いきものがかり「集牧宣言」後初の生出演ラジオを聴いた

11月2日に突如「集牧宣言」を発表。19回目の結成記念日でもある翌日3日に「集牧」、つまりグループとしての活動を再開させたいきものがかり。そんな3人が11月2日、J-WAVEの特別番組『AVALON~事件です!いきものがかり集牧宣言~』に登場。生の声を全国へ届けた。突然の発表に驚きつつもすぐさま大喜びした人もたくさんいるだろうし、何を隠そう、私もその1人である。ひとまず「おかえり!」と伝えたい。

オンエアの冒頭に、直前の番組『GOLD RUSH』でアンジャッシュ・渡部建の代打としてナビゲーターを務めていた相方の児嶋一哉がまさかの登場。「大島さん、お疲れさまでした!」と吉岡聖恵(Vo)がお決まりのフリをするところから番組は始まった。弾むような声でお茶目にふざける吉岡、それにツッコミを入れつつリーダーらしくシャキシャキと仕切る水野良樹(G)、「ギターハープ・山下穂尊です」という自己紹介の時点から喋りのテンポが他2人より若干ゆるやかな山下――というオープニングからして3人の飾らない温度感は健在。いきものがかりが本当に帰ってきたんだなあという実感が湧き、ますます嬉しくなる。

番組では、著名人からのメッセージが放送されたほか、彼らがリクエストしたいきものがかりの楽曲が次々とオンエアされた。特に、バカリズムのリクエストによる“LIFE”、松井稼頭央のリクエストによる“月とあたしと冷蔵庫”という抜群の選曲にはSNSも大きく盛り上がる。デビュー前からいきものがかりを見守ってきた亀田誠治ならではのコメントに続いた“風が吹いている”もめちゃくちゃ熱かった。

また、この日は「大発表」というテーマでリスナーからお便りを募集していたのだが、そのうちの1人に電話を繋ぐ際、ラジオネームを聞いた3人が「来た!」と声を揃えた。というのもこのリスナー、いきものがかりが地元・横浜のラジオ局で番組を持っていた当時、ファックスでイラストを送ってきていた小学生リスナーと同一人物だったのだそう。12歳だった彼は現在25歳になり、結婚して家を買ったという。その報告に、驚きつつ大喜びする3人。

今回はたまたまそのリスナーにスポットが当てられたが、いきものがかりの楽曲と苦楽を共にし、人生を歩んできた人はきっと全国各地にいるだろう。また、関係者からのメッセージが流れる度に3人は感謝の言葉を口にしていたし、「今日もだけど、本当に温かい環境でやらせてもらってる」(吉岡)とも話していた。全体を通して、これまで普遍的なポップミュージックを届けることに徹し続け、それを媒介に様々な人の人生に寄り添ってきたいきものがかりならではの、血の通った温かさが伝わってくるラジオだったように思う。そしてそれは、番組終盤で語られた「放牧」の背景、「集牧」にかける想いにもリンクしてくる部分だった。

放送終了まで残り20分。ここでブース内のスタッフが一旦捌け、BGMもなくなり、3人が改めて「放牧」と「集牧」について語り始めた。

いきものがかりは元々地元での路上ライブ活動から始まったグループだったが、活動を続けていくにつれて携わる人の数が増え、小さな三角形が大きな三角形に変化していくような感覚を覚えていたのだということ。放牧中は3人でよく集まり、「これから先、さらにいきものがかりを楽しむためにはどうする?」という話し合いをしていたのだということ。この放牧期間が、いきものがかりを始めた頃の無邪気な気持ちを思い出すきっかけになったのだということ――。

そんな経緯を経て、「集牧」にあたり、3人が決めたテーマは「楽しむ」という非常にシンプルなものだった。そしてこのタイミングで解禁された新曲“太陽”は、「いきものがかりをもう1回楽しむということに対して、すごく前向きな気持ちでいられてるんだよね」(水野)「そうですね、前向きではあります」(山下)と語る彼らの意思がそのまま反映されていた。ワルツのリズムはどこまでも軽やかで、吉岡の歌声はとてもリラックスしたもの。笑い声のようなコーラスも新鮮だ。因みにこの楽曲は、いきものがかり史上初めて「作詞作曲:いきものがかり」だという。吉岡が歌詞の原案を制作し、そのイメージを山下が広げたあと、2人の言葉に対して水野がメロディを付けた。

思えば、放牧前のラストシングルに収録されている“ぼくらのゆめ”はいきものがかりが初めて自分たちのことを語った作品だったし、この“太陽”もそういうニュアンスを含む楽曲であることは明らかだ。これまで意図して「自分事」を排してきたいきものがかりの音楽が変わりつつあるように思うのだが、果たして、その辺りのバランスは今後どうなっていくのだろうか。また、放牧中、3人はそれぞれソロ活動をしていたため、それぞれの経験が今後グループ活動にも還元されていくことだろう。その点にも注目しておきたいところだ。

なお、“太陽”は、放牧期間中も3人を応援し続けたファンクラス(※いきものがかりの場合、ファンクラブのことをこう呼ぶ)会員にプレゼントされるほか、いずれは何かしらの形で非会員にも届けられるよう計画している最中だという。

「これからも3人で楽しんで楽しんで、もっと良いものを作って、みなさんにも楽しんでいただきたいなと思っております。これからもいきものがかりをよろしくお願いいたします」という水野の言葉で2時間の特別番組は終了した。開放的な気持ちに立ち返った3人は、今後いきものがかりとしてどのような楽曲を生み出していくのだろうか。それがさらに楽しみになるような放送だった。(蜂須賀ちなみ)
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