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ステージ両端の大型ヴィジョンに「the HIATUS」の文字が映し出され、トライバル・ビートの入場SEにのってメンバーが登場したその刹那、EARTH STAGEを包み込んだ超弩級の大歓声! その一瞬で、我が国のロック・シーンにおけるthe HIATUSの立ち位置や貢献度、そして期待度を容易に理解することができる。緻密に紡がれていくアコースティック・サウンドの中で強烈な存在感を放つ、ウエノコウジのベースの一撃がフロアを震撼させた1曲目、堀江博久のキーボード・リフが深遠なる幻想空間を描き出した2曲目と、粛々と進行していくライヴ。ステージ上から発せられる立体的な音像の凄まじい説得力に、オーディエンスは呆然と立ち尽くすしかないといった様子である。「今年は夏の(ROCK IN) JAPANに出なかったから、久しぶりのJAPANの会場! 今年我々はあなたがたのおかげでここまで生きてくることができました! だから今日は精一杯演奏して、みんなにお返しができたらオレはめちゃめちゃ嬉しいなって思ってます」。そう細美が告げて、ライヴは再び転がり始める。アグレッシヴな楽曲が並んだ中盤のブロックでハンドクラップやシンガロングを次々とフロアに巻き起こし、再び細美は語り出す。「何かだんだん、音楽の何たるかがどんどん楽しくなってきて、そうなるとコマーシャルなものがより大嫌いになってきました」。そして嫌なことはもちろん、やりたいと思ったことも心の底からそう思えなければこれからはやらないと宣言。そこから伝わってくるのは、細美が今、彼を取り巻くあらゆるしがらみから、完全に解き放たれているということだ。またそれは、この日もいくつか披露された、眼前に広がる壮大なカオスの中でメンバーそれぞれが自由曲線を描きながら、たったひとつの「正解」を浮かび上がらせていく新作『A World Of Pandemonium』で鳴っている音そのものだ。そしてラストはアンセム2連打。魂をむき出しにして、全身全霊でオーディエンスと向き合おうとする真っ直ぐな細美のボーカルが高く伸びていき、the HIATUSのアクトは未曾有の熱狂と共に幕を閉じた。百戦錬磨のプレイヤー達が各々のクリエイティヴィティに従いベストだと思う道を辿っていたら、誰もいないはずの「その場所」でばったり鉢合わせしてしまい、結果的にそれが「新しいロック」として高らかに鳴り響くというthe HIATUSの特異性。ここ最近、それがますます顕著になってきた気がする。本当に恐ろしいバンドだ。 (前島耕)