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フェスは終盤を迎えようとしている。しかし最終日は始まったばかりだ。パンキッシュなSEをバックに登場したハスキング・ビーを迎えた歓声は、そんなポジティヴィティに漲っていた。
そんなSEとは裏腹、実に繊細なイントロが冒頭を飾る “#4”にバンドは雪崩れ込む。とたんに会場が一体化。一斉に拳を振りかざす。ロック・モード全開だ。それにしてもこの曲、テッキンと平林の絡みまくるバック・コーラスが素晴らしい。そして、そのまま“A SMALL POTATO’S MIND”。ようは、現在のメンバーになってリリースした『FOUR COLOR PROBLEM』からの2連発である。たまらないと言わんばかり観客も燃え上がる。
それにしても暑い。朝は雨雲っぽいのが空を覆っていたが、昼になると容赦なく太陽のキツイ光線がグラス・ステージを直撃する。と、そんなところ磯部からクエスチョン。「暑くて蕩けそうですか?」、それに「イエーイ」と答えるファンに、次に磯部は「ミュージックで蕩けたい!!!」と奇声を上げ、バンドは“摩訶不思議テーゼ”に突入。今年リリースされた『variandante』の1曲目である。アコースティック・プロジェクトのCORNERを経た磯部にとってバンドという表現手段の再確認であり、ハスキング・ビーというバンドの一大転機とも言えるだろう、全曲日本語歌詞で綴られたこのアルバム。そんな転機を迎え、再出発したバンドを初めて目撃するファンもオーディエンスに結構いたと思う。だけど、もし不安を抱えていたファンがいたとしても、この演奏を目撃して心配も吹っ飛んだだろう。それだけバンドの演奏はタイトで力強かった。さすが十年選手。これぞハスキンというバンドの底力である。
 それからも“新利の風”、“欠けボタンの浜”、カズヤがメイン・ヴォーカルを務める“NEW HORIZON”など人気リパートリーを挟みながら、『variandante』から数曲演奏。特に“カナリア”の磯部の熱唱は圧巻だった。軽やかなメロディを得意とするハスキング・ビーには珍しくどっしりコシの効いたこの曲。磯部の剥き出しの激情が会場をつんざく。「暑さ」を忘れ、「熱さ」が体を支配する。
次のブレイクで磯部が弾き語りを始める。ひたちなかにまた~、朝の太陽が昇り~、その後ろに丸い月が~……と、ということは――“THE SUN AND THE MOON”だぁ~!!! 反則イントロがつけられたアッパーなこの曲にさっきまでジ~ンと熱くステージを見守っていた観客のテンションがまた一気に急上昇する。そして、次に演奏されたインディーズ時代の名曲“WALK”でセットを締める。迷いなどまったくない。ハスキング・ビーはこれからも突っ走るし、突っ走れる。磯部がこよなく尊敬する奥田民生をはじめ、この後、グラス・ステージに出演する大ベテランたちと堂々と肩を並べられる日は遠くないだろう。(内田亮)

1.#4
2.A SMALL POTATO’S MIND
3.摩訶不思議テーゼ
4.新利の風
5.欠けボタンの浜
6.アドバイス
7.Just a beginning
8.NEW HORIZON
9.カナリヤ
10.THE SUN AND THE MOON
11.WALK