いよいよやってきたMOON STAGEのカウントダウンを務めるアクトは、音速ライン。2012年は彼らにとって、会心の傑作『Alternative』、また新曲1曲を含むアコースティック・セルフ・カバー作『Grateful A.C.』という2枚のアルバムリリースにより、とても充実した年となったのではないかと思う。ライヴは、彼らのファースト・アルバム『風景描写』からの“our song”によって幕を落とされた。扇情的なギターリフでもって、助走なしにフロアを音速ラインの世界へ連れていく。そのまま、藤井敬之のヘヴィなギターと大久保剛の激しく踊るベースラインの応酬が抜群にグルーヴィな“ピカソ師匠とダリ先輩”~アンセミックなイントロが鳴り響いた瞬間フロアから沢山の拳が突き上げられた“i know i know”と、『Alternative』からのナンバーを連発。演奏の安定感は流石の一言である。
カウントダウンに向け電光ボードが出され、「これから年をまたいで、またいだところがバンド結成10周年。僕らはずっとやっていくつもりなので、来年も、来年からも、よろしくお願いします」というエポックな宣言があったと思えば突如、即興で≪さよなら2012年 ようこそ2013年 来年もよろしくね 音速ラインはこのまま続くけど 君たちと一緒に 時を刻んでいたいよ≫と、即興とは思えないほどに美しいメロディを口ずさむ藤井。この愛すべきキャラクターをこれからもずっと音速ラインのステージで見ることができる喜びをフロアも噛みしめていたはずだ。新年へ向け残り10秒からのカウントダウンを全員で済ませた瞬間、銀テープが発射され色とりどりのバルーンが舞い、瞬間的に祝祭空間と化したMOON STAGEに投下された記念すべきナンバーは“街風”! 落ちてきたバルーンを掴んだ手を激しく振ってこの曲の感動に応えているオーディエンス達が実に美しい光景を作り出している。
そこからは、“逢いたい”、“週末旅行”と最後まで胸を打つ名曲が続いた。今さら言うまでもないことかもしれないが、彼らはデビューから今日まで、歌心を何より大事にしたギター・ロックを愚直なまでに一心不乱にやり続けてきた。絶えず作曲力と演奏力を高めることに腐心しながら。だからファンはいつでも「最高の」音速ラインが観られるのである。心から「これからもよろしく」と言いたくなる、そんなバンドと共に2013年を迎えられたことを誇りたくなるカウントダウンだった。(長瀬昇)
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