7月27日(金)~29日(日)にわたって開催される「FUJI ROCK FESTIVAL '18」にて、5年ぶりの来日を果たすことが決定しているケンドリック・ラマー。
その来日を記念し、黒塗り文書に『ダム』のメッセージを重ねた広告が突如として国会議事堂前駅と霞ヶ関駅に掲出された。この広告には、批判を恐れず現代社会への問題提起をするというケンドリックらしいアチチュードが込められているという。
各駅構内にて撮影された写真は以下。
今回のこの企画を受け、音楽ライター渡辺志保氏と大和田俊之氏は以下のようなコメントを寄せている。
個人の環境やストラグル(葛藤)をラップに乗せて表現してきたアーティスト、ケンドリック・ラマーは、それと同じくらい、現代社会における問題提議や人種問題に基づく思想についても、ビートに乗せ伝えてきた。
今や彼は現代のブラックパワーの象徴であり、世界中の若者を惹きつけ鼓舞するカリスマでもある。ケンドリックが2017年に発表したアルバム『DAMN.』でジャーナリズムにおける最も権威ある賞、ピューリッツァー賞を獲得したということは、社会的にもそのパワーを見過ごせなくなったということであろう。
自分の言葉で、自分の内面を表現すること。社会と個人を切り離さず、より良い環境を作り上げていくには何が必要なのかということ。冷静に現代社会を見つめ、批判を恐れないこと。
今回を機会に、一人のラッパーが紡ぐ思いや主張を感じ取ってもらうとともに、こんなアーティストがいるのだ、ということも知ってもらいたい。(渡辺志保)
ケンドリック・ラマーは、現代アメリカにおけるもっとも重要な<声>である。その畳み掛けるようなフローから繰り出される「ことば」は、奴隷制からハーレム・ルネサンスを経てブラック・ライヴズ・マターにいたるアフリカ系アメリカ人の歴史を体現し、変幻自在にペルソナを変えて語られるポリフォニックな(多声的な)ストーリーにはフィリス・ホイートリーからラルフ・エリスン、トニ・モリスンへと連なる黒人文学のレトリックを聴き取ることができる。
ヒップホップという技芸の可能性を最大限に引き出すケンドリック・ラマーのラップは排外主義が強まる世界において、ますます求められるようになるだろう。
なぜなら、真の詩人が常にそうであるように、そのリリックはアメリカのマイノリティーの言葉を引き継ぐと同時に、未来の世界をふちどる「予言」でもあるからだ。(大和田俊之)
国会議事堂前駅と霞ヶ関駅を通る機会のある方は、ケンドリックらしい痛烈なメッセージが込められたこの広告を探してみてはいかがだろうか。黒塗りの後ろに隠された文書の内容にも注目していただきたい。
なお、本日7月13日(金)より、Twitterで「#ケンドリック来日」とツイートすると、『ダム』に収録されている全15曲の解説が届くキャンペーンも開始となる。
『ダム』の完全解読は以下の記事より。