「オンラインライブ NIWA TO NIRA(有料)」特別レポと『朗らかな皮膚とて不服』全曲解説で迫る、新世代の表現者ずとまよのすべて!
文=小池宏和 撮影=鳥居洋介
最新ミニアルバム『朗らかな皮膚とて不服』リリースの翌日にあたる8月6日に、ずっと真夜中でいいのに。が開催した「オンラインライブ NIWA TO NIRA(有料)」。読んで字の如し、ずとまよが初めて臨んだ有料ライブ配信の試みである。単に新作リリースに伴うライブ配信という話であれば、このコロナ禍にアーティストが選択するライブ表現として妥当に思えるかも知れないが、ずとまよにとってこの日は本来、今年5月にスケジュールされていた幕張メッセ幕張イベントホール2デイズ「クリーニングライブ『定期連絡の業務』」2日目の延期日程であった。ところが、長引くコロナ禍の影響により、同公演は2021年5月へと再延期される。昨年、本格的なライブツアーや大型フェス出演によって、そのライブ表現の素晴らしさをリスナーに知らしめたずとまよは、この2020年に会場の規模を拡大し、さらに多くのリスナーと出会いながら、より大きなスケール感のパフォーマンスを繰り広げているはずだった。ずとまよのライブに触れたことのある多くの人もそのことを確信していただろうし、言わばライブ活動の大胆な飛躍を見せつけるための2020年になっていたはずなのである。
皮肉な運命を呪っていても仕方がないし、人々の健康には代えられない話だが、見方を変えれば今回のライブ配信はチャンスだ。熱心なファンであるにもかかわらず、それぞれの事情でライブの現場に足を運べなかった人も、配信であればずとまよのライブに触れることができるかも知れない。先に触れてしまうと、今回の配信の最後に映し出されたACAねの手書きのメッセージには、こう記されていた。
「ライブ見てくれてありがとう 今日のために部活やお仕事休むといってくれてたのも見かけました。申し訳ないです…でも嬉しいです。目の前にお客さんいなかったけど 機材に囲まれ幸せです。会ってライブしたいねえ…」
ファンとの対話の規模が大きくなるほどに、ACAねは人それぞれの心情に深く思いを馳せる。どこまでも独創的なアイデアに満ち、それでいて完璧にポップなエンターテインメントと化すずとまよのライブは、そんなACAねの姿勢によって裏付けられているのだな、と思った。そして、魅惑と衝撃が雪崩を打って押し寄せる「オンラインライブ NIWA TO NIRA(有料)」は、間違いなく、これまで以上に多くの人々がリアルライブでのずとまよを渇望するような内容になった。(以下、本誌記事に続く)
(『ROCKIN'ON JAPAN』2020年10月号より抜粋)
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