菅田が「キスだけでいけそうなの」と女として歌い、あいみょんが「キスだけでいけそうなの?」と男として歌うことの衝撃

真のコラボレーションとは、お互いの才能や人間的魅力へのリスペクトがあってこそ成立する。菅田将暉は俳優としても歌手としても、毎度それを証明する人物だ。7月10日(水)にリリースされる2ndアルバム『LOVE』。同作に収録される、あいみょんとのコラボレーション楽曲“キスだけで feat. あいみょん”でも、その力量を存分に発揮している。

切ない表情で《私今日は女だから》と歌い出す菅田と、穏やかな表情で《お前今日は女だから》と2番から歌い出すあいみょん。同じキーで歌っているのに、ファルセットの高音が美しい菅田と、落ち着いた低音が凛々しいあいみょん。似ているし、同じものという気がするけれど、本質的には異なるものだから、決してひとつになることはない。だが、お互いの存在を尊重することができるのは、《今日も2人だから》なのだろう。その言葉を2人がただただナチュラルに歌う締めくくりは、とてもあたたかくて柔らかく、知らず知らずのうちに心にかけてしまった鍵さえも溶かしてくれた。

映像作家の山田健人が手掛けたMVも、菅田とあいみょんはひとりきりだけれど同じベッドに座わっていたり、2人が同じベッドに座っていても背中合わせで見つめ合うこともなかったり、背中はくっつきそうでいてくっつかなくて、家具の足元は浮いていたり、マリオネットはそれぞれのペースで眠りについたりと、「異なること」が原因で生まれるちょっとしたすれ違いを切なく描き出す。だが、薄暗いなかでふとした瞬間に照らされる光は、希望のように見えた。自分と違うものを愛せるのはとても素敵なことで、愛し合うとは違いを認め合うことなのだろう。優しさと切なさが交差するこのMVを観ていて、そんなことをしみじみと噛み締めた。(沖さやこ)