いま聴くならこの6組! 2018年活躍が期待されるガールズ・ロックのニューカマーたち

WHENYOUNG


ウルフ・アリスのエリー・ロウゼルは「ロンドンの音楽シーンは今すごくいい感じで、お互いにライブを観に行ったり一緒に遊んだりしている」と言っていたが、前述のバンドたちも互いにリスペクトし合っている仲。そんなロンドンのバンド・シーンに夢を賭けてダブリンからやってきた3ピースがWhenyoungで、彼女たちはドリーム・ワイフがレコメンするニューカマーでもある。

スーパーフードとツアーを回っていたという経歴からも伺えるけれど、このバンドのサウンドはずばりポップ、もっと身も蓋もなく言えばブリットポップ! フロント・ウーマンAoife Powerの甘く舌っ足らずなファニー・ボーカルやリズミカルなギター・リフ、そして掛け合いのコーラスの隅々に至るまでフックの嵐、ギタポ・ラバーの急所を狙い撃ちすること請け合いです。


PALE WAVES


SorryにしろWhenyoungにしろまだまだこれからのバンドだけれど、そんな彼女たちとは対照的に既に大ブレイク中のニューカマーがマンチェスター出身の男女混合バンド、ペール・ウェーヴスだ。フロント・ウーマン、ヘザー・バロン・グレイシーのアイライナーで黒々と縁取られた瞳&真っ黒な唇もインパクト大で、そのいかにも暗黒ニヒリスティックなゴス・ロックをやっていそうな見た目とは裏腹に、彼女たちのサウンドはむしろ風通しがよく超絶キャッチーなニューウェイブ・ポップであるというのがすごい。でもそれも、デビュー・シングル“There's A Honey”のプロデューサーがThe 1975のマシューとジョージだったと聞けば納得だろう。

各種クリティック・ポールで有力新人候補に軒並み名を連ね、デビューEP『オール・ザ・シングス・アイ・ネヴァー・セッド』を2月にリリースしたのみで、サマーソニックへの出演も早くも決定。まさにThe 1975が切り開いた2010年代UKエレポップ・ロックの道をひた走り、成功を掴むことが約束されたバンドなのだ。


SOCCER MOMMY


さて、ここまではUKのガールズ・ロックにフォーカスしてきたが、最後はナッシュビル出身のSoccer Mommyをご紹介。

Soccer Mommyは弱冠20歳のシンガー・ソングライター、Sophie Allisonのソロ・プロジェクトで、これまたここまでバンドに特化して紹介してきた流れとは異質。それでもどうしても彼女をここでプッシュしたいのは、今月頭にリリースされたフル・デビュー・アルバム『Clean』があまりにも素晴らしかったから。ナッシュビルというルーツもあってか、そのサウンドの根底にあるのは飾り気のない素描的インディ・フォークなのだが、彼女の鼻歌レベルで無作為に生みだされた旋律が、次々とクリアなポップ・ソングとしての輪郭を獲得していくミラクル、『Clean』はそのドキュメントとなっている作品だ。このアルバムを聴けば、彼女が自身の二大アイドルとしてテイラー・スウィフトアヴリル・ラヴィーンの名前を挙げているのも(ここら辺がまさに90年代後半生まれのリアル!)納得できてしまう。


しかし、『Clean』は同時にアリエル・ピンクを彷彿させるローファイなドリーム・ポップ作でもあり、一度は獲得したはずのポップ・ソングの輪郭を徐々に歪めながら、淡いサイケの揺らぐベッドルームに引きこもっていくチルウェイヴ作でもあるという、二面性がさらに素晴らしい。そう、カントリー少女だったテイラーが辿ったような劇的メジャー・ポップスへの道も、インディ・ロックの高踏派としての道も、Soccer Mommyの前には等しく開けている、そんな途方も無い可能性を感じさせる20歳なのだ。(粉川しの)
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