め組「ME-GUMI ONEMAN LIVE 2021 -Hello Odyssey!-」
7/25 @Shibuya WWW
「僕たち、すごく紆余曲折の多いバンドでして。僕たちを応援してもらえるかどうかを左右する、大事な大事なライブだということを肝に銘じて、今日このライブに挑みました」。ライブ本編の終盤に、菅原達也(Vo&Gt)はそんなふうに告げていた。「ME-GUMI ONEMAN LIVE 2021 -Hello Odyssey!-」は、この春にめ組が新体制に移行してから初となるワンマンライブだ。菅原の言葉どおり、メンバーの並々ならぬ意気込みを感じたライブでもあったけれど、それ以上に楽しく、幸福なライブであった。なぜそうなったのか、という部分を軸に据えて、レポートを進めていきたい。
ファンキーなオープニングSEに乗って一人ずつ登場するめ組を、駆けつけたオーディエンスが手拍子で出迎え、菅原の歌い出しがくっきりと浮かび上がる“ぼくらの匙加減”からライブがスタート。勢いとタイトさに満ちたバンドサウンドが華やかに弾け、笑顔を覗かせるメンバーも楽しそうだ。そこからアップテンポな楽曲を次々に畳み掛けて上昇線を描き、“キキ”では「キーボード、うららーっ!!」と菅原にコールされた新加入メンバーの久佐賀麗(Key。4月のワンマンのアンコール時に、新メンバーとして紹介された)が迫力のソロを浴びせかけてくる。この序盤のMCでも彼女は「みんなで楽しみましょう、ワクワクしようぜーっ!!」と堂々たる熱量の言葉を投げかけ、早くもエース級の活躍を感じさせている。今回が晴れてのワンマンデビューなのにすごい。
久佐賀麗(Key)もちろん他のメンバーとしても、今回のライブでは彼女のすごさを見せつけておきたい、という狙いがあったのだろう。「Odysseyは長い冒険という気持ちで、華々しく良いスタートを切りたい」と菅原が公演タイトルに込めた思いを語ると、今度は切々とした歌い出しから富山京樹(Gt)のエモーショナルなファズサウンド(この音作りがまたかっこいい)が火を吹く“1+1=”、そしてミュージカルのような展開を3分ポップに押し込めた“しあわせのほっぺ”と、パフォーマンスが続く。
菅原達也(Vo&Gt)シンガロングや大きな発声の自粛が求められるライブ環境で一面のジャンプを誘う“夢オチリズム”から、メンバーのMCを挟んで「いろんな情報が錯綜していて疲れちゃうんですけど、この曲を聴いて少しでもホッとして貰えたらと思います」と披露された“YOLO”の流れは、特に見事だった。EDMや現代ビートミュージックをバンド解釈した楽曲たちなのに、め組のロック性を一際感じさせる演奏だったからだ。感情や記憶の入り組んだ部分から引き出される物語を、テクニカルかつ人間味豊かな演奏でブーストアップすることにより、め組の楽曲の素晴らしさは2倍、3倍にも増幅する。今回のライブはまさにそれであった。“故愛(ゆえあい)”や“真夏の朝 2人乗り”といったリリカルな曲調においても、心を満たす楽しさや幸福感の手応えは変わらない。
そして“Amenity”以降の本編終盤は、アップリフティングなビートポップのつるべ打ちだ。“悪魔の証明”では《ちゅるりらら》のコールの代わりに、5連拍の手拍子をオーディエンスが一斉に打ち鳴らすさまも今やウィズコロナのスタンダード。ここで菅原は、冒頭で紹介した言葉に続いて「もし、あなたの中で良き答えが出たら、僕たちはこれからずっといい音楽をやり続けるし、かっこいい姿を見せ続けていくので、これから先ずっと、しっかり掴まっていて欲しいと思います」と告げ、そんなふうに新たな思いを上乗せした“ござる”でライブ本編を締め括るのだった。
さらにアンコールでは、「この5人でしか作れない音楽」として、新曲“あの恋をなぞれば”が披露された。意表を突くような展開のアレンジ、綱渡りのように成立する危ういコード、そんな感情のせめぎあいを切なく狂おしい歌メロが繋ぎ合わせてキャッチーに聴かせてしまうという、マジカルなナンバーだ。今から音源化が楽しみだし、早くも新体制の成果を形にし始めているめ組から、目を離さずにしておきたい。(小池宏和)
●セットリスト
01. ぼくらの匙加減
02. お化けだぞっておどかして
03. キキ
04. 1+1=
05. しあわせのほっぺ
06. 余所見
07. 夢オチリズム
08. YOLO
09. 故愛(ゆえあい)
10. 真夏の朝 2人乗り
11. Amenity
12. 500マイルメートル
13. マイ・パルプフィクション
14. 悪魔の証明
15. ござる
(アンコール)
01. あの恋をなぞれば(新曲)
02. HEARTFUL
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