ドラマチックかつ深淵なインスト“The Anthem”に始まり、ストリングスの狂おしい響きとシリアスな熱量が同居、まさに光と闇が混ざり合うような“終焉レクイエム”、バカでかいグルーヴのうねりと体も心も踊らせる軽快さを兼ね備え、地球をひっくり返すような攻撃性に満ちた16ビートのミクスチャー“MONSTER”、TVドラマ『御茶ノ水ロック』の主題歌であり、アコースティックのあたたかさ、シンプルなバンドサウンドによるわくわく感、パワーボーカルで押し切るのではなくファルセットも使いながらスッと心の隙間に入り込むメロディ、大合唱できるコーラスパートが渾然一体となった“君のいない夜を越えて”、ウィズ・カリファのカバーにして至極のピアノバラード“See you again”、シーケンスと爆音の心地好い融合、咆哮で圧倒し狂騒を掻き立てる英語詞とひとりひとりの聴き手を壮大なスケールで包み込む日本語詞のバランスが絶妙な大曲“Love Affair”。全6曲、非の打ち所がない。
MY FIRST STORYが、MY FIRST STORYとして、MY FIRST STORYから逃げることなく真っ向から闘う本当の覚悟を露わにした。それが『ANTITHESE』というアルバムであり、日本武道館公演だった。もちろん結成から5年間の集大成ではあったけれども、真のストーリーにおける序章でもあったのだ。そこから永遠の誓いを目指し走り出した先に『ALL LEAD TRACKS』があり、2マンツアーがあり、幕張メッセがあり、『ALL SECRET TRACKS』がある。そんなMY FIRST STORYは今、何を歌うべきなのか? それはやっぱり愛なのだ。なぜならMY FIRST STORYにしか紡げない愛の形があり、それを贈るべき、幕張を埋めるほどのオーディエンスが目の前にいるからである。
愛と言ったって薄っぺらい言葉にしか聴こえないのだけれど、そこに特別な感情を乗せられるのが現在のMY FIRST STORYなんだと思う。その意味において今作は、特に“Love Affair”という楽曲は、表現者としての新たな景色を切り開いた記念碑でもあるのだ。(秋摩竜太郎)