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このフェスでもROCK IN JAPAN FESTIVALでも、絶対に間違いないライヴ・キラー、音速ライン。弾むようなSEに乗って、藤井(Vo&G)と大久保(B)のふたりが手拍子をしながら現れる。ステージ上で握手を交わす、音速ならではの儀式を経て、ライヴ開始。“Nir”“深海のkkr”“恋の魔法”と、ノンストップで攻めあがる。演奏が始まったら、みるみるオーディエンスが集まってきて、フロア後方までびっしり。今日ここまでのCOSMO STAGEで一番の入りだ。人気あるなあ、音速ライン。そのオーディエンスをオラオラ風に煽るのは、もちろん大久保の役目である(大久保の場合、「風に」感が大事で、いとおしいところ)。いったんストップして大久保のMC。「今年はいろんな大変なことがあったけどね、音速ラインは今年最後のライヴだから、マジメ100%、心のままに100%…」と話したところで言いよどみ、藤井が混ぜっ返す。ここまで非常に無骨なパフォーマンスを見せてきただけに、ほっこりする瞬間だ。藤井も喋る。「俺らもデビューして6年になりますけどね。原点に帰ろうと思ってね」と、2005年のメジャー・ファースト・アルバム『風景描写』収録の“スローライフ”を披露。この曲を聴きながらつくづく思ったのだが、音速は2000年代ジャパニーズ・ロックのひとつの型を作ったバンドだなあ、ということ。とことんラウドなサウンドと、とことん美しいメロディの融合、と端的に言えると思うが、どっちもセンスがないと、真似できそうで真似できない、とてもハードルが高い型。彼らにヒントをもらったバンドはたくさんいるはずだ。この後、流麗さが際立つ“さよならユニバース”、音速ファンにはおなじみのキャラクター、ネギオ&ネギコの着ぐるみが登場し盛り上けた“逢いたい”が続き、藤井が満員のフロアを見渡し一言。「ほんとにありがとうだよ……すごいな」。最後に披露したのは、藤井がこう言って送り出した新曲“心のままに”。「ほんとに思うのは、心のままに生きる者勝ち。2012年は心のままに生きてください。その思いを歌にしたので、聴いてください」。シンプルであったかい言葉が綴られた、素晴らしい歌だった。福島に住み、震災被災者の支援も行う藤井だけに、言外の説得力があった。(斉藤知太)