「自分のキャリアを分析したことはない。ただいくつものドアを開けて、その一つ一つから予想外の部屋に入ったと感じている。不思議の国のアリスのようにね。この仕事を始めた頃は半年続くのかさえわかっていなかったけど、気づいたら40年やっていた」
エルヴィス・コステロ、デビュー44年目にして通算33枚目のアルバムが、2年ぶりの新作『ヘイ・クロックフェイス』である。
コステロほどのキャリアで長いブランクもなく、大きな浮き沈みもなく、コンスタントに優れた作品を送り出してきたアーティストはそう多くない。しかもその音楽は未だ現役感覚と実験精神に溢れたもので、ノスタルジーやクリシェとは無縁だ。
ヘルシンキ、パリ、ニューヨークと場所を変え制作された新作も、コステロ一人録音による実験的な曲、優美なジャズ感覚を打ち出した曲、名うての前衛音楽家との即興演奏をベースにした曲など多彩にして意欲的。もちろん楽曲の仕上がりは最高だ。
取材でも、相変わらずの饒舌で、絶好調ぶりを示してくれた。(小野島大)
『ロッキング・オン』最新号のご購入は、お近くの書店または以下のリンク先より。