のペニーワイズには幻想的な恐ろしさがある。27年前に比べて特殊効果の技術が向上したことも一役買っていることは言わずもがなだが、ティム・カリーとビル・スカルスガルドというタイプの異なる俳優が配されていることが大きな要因だろう。どちらのペニーワイズがより怖いと感じるかは、あなた次第だ。

ちなみにペニーワイズの原案になったのは、猟奇殺人事件の歴史に興味のある人にとってはお馴染みの人物、ジョン・ウェイン・ゲイシーだと言われている。自ら「ポゴ」というピエロに扮してイベントに参加することのあったゲイシーは生前、自身を投影したピエロの絵を多数残している。



比較ポイント2ー「井戸小屋」の描写が詳細に

ペニーワイズの棲家であり、失踪した子どもたちが「浮かべ」られている地下へと繋がる井戸がある廃墟、通称「井戸小屋(Wellhouse)」は、17年版においてはメインの舞台として登場する。“なんとなく嫌な感じがする場所”としてデリーの心霊スポット的な位置づけとなっているこの井戸小屋が、今回初めて詳細に描かれているのだ。

17年版では、ルーザーズ・クラブのメンバーが意を決して突入し、ペニーワイズとの対決を繰り広げるシーンにおいて内部の構造まで細かく観察することができる。本作を通して見ても、コメディ要素とホラー要素のコンビネーションが最も秀逸だと言えるこのシーン。鑑賞の際には、その内装に注目してみるのも面白いかもしれない。


比較ポイント3ーフォト・アルバムがスライド映写機に

90年代版の舞台である50年代から27年後が舞台なだけあって、テクノロジーもそれなりに進化。フォト・アルバムが勝手にパラパラめくれ始めて仲間たち全員絶句……! のシーンは、17年版ではスライド映写機が勝手に進んでいく……! というシーンになっている。

ちなみにこのシーンに関しては、勝手に動き出す映写機よりも子どもたちの怖がりっぷりの方が怖い。


比較ポイント4ー本作いち(?)グロい洗面台シーンがよりグロく

90年版でも名シーンのひとつである洗面台✕血液のシーン。中盤からルーザーズ・クラブの紅一点メンバーとなるベバリーの「恐怖」に焦点を当てたこの場面だが、17年版ではよりグロく進化している。

劇中で最もグロいとも言えるこのシーン。しかしこの場面のあと、血で染まったバスルームをルーザーズ・クラブのメンバーが集まって黙々と掃除するのだ。その様子に、「本当の仲間」になったベバリーと男の子たちの関係性が投影されている、という重要なシーンでもある。

また前提として、ベバリーが父親から受ける虐待の類が90年版の単なる「暴力」から陰湿な「性的虐待」へと変化しているという特徴がある。17年版では思春期特有の悩みがより明らかに描かれていることも考えると、この洗面台のシーンがより激しい描写になっていることが必然であることが分かるだろう。


比較ポイント5ー「大人たちの無関心」が強調

17年版では、デリーの住民たちの「家族関係の希薄さ」、そして「大人たちの無関心」が非常にストレートに描写されている。劇中に登場する子どもたち全員が家族との間にそれぞれの問題を抱えていて、両親からのまっすぐな愛情を受けている子どもは1人もいないのだ。90年版もそうした設定ではあったものの、17年版ではそれがよりシビアに、そしてより悲しく表現されており、作品全体に暗い影を落としている。

この理由は一体なんなのだろうかーー。ペニーワイズは終始、「大人たちの無関心」を存分に利用して子どもに危害を加え続ける。ペニーワイズが子どもたちに見せるトラウマの数々よりも、この「無関心」の描写の方が怖いくらいだ。しかし、「無関心」を最も恐れているのは誰なのだろうか? それは、“他人を楽しませるための存在”として生まれたピエロ、つまり、ペニーワイズ自身に他ならないのだ。

この事実はクライマックス、下水道でルーザーズ・クラブとペニーワイズが対決する場面で表現されている。子どもたちは、ペニーワイズに恐れを感じている間は決して勝つことはできない。しかし最終的に恐怖を乗り越え、ペニーワイズの方に「無関心」を味わわせることができたからこそ、ペニーワイズ自身を「恐怖」の底に陥れることに成功したのだ。




11月3日に日本公開を迎えた『IT/イット “それ”が見えたら、終わり。』は、公開から1ヶ月あまりが経った現在でも大ヒット上映中だ。映画館に足を運んでから90年版をゆっくり観てみるもよし、すでに両方楽しんだという方は超・長編の原作に手を出してみるもよし。

27年後を舞台に、大人になったルーザーズ・クラブを描いた続編は、2019年9月の公開を予定していることもすでに発表されている。ジェシカ・チャステインやジョゼフ・ゴードン=レヴィット、クリス・プラットら豪華キャストの出演が噂されている続編を待つ間、原作、90年版、そして17年版のそれぞれをじっくり比較してみるのもまた一興だ。 (滑石蒼)

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