朝から暑い! そして3日目のグラス・ステージは朝から熱い! 何しろ、今年で3年連続登場を果たしてくれたHYが初手から登場してくれるのだ。そして彼らは、我々の期待にバッチリと応えてくれた。ステージに現れたVo&GのHideが爽やかに気合いを入れてくれる。「一発目から盛り上げていくよ! 皆さん元気ですか! 声だしていきましょうね!」。その言葉どおりに1曲目から“Street Story”を惜しげもなく披露、会場はいきなりの沸騰である。そして、この曲がさらに素晴らしいのは、とても熱いし、盛りあがるんだけど、確実に優しく癒されている自分も同時に感じられることなのだと改めて思う。この日本には、いくつものミクスチャーの名曲が生まれているけれど、本当に極上のアンセムは、盛り上げながら癒すことができる。この曲はそれができる数少ない曲のひとつだ。続いては同じく『Street Story』より“トゥータン”! 1発目の1曲目から絶好調のグラス・ステージ、しかし温度は落ちない。こちらも“Street Story”に負けぬ盛りあがりである。 そしてここで遂に新作『TRUNK』からの曲が披露される。“ささくれ”。先月出たばかりのアルバムの曲だけど、お客さん、しっかりこの美しく熱のこもったメロディを追って、ノってます。お見事! そしてHideが言う。「自分たち、3枚目のアルバムを出して」と言ったところで拍手が起こる。「知ってます? 買いました? (起こる歓声に)もうちょっと買ってください(笑)。ウソです」と冗談めかして言って次の曲へ行こうとしたんだけど、Vo&KeyのIzuが出だしをちょっと間違える。「ごめんなさい」。それをHideが茶化し気味にフォローする。「緊張してんの? かーわいー!」。HYは曲もライヴも間違いなくプロフェッショナルだけど、こうなると「ごく普通に、その辺を歩いてる、バンドを楽しんでるワカモノ5人組」である。会場は笑いに包まれ、いい具合に緊張感がほぐれていく。そうして披露されたのはまさにそんなあったかさと青春的な切なさを感じさせる曲“てがみ”。ほんと、いい雰囲気。 そのいい雰囲気が続く中で、Hideは「3枚目のアルバムの『TRUNK』は、こんな感じなのもあるし、いろんな感じがあるわけさ。次の曲も、沖縄な感じで、ノリもいいんだけど、いろんな意味を持った感じもあるし。それを感じてもらえればステキだと思ってます」と言って“そこにあるべきではないもの”を始めたのだ。既によく知られているように、3rdアルバム『TRUNK』は、メロディと歌詞の美しいつながりが追究されているアルバムで、過去の作品とは趣を異にするものだ。しかし、この“そこにあるべきではないもの”に込められているテーマは、まぎれもなく彼らの住む地、沖縄に温かいまなざしを注ぎつづけている歌なのだ。 彼らは売れたし、ライヴはどこの土地に言っても盛りあがるし、海外の実力派バンドと同じステージに立っても、ひけをとらないステージングを見せるまでになった。しかし、心を寄せつづける場所を決して変えない彼らの想いが、この曲には込められている。ヘンな言い方になってしまうが、「新しいHYは、何も変わっていない」のだ。そこが、とても嬉しく思える。ライヴではお馴染みの“フェイバリットソング”もあったし、ラストは『Stree Story』における名曲のひとつ、“隆福丸”だった。今のHYは、「新境地」と「過去の素晴らしき軌跡」がしっかりとタッグを組みながら前進できているという、非常に幸せな状態にあるんだと思う。だから、もしかして3日目フィナーレ? そんな錯覚すらしてしまいそうになる、勢いと風格の両方を感じさせるステージになっていた。間違いなく、彼らはアルバム『TRUNK』で新たな、そして大いなる一歩を踏み出したのだ。そして、その足跡の一つを、このロック・イン・ジャパンに残してくれたことを感謝したいと思う。(柳憲一郎) 1. Street Story 2. トゥータン 3. ささくれ 4. てがみ 5. そこにあるべきではないもの 6. AM 11:00 7. フェイバリットソング 8. ホワイトビーチ 9. 隆福丸 |
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HY のROCK IN JAPAN FES.クイックレポートアーカイブ