YMOと星野源の初共演も実現した18年ぶりの『細野晴臣イエローマジックショー』を観て

もはや伝説化した感すらある「ドテラYMO」の“RYDEEN”オンエアから実に18年越しの「パート2」実現である。

今年音楽活動50周年を迎える細野晴臣。その記念すべき2019年の幕開けを飾ったのは、2001年1月の前回放送から18年ぶりとなるNHK BS音楽バラエティ『細野晴臣イエローマジックショー2』。その最大のポイントは何と言っても、YMOと星野源の「共演」である。

お父さん(細野晴臣)とおじいちゃん(高橋幸宏)、息子(星野源)、お母さん(宮沢りえ)、娘(水原希子)によるお茶の間コメディ=「細野ハウスの人々」、“北京ダック”や“相合傘”から“Tutti Frutti”まで半世紀のキャリアを振り返る楽曲群のスタジオ演奏、細野の歴史を語るナイツの漫才、東京03/ジョイマン/清水ミチコ&清水イチロウ/水原希子&水原佑果&小池美波(欅坂46)/小山田圭吾(!)との共演によるコントの数々、さらには細野が初回からずっと観ているという『モヤモヤさまぁ~ず2』との局を超えたコラボも……といった多彩なメニューが入り乱れる中から、細野の豊潤な音楽世界とキャラクターが立ち昇ってくる90分のプログラムは、それこそ往年のスネークマンショーとの絡みを彷彿とさせる絶妙のウィットとユーモアに貫かれていた。

これまでにも事あるごとに細野晴臣へのリスペクトを表明し、自身の番組『おげんさんといっしょ』のゲストにも細野を招いていた星野源。
今回の「細野ハウスの人々」の中でも、『おげんさんといっしょ』自体が18年前の『イエローマジックショー』に影響を受けたものであること、「細野晴臣がいなければ音楽をやっていなかった」ことなどを、「ホームコメディの息子役」という体を借りつつ当の細野本人に直接伝えていく。そんな星野の言葉に「ああ、星野源は好きだよ」と細野が「父」として返すと、「……なんかわかんないけど嬉しい」と星野が表情を緩める――という微笑ましい一幕は同時に、音楽の歴史と今がさりげなく、しかし確かに交錯する名場面だった。

そして、「細野ハウス」の面々がNYの「世界のサカモト」=坂本龍一に会いに行く、という筋書きで実現した、YELLOW MAGIC ORCHESTRAと星野源の初共演。
細野晴臣・坂本龍一・高橋幸宏の3人を前にして、すでに尊敬の念がコメディの役柄をハミ出してしまっている様子の星野。18年ぶりとなる「ドテラYMO」の“RYDEEN”に続き、“ファイアークラッカー”の共演に際しての「ちょっと、でも緊張しちゃうから……」という星野のセリフはそのまま、その時の彼の気持ちでもあったのだろう。

高校時代、マリンバを演奏する細野の姿に憧れ、バイト代でマリンバを買った結果「ベッドとマリンバとテレビで部屋が埋まった」生活を送っていた、と話していた星野。細野・坂本・高橋のバンド編成とともに“ファイアークラッカー”の軽やかなメロディをマリンバで紡ぎ出していた星野の姿は、緊迫感と同時に抑え難い高揚感にあふれているように見えた。

ソロとしてはもちろん、はっぴいえんど/ティン・パン・アレー/YMOなど幾多のプロジェクトや音楽作品を通して、日本のみならず世界中に計り知れない影響を与え続けている細野晴臣。その偉業が丸ごと、和やかな磁場とともに伝わってくる、珠玉のひとときだった。(高橋智樹)