快調に歌っていたところから全く歌えない状態までがあっという間で、それが衝撃だった(ボノ)
U2の長い歴史でも”ブラディ・サンデー”、”ニュー・イヤーズ・デイ”、”プライド”等で幕を開ける『ヨシュア・トゥリー・ツアー2019』ほど感動的なツアーはなかった。『エクスペリエンス+イノセンス・ツアー』ではなく、あえてコレなのは単に17年にオセアニア、アジアを回らなかったからではなく、対の重要作を踏まえた今、『ヨシュア・トゥリー』に向かう意義の変化を強く訴えたかったからであり、深い動機が受け手を奥底から揺さぶる。
この18年のドキュメント・レポートからは、突然襲われたボノの喉の不調、ローマ教皇との謁見も含む宗教との対峙、14歳で遭遇した母の死や妻子たち家族への思い、それらを踏まえて歩んできたU2というバンドの現在の姿が浮かび上がる。
現在、ようやく他の3人に追いついたと思うからU2を観るなら今がベスト、と語るボノ。そして「ひとたび世に送り出されたら、それらは自分たちの曲ではなく、聴く全ての人のもの」、さらに「ギター・ミュージックの可能性を再び提示すること」が今のテーマだとジ・エッジ。そんな熱い情熱を失うことのない奇跡のバンドがここにはいる。(大鷹俊一)
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