Hump Backはなぜ新シングル『涙のゆくえ』で4つの涙を描いたのか?

Hump Backはなぜ新シングル『涙のゆくえ』で4つの涙を描いたのか?
12月5日に、大阪出身の3ピースガールズロックバンド・Hump Backの2ndシングル『涙のゆくえ』がリリースされた。

人が涙を流す状況には色々ある。玉ねぎを切ったりあくびをしたりした時に流れる反射的な涙、眼球を守る為の保護的な涙。そして、悲しみ、怒り、喜びなど、感情が著しく動いた時に流れる情動性の涙だ。年齢を経ていくにつれて、この「情動性の涙」を流す機会がどうにも減っているように思う。もちろんそれは人それぞれだと思うのだが、「大人」と呼ばれるカテゴリーに一歩踏み入れた途端、泣くことがなんとなく恥ずかしくなったり我慢してしまうようになったりして、思いっきり泣きたい!と思った時でもうまく泣けず、泣き方すら忘れてしまったんじゃないかと思うことさえある。それは「強くなった」のではなく、ただ単に感情の動かし方が鈍ってしまっただけなのだろうなと淋しい気持ちにさせるのだ。

Hump Backはなぜ新シングル『涙のゆくえ』で4つの涙を描いたのか? - 『涙のゆくえ』『涙のゆくえ』

収録されている4曲全てに情動性的な意味合いでの「泣く」というフレーズが入っていたことに後から気付いた結果、この『涙のゆくえ』というタイトルに決めたという今作。『ROCKIN’ON JAPAN』1月号に掲載されている彼女たちへのインタビューで林萌々子(Vo・G)が語っていたが、スケジュール的にも精神的にも追い込まれていた状況下で制作する過程で、実際かなり泣いたそうだ。彼女たちが憧れとするチャットモンチー主催の「チャットモンチーの徳島こなそんそんフェス2018~みな、おいでなしてよ!~」を筆頭に、今年は夏フェスの舞台にも多く立ち、ワンマン公演を中心とした全国ツアー、さらにレーベルメイトであるSIX LOUNGEハルカミライと共に日比谷野外大音楽堂でのライブを敢行するなど、日夜着実にステージアップをしているHump Back。ライブに関して「みんなで一緒に楽しく」ではなく「あなた自身がどう観て、どう聴き、どう感じるのか?」を真剣に問いかける強い意思を持ち得る彼女たちにとって、勝手ながら「涙」は無縁なものだと思っていた。けれど、泣くことを疎むことなく《泣いて笑って転んで ただ生きていたいのさ》(“生きて行く”)や《悲しみよいつか/また逢う日までずっとそばにいて》(“悲しみのそばに”)と歌えること、しかもそれらをバラード調のしんみりとしたメロディではなく、ミディアムテンポの心地好いメロディに乗せていることはやはり強さ故だと思う。彼女たちが流した涙の行く先は悲しみではなくそれを乗り越えた先の道に繋がっているのだろうし、今、3人が見据える目線の先にはまだ理想郷は見えないはずだ。

「人生歩いていればそりゃ色んなことがあるよ」と背中をポンっと押してもらった気持ちになる今作と共に、無理に泣こうとはせずとも「ガチガチに気張らなくても、まぁたまには泣いたっていいんじゃない?」くらいの気楽な気持ちのまま、彼女たちに倣って、笑って泣いて転んで生きて行こうと思った。(峯岸利恵)
公式SNSアカウントをフォローする

人気記事

フォローする