サウンド・チェックの段階から、柴田隆浩（ボーカル、ギター）は「おれ、自分の声あんま聞きたくないんで、若干下げめで……」と2013年早々の自虐モードに入っていたが、『COUNTDOWN JAPAN 12/13』、COSMO STAGEの４日間を堂々締め括るのは、忘れらんねえよである。ヘナヘナと鳴り響くオープニングSEの後、「こんな遅い時間までさあ。おれ大人だから眠くなっちゃうし、いっぺんウチ帰って寝てきたわ！ しかもさあ、隣の大きいステージではART-SCHOOLさんがやってるらしいじゃないですか。なんでこっち来たんだ！ 顔見りゃ分かる。あんたらいい人たちだ!!」と“僕らチェンジザワールド”になだれ込んでゆく。ドタメシャでありながらリビドーが迸る３ピースのパンク・サウンドの中、柴田の高らかな歌は、他の誰にも負けない声量でフロアを満たし、掲げられる無数の掌に感嘆の言葉を漏らす。
“CからはじまるABC”、“だんだんどんどん”とオーディエンスを沸かし続けるのだが、「ここだけの話っすよ」と前置きして、柴田の初恋にまで遡る恋バナが始まる。要は“慶応ボーイになりたい”の前フリとなる涙、涙の物語なわけだが、長い、話が。更に、その曲の後にもまた長話。またか、と思っていたら、チャットモンチーに憧れて28歳で一念発起して忘れらんねえよを始めたこと、自信満々でRO69JACKに応募して一次審査で落選したこと、悔しい思いをしながら今回のステージに辿り着いたことを、ギターを爪弾きながら切々と話す。「音楽じゃなくても、何かやっていることがあったら、絶対やめない方がいいっすよ。きっっと、上手くいくから。今日は、それをみんなに伝えたかったんだ」。……泣かせるなよ。でも、このステージに立つ柴田には、確かにその言葉を伝える権利がある。そして、“この街には君がいない”、“北極星”、“忘れらんねえよ”とクソ熱いナンバーの数々で再びオーディエンスを沸騰させると、「おれら新曲出すんすよ。おれが、まっすぐまっすぐ、歩いていくための歌です。あんたが、あんたがあんたがあんたが、まっすぐまっすぐ、歩いていくための歌です。“この高鳴りをなんと呼ぶ”。ありがとうございました、クソバンド・忘れらんねえよでした！」と、最後には泣きそうな笑顔だらけのCOSMO STAGEを作り上げた忘れらんねえよ。アンコールの催促に応えると、音出しで一度ズッコケながらも、この日２度目の“CからはじまるABC”を披露。オーディエンスと一緒に連続ジャンプを決め、万感の大団円を迎える。2013年元旦の忘れらんねえよは、痺れるほどにカッコ良かった。（小池宏和）
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