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向井秀徳が全力の発声を行うサウンド・チェックからそのまま、ゆったりとギターを爪弾いて「マクハリCITY! マクハリの貴様とまぐわりたい〜♪ 貴様に伝えたい〜♪ 俺のこのK・I・M・O・C・H・I!! 貴様に伝えたい〜♪ 俺のこの気・持・ピ・を〜♪」と歌い出す。ロマンチックで繊細なメロディと、一発一発が爆発音のような柔道二段・松下敦のドラムの間を行き来しながら、“KIMOCHI”が披露されるステージの幕開けだ。「MATSURI STUDIOからMATSURI SESSIONを、ひっぱりあげてやって参りましたZAZEN BOYS!」との名調子で名乗りを上げる向井である。そして吉田一郎の喧嘩腰のようなベースのスラップ・ショットに吉兼聡a.k.a.カシオマンによるギターのカッティングが踊り、“CRAZY DAYS CRAZY FEELING”。椎名林檎のコーラスをぶっこ抜いた演奏だが、切れ味鋭い向井のラップと重量級バンド・グルーヴが十分にフックを形成していて、めちゃくちゃかっこいい。真っ赤な照明の中に繰り広げられる“RIFF MAN”は《耳から飛び出る昇り龍~》の浪曲のような節とレッド・ツェッペリンみたいなロック・グルーヴが一緒くたに転げていった。「マクハリ。ときには女とまぐわり。そう、我々ZAZEN BOYS、新曲を製作中でございまして、その製作中の新曲、聴いてみよう!」と向井。変拍子のバカテク・アンサンブルの合間合間に、猫をテーマにしたスキャットが弾けるアクロバティックなナンバーだ。続けて“Honnoji”のこれまたとんでもないコンビネーションが畳み掛けられるので、オーディエンスは驚嘆混じりの喝采を浴びせかける。音楽的にはめちゃくちゃ高度なのに、敷居は高くない。「とりあえずびっくりさせればロック」という大前提に、周回差をつけて追いついてしまったようなエンターテインメント・ショウだ。それが今も、観る度に研ぎ澄まされてゆく。向井がフェイント混じりの指揮を執ってチャルメラの旋律で真剣勝負を見せる“COLD BEAT”から、ラストは切ないシンセ・フレーズが物語を描き出す“Sabaku”でフィニッシュ。「胸を掻き毟るような想いがありながら、今日は、楽しいです。ありがとう! 乾杯!」。向井のそんな言葉に、フロア一面のオーディエンスが、それぞれの頭上で拍手を贈っていた。(小池宏和)