1969年に開催されたウッドストック・フェスティヴァルのオープニングを飾った、フォーク・アーティストのリッチー・ヘヴンスが4月22日に心臓発作で他界した。享年72歳。リッチーは先月、健康状態が思わしくないため今後ツアーから身を引くと宣言したばかりだった。
リッチーは60年代のニューヨークのグリニッジ・ヴィレッジのフォーク・シーンで頭角を現わし、オープン・チューニングによるリズム感の鋭いギター演奏と力強いヴォーカルで、ブルースやゴスペルに近い感性を伝えるフォークのスタイルを築き上げた。また、オリジナル曲も書きつつ、オリジナリティに溢れたカヴァー演奏に長けていることでもよく知られていた。当時のリッチーをボブは次のように『ボブ・ディラン自伝』で振り返っている。
「この頃よく顔を合わせることが多かったのがリッチー・ヘヴンスという歌手で、いつもかわいい女の子を連れていて、その子が決まって演奏中にカンパを貰いに客席を回ってて、リッチーはいつも羽振りがよさそうだったよ」
その後、リッチーのマネジメントをボブのマネージャーであったアルバート・グロスマンが引き受けることになり、66年にサード・アルバムで代表作の『ミックスド・バッグ』をリリース。その後ブルースとフォークとサイケの融合も試み、69年にはウッドストックへの出演を果たした。
なお、ウッドストックでオープニングを飾ったリッチーだが、元々最初のスロットは別のバンド、スウィートウォーターが予定されていたものの、会場への渋滞のためバンドの到着が遅れ、急遽リッチーがピンチヒッターとして出演することになった。バンドの到着まで間を持たせなければならなくなったリッチーは持ち歌が尽きると、即興演奏に「フリーダム」と言葉を連呼して乗せ、さらにそこにゴスペルの"時には母のない子のように"の一部も歌うパフォーマンス"フリーダム"を披露し、結果的にこのパフォーマンスがウッドストックという歴史的なライヴ・イヴェントを象徴する一コマともなった。
また、近年ではグルーヴ・アルマダとのコラボレーション"ハンズ・オブ・タイム"を04年に発表していて、これは『コラテラル オリジナル・サウンドトラック』に収録されている。