2016年8月、16歳でリリースした初のミニアルバム『MANUAL』がApple Musicの「今週のNEW ARTIST」としてプッシュされ、2017年2月にはシングル曲の“Cave”(ゲストボーカルはシンガー/声優の宮原永海)を発表してきたTakaryu。このエレクトロニックミュージックの若き俊英が、新作MV“Resource ft. Annabel”を公開した。Takaryuの公式Soundcloudページでは時折トラックが発表されてきたものの、“Resource ft. Annabel”は明らかにTakaryuの新局面を感じさせるナンバーである。
ゲストボーカル・Annabelのソウルフルなウィスパリングボーカルが伝う、ステッパーズ系ガラージチューン。サウンドは刻一刻と有機的に表情を変え、ドキリとさせられるようなコードチェンジも仕掛けられている。心地好くキャッチーな楽曲でありながら実は驚異的な作り込みを行っているTakaryuのスタイルが、さらに突き詰められた印象だ。洗練された曲調の中にファンキーなグルーヴを備えている点も、相変わらず素晴らしい。
ビデオの内容はというと、人工的な光に埋め尽くされた夜の都市を舞台に、街を彷徨う物憂げな表情の女性が、いつしかひとりの少年と導き合うように出会う。この少年がTakaryu本人である。ビデオの途中に映し出された道路の案内標識(青看板)には何も記されておらず、照明付きのアドボードは空っぽだ。何でもあるはずなのに何もない、どこにも行けそうでどこにも行けない、そんな空虚な現代の都市生活の心境を、或いは溢れ返った情報を拒絶する気持ちを潜り抜けて、ふたりは巡り会う。
ビデオの監督には、これまでにも数多くのMVを手掛けてきたフカツマサカズと荒明俊昭が共同クレジットされているが、特筆すべきはやはり、監督たちにもこれほど大人びた心象と映像イメージを喚起させて止まなかったTakaryuの楽曲の力だろう。MJコールやディスクロージャーといったトップクラスのUKガラージのダンスマナーを踏襲しつつ、都会的なアダルトコンテンポラリーが内包するソウル/ジャズの感情表現の奥ゆかしさまで伝えてしまっている。来春には新たなアルバムが届けられることもアナウンスされており、音楽プロデューサーとしてこれからどんなキャリアを築いてゆくのか、一層期待が膨らむ。
Takaryuは、アーティストオーディションのRO69 JACK(現・RO JACK)の2015年冬にグランプリを獲得したアーティストであり、COUNTDOWN JAPAN 15/16に出演した。僕はそのときのライブの衝撃を、『MANUAL』リリース時に綴っている。今回発表された“Resource ft. Annabel”に触れて、Takaryuの創造性に対する信頼はさらに揺るぎないものになった。この12月30日、彼はCOUNTDOWN JAPAN 17/18にDJ出演する予定だ。シーンの未来を担う、斬新かつクリエイティブなパフォーマンスに、ぜひ注目してほしい。(小池宏和)
今聴かなければいけない18歳のトラックメイカー・Takaryuの新曲を聴いた
2017.12.23 14:00