『君の名は。』の空前の大ヒットの前から、新海誠監督の作品の中で特に『秒速5センチメートル』をトラウマレベルで愛しているという人は多い。
僕もそうだ。
そして『君の名は。』以降に新海監督の作品をレンタルしまくる中で、この作品に出会い、ある意味『君の名は。』とは正反対の角度から、しかも予想外の深さで心を抉られてしまった人も多いはず。
とにかく、ここで描かれる「何もできなかったこと」の永遠は、多くの人が普遍的に抱えていているもので、それをあまりに美しすぎるがゆえに抗えない力で引きづり出してしまう映画なのである。
1月3日にいよいよ『君の名は。』が地上波初放送ということで、同じテレビ朝日で今日、明日の深夜に『秒速5センチメートル』『星を追う子ども』『言の葉の庭』『雲のむこう、約束の場所』の4作品が放送されるわけだが、『君の名は。』で初めて新海監督の映画を観た人に、二本目として最もおすすめしたい一本はやはりこのあと0時20分から放送される『秒速5センチメートル』である。
(※ここから多少ネタバレなのでご注意)
『秒速5センチメートル』は、「桜花抄」「コスモナウト」「秒速5センチメートル」の三部構成。
三章とも主人公は貴樹という男性だが、描かれる時期が違う。
しかし、彼の心の中にいるのが明里という女性であるのは同じ。
そして貴樹のそこまでの人生で大切なことは、第一章のキスシーンと、第三章の山崎まさよし“One more time, One more chance”が流れる場面に集約される。
絶対に守りたいと思ったもの、でも指の間からすり抜けていったもの、その記憶をそっと抱えながら生きていく切なさをあまりにも美しく残酷に描ききった傑作をこの機会に是非、多くの人に観てほしい。(古河晋)
新海誠監督作『秒速5センチメートル』のテレビ放送ももうすぐ
2018.01.01 22:30